イビキ治療は「どのくらいの期間」で終わる? レーザー治療の回数や効果を医師が解説

いびきは心臓病や脳卒中との関連もあり、「たかがいびき」ではありません。いびきに対するレーザー治療を検討されている方は、治療の目的や内容、さらには効果が出るまでの期間なども気になるかと思います。レーザー治療後、どのくらいでいびきが解消されるのでしょうか? そこでいびきのレーザー治療について、皆川クリニックの皆川先生に詳しく解説してもらいました。

監修医師:
皆川 真吾(皆川クリニック)
いびきって治療が必要なの?

編集部
どうしていびきが出るのですか?
皆川先生
いびきは、喉の奥にある「軟口蓋」や「口蓋垂」と呼ばれるところが振動することで起こります。寝ている間に、この部分が弛緩(しかん)して気道を狭めたり、塞いだりしてしまうため、空気が通るたびに振動し、いびきが発生するのです。
編集部
喉が振動しているのですね。
皆川先生
そうなのです。本人は気が付いていない場合も多いのですが、空気の通り道が塞がれて呼吸するたびに音が出るため、ご家族やパートナーの眠りが妨げられて困っているというケースは多く見られます。
編集部
周りの人が熟睡できないというのはよくある悩みですね。
皆川先生
じつは、熟睡できていないのは周りの人だけではありません。いびきをかいていると、熟睡しているかのような印象を持つかもしれませんが、気道が閉じて空気が取り込めなくなっているので、本人も決して熟睡できているわけではないことがほとんどです。
編集部
そうなのですね。
皆川先生
さらに、いびきは単なる睡眠の妨げだけでなく、命に関わる病気のサインの可能性もあります。睡眠中に気道が塞がれ、呼吸が止まる状態を「無呼吸」といい、これが繰り返されるのが睡眠時無呼吸症(SAS)です。SASは、放置すると高血圧や心臓病、脳卒中などの原因となるため、早めの対策が必要です。
いびきやSASにはどのような治療があるの?

編集部
SASは聞いたことがあります。
皆川先生
いびきそのものは病気ではないのですが、放置しておくと先述のような病気のリスクが上がります。突然死との関連も示されていますし、日中の居眠りも増えてしまうため、交通事故などを起こすリスクも約6倍です。心臓に負担がかかるため、夜間頻尿などの症状も伴います。「たかがいびき」と考えず、早めに医療機関に相談することをお勧めします。
編集部
SASは医療機関で治療できるのですか?
皆川先生
SASの治療は、症状の程度によって異なります。軽症の場合、マウスピースや寝具の工夫などで気道が狭まるのを防ぐことで、症状の改善が期待できます。中等度から重度の場合は、CPAP療法という治療法が有効です。さらに、肥満はSASを悪化させる要因の一つなので、減量することで症状が軽くなることもあります。
編集部
CPAP療法とはなんですか?
皆川先生
睡眠中に専用の機械を装着して鼻や口に空気を送り込み、気道を常に開いた状態に保つことで、無呼吸を防止する方法です。安全で効果的な方法ですが、あくまでも「CPAPをつけている間は気道が塞がれない」というアプローチのため、CPAPをやめると元に戻ってしまいます。マスクをつけて眠ることに抵抗がある、旅行や出張の際なども機械を持ち歩く必要があるといった理由から、医師からCPAP療法を勧められた人の約3割が、治療をしない、もしくは途中で辞めてしまうというデータもあります。
編集部
CPAPを使わずに症状を軽減するためにはどうしたら良いのでしょうか?
皆川先生
鼻腔を広げる手術や、レーザーを用いて咽頭部の口蓋垂を切除する手術などがあります。これらの外科的治療は根治が期待できる一方で、術後しばらくの間、食事や会話に制限がかかることが多いので注意が必要です。
編集部
手術に抵抗がある人はどうしたら良いですか?
皆川先生
特殊なレーザーを用いた治療法もあります。この治療法は、咽頭部を切開せずに、レーザーの熱で組織を引き締め、気道を広げるというもので、従来の手術に比べて術後の回復が早く、痛みも少ないというメリットがあります。
いびき・SASの切らないレーザー治療を医師が解説

編集部
切らないレーザー治療について、もう少し詳しく教えてください。
皆川先生
この治療は日帰りで可能で、治療当日から普段通りの生活を送ることができます。飲酒は治療当日のみ控えていただきますが、基本的に治療直後から通常の食事や会話が可能です。治療後の痛みや違和感もほとんどありません。
編集部
どのくらいで効果が出るのですか?
皆川先生
個人差はありますが、3~4週間後に治療効果を実感される方が多いようです。効果が出るまでの治療回数にも個人差があり、1回目の治療後だと4〜5割、2回目で7割の人が効果を実感されます。3~4回治療を行うと、その後は1年間以上効果が持続すると言われています。いびき自体の状況については本人がわからなくても、「熟睡するってこういうことか」「目覚めがスッキリした」「日中の呼吸が楽になった」といった実感を持つ方はたくさんいます。
編集部
治療について、ほかに知っておいた方が良いことはありますか?
皆川先生
保険が適用されず自費になってしまうため、費用については事前に確認しておくことをお勧めします。また、高度の肥満の方やSASが重症の方などが、症状を軽減するは難しいので注意してください。SASは肥満との関連が高いので、治療とダイエットの併用がおすすめです。
編集部
最後に、メディカルドックの読者へのメッセージをお願いします。
皆川先生
いびきは単なる音の問題ではなく、SASである場合が多くあります。SASと診断された方で、外科的治療に抵抗がある場合には、レーザー治療を検討してもいいと思います。最近のレーザー治療は技術が進歩しており、たとえば当院では、粘膜表面を引き締めるレーザーと、深い部分をじわじわと引き締めるレーザーの2種類を併用して、高い効果を目指しています。自覚症状がなくても重度のSASのケースは少なくありませんので、まずは医療機関に相談してみることをおすすめします。
編集部まとめ
いびきは単なる音の問題ではなく、SASなどの病気が隠れていることがあります。放置すると健康に悪影響を与えたり、事故を引き起こしたりするリスクが高まる場合もあります。治療にはいくつか選択肢がありますが、手術を避けたい方や、日常生活への影響を抑えたい方には、飲食や会話に支障のないレーザー治療がおすすめです。いびきを指摘されたことがある方や、睡眠に不安を感じている方は、早めに医療機関に相談してみてください。
医院情報
所在地 | 〒262-0015 千葉県千葉市花見川区宮野木台2-5-22 |
アクセス | JR総武線「新検見川駅」よりさつきが丘団地行きのバスに乗り「畑町東停留所」下車より徒歩1分 |
診療科目 | 泌尿器科、皮膚科 |