便潜血検査は陰性でも「大腸がん」の可能性が? 早期発見のポイントや陽性が出たときの対処法も医師が解説!
便潜血検査で「陽性」と判定されると、どんな病気の可能性がどのくらいあるのか、治すことは可能なのかなど、不安でいっぱいになってしまうかもしれません。今回の記事では、便潜血検査によって見つかる病気や早期対応の必要性などを、「大塚駅前消化器内視鏡クリニック」の坂口先生に解説していただきました。
監修医師:
坂口 賀基(大塚駅前消化器内視鏡クリニック)
便の検査にはどんな種類がある?
編集部
まず、便の検査について教えてください。
坂口先生
便の検査にはいくつか種類があります。一般的な健康診断でおこなわれる検便は「便潜血検査」のことを指し、病気の可能性がある場合に「陽性」や「要精密検査」という結果が出ます。一方、食品を扱う従事者を対象とした検便は「腸内細菌検査」と呼ばれ、便に特定の細菌やウイルスなどが存在しないかを確認するための検査です。
編集部
どのような場合に便潜血検査で陽性が出るのですか?
坂口先生
便潜血検査は、便の中の目に見えないほどの血が混ざっているかどうかをチェックする検査なので、消化器のどこかで出血が起こっている場合などに陽性が出ます。痔などの場合でも陽性となることがありますが、主に「大腸がん」の早期発見のためにおこなわれます。
編集部
陽性が出ると大腸がんということでしょうか?
坂口先生
「陽性=大腸がん」というわけではありません。便潜血検査は決して100%の正確性があるわけではなく、あくまで簡易的検査なので目安として活用されるものです。検査結果が陽性だった場合でも、大腸がんでないケースや、逆に陰性でも大腸がんが隠れているケースもあります。
編集部
そうなのですね。
坂口先生
便潜血検査で陽性と判定される人は、1000人中およそ50人とされています。その中で大腸がんと診断されるのは、実際のところ1~2人程度です。過度に不安になる必要はありませんが、確率は低いながらも大腸がんの可能性はあるため、早期発見のためにも精密検査をきちんと受けましょう。検査の診断やその後の治療には高い専門性が必要とされるので、検査をする際は多くの経験や知識・スキルのある医師を見つけることをおすすめします。
大腸がんは完治する病気?
編集部
大腸がんの可能性は高くないのですね。
坂口先生
たしかに、1000人中1〜2人という数字を見ると、そのように感じるかもしれません。しかし、国内全体で見ると大腸がんで亡くなる人は非常に多く、死亡者数で見ると女性では最多、男性でも3番目に多いと報告されています。
編集部
そんなにたくさんいるのですか?
坂口先生
はい。大腸がんは、早期に発見できれば完治が期待できる病気なのですが、初期の大腸がんは自覚症状がほとんどなく、自分で気づくことは困難です。
編集部
症状が出てからでは遅いのですね。
坂口先生
早期に発見できれば開腹手術をすることなく完治が期待できるのですが、進行すると大がかりな手術を余儀なくされる可能性も高くなり、ご自身の生活や仕事、ご家庭にも大きな影響を及ぼします。だからこそ、症状が出る前に発見し、早期に治療することが重要なのです。
便潜血検査が陽性になったときの対処法
編集部
便潜血検査で陽性となったら、どのような検査をするのですか?
坂口先生
肛門から小型のカメラを挿入し、大腸全体(約80cm)を詳しく観察する「大腸カメラ(大腸内視鏡検査)」をおこないます。なお、食事の制限は1回だけで、日帰りで受けることが可能です。
編集部
カメラで見てがんを確認するのですね。
坂口先生
大腸がんだけでなく、大腸ポリープなどもわかります。また、観察するだけでなく、もしポリープや早期の大腸がんがあればその場で切除することも可能です。ポリープを早期に取り除くことで、大腸がんのリスクを減らすことができます。
編集部
便潜血検査や大腸カメラについて、ほかに知っておいた方が良いことなどはありますか?
坂口先生
先述したとおり、便潜血検査が陰性であったとしても、大腸がんが隠れている可能性はあります。そのため、便潜血検査が陰性でも、定期的に大腸カメラをしましょう。特に、40歳以上の人は大腸がんのリスクが高まるため、大腸カメラ検査を受けてほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
坂口先生
大腸カメラはつらい検査だと思い込んで、敬遠される人は多くいらっしゃいます。ただ近年では、鎮静剤を用いて少ない痛みで内視鏡検査を受けることが可能となっており、以前より楽に検査を受けられるようになってきています。便潜血陽性となった場合、もしくは目で見てわかるような血便があった場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
便潜血検査で陽性と判定された場合、放置すると病気が進行するリスクもあるため、早めに大腸カメラを受けることが大切とのことでした。また、便潜血検査が陰性であっても大腸がんの可能性はゼロではないため、特に40歳を過ぎたら定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。健康な生活を安心して続けるためにも、早期発見・早期治療に向けた行動をおすすめします。
医院情報
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アクセス | JR「大塚駅」 徒歩1分 |
診療科目 | 消化器内科 |