【闘病】なぜ私が「シェーグレン症候群」に 『喉の渇き』の正体はそれだった…
シェーグレン症候群は自己防衛の役割を持つ免疫系に異常をきたす病気です。免疫細胞が誤って自分の体の組織を攻撃してしまい、口や目の乾燥を引き起こします。すずきあさよさん(仮称)は、2020年春、扁桃腺摘出手術の検査中にシェーグレン症候群が判明しました。診断を受け入れるまでの葛藤や、症状と向き合いながら過ごす日々について語ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年9月取材。
体験者プロフィール:
すずきあさよ(仮称)
1970年生まれ、札幌市在住。2010年春に乳がんの手術を受け、2020年春にシェーグレン症候群と診断された。現在は年に1〜2回、総合病院で定期的な経過観察を行っている。現在は「わたしのたからもの」という屋号で個人事業主として活動中。メインの仕事は文筆業とベビーシッター。闘病記「乳がんは、わたしのたからものになった」を出版し、病気と向き合う方を応援している。趣味は歌うこと、自然の中を歩くこと。座右の銘は「永遠の人生バックパッカー」。受診した診療科は耳鼻科、リウマチ科、眼科。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
すぐに現実を受け入れることはできなかった
編集部
シェーグレン症候群が判明した経緯について教えてください。
すずきあさよさん
もともと扁桃肥大があり、高熱が出るようになったので、2020年春に扁桃腺摘出手術を受けたのです。その手術前の検査で医師が異常に気付き、再検査してシェーグレン症候群だと判明しました。
編集部
はじめに身体に起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?
すずきあさよさん
診断を受ける2年ほど前から、異常な喉の渇きを感じていました。趣味の歌を歌う前後に喉が痛むようになり、喉に負担がかからないように意識していましたが、それでもずっと痛いままでした。その後、首のリンパ節にポコポコと腫れが出て、耳下腺(耳の下にある唾液を産生する器官と大唾液腺の1つ)も硬く腫れてきたのです。その時は「また、がんなのでは?」と不安になり、病院を受診しました。でも、検査の結果は異常なし。ひとまず安心して帰宅しましたが、症状は一向に改善せず「何かおかしい」と感じていました。
編集部
シェーグレン症候群が判明したときの心境について教えてください。
すずきあさよさん
「そんなはずはない」と、すぐには受け入れられませんでした。受け入れられなかった理由は、主に2つあって。1つ目は、シェーグレン症候群の診断を受けたのが、乳がんの手術から再発することなく10年を迎えた節目の年だったこと。「再発しないよう10年間、健康に気をつけて慎重に生活してきたのに、なぜ?」と思いました。
編集部
もう1つの理由とは?
すずきあさよさん
母が同じシェーグレン症候群を患っていたのですが、子どもの頃から母との関係がうまくいかなかったため、母と同じ病気になった自分を許せず、受け入れることができませんでした。とはいえ、命に関わる病気ではないので「がんの再発よりは良かった」とも思いました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
すずきあさよさん
検査を受けた国立病院では、薬物療法の必要性を説明されました。ただ、臓器障害がなかったこと、コロナ禍で通院が困難だったことから、ひとまず「近所の耳鼻科クリニックへ半年に一度の定期検診で良いでしょう」ということになりました。
口と鼻にラップを張り付けられたような苦しさ
編集部
シェーグレン症候群を発症したあと、生活にどのような変化がありましたか?
すずきあさよさん
不調の原因がはっきりして、漠然とした不安感は解消されました。その一方で「大好きな歌は歌えるの?」「会話を必要とする仕事は続けられるの?」といった不安がありました。あとは、キッチンラップを口と鼻に貼り付けられたような乾燥感に苦しむようになりました。こちらは漢方薬を処方している耳鼻科クリニックに通い、症状が緩和されました。今では大好きな歌も歌えています。
編集部
薬の副作用などはありますか? ある場合、その薬名も教えてください。
すずきあさよさん
漢方薬は白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)と五苓散(ごれいさん)を服用していましたが、副作用は特に感じませんでした。私の場合はもともと「できるだけ薬を使いたくない」という考えがあったため、漢方薬を主に服用していました。
編集部
シェーグレン症候群の症状の改善や悪化を防ぐために、気をつけていることはありますか?
すずきあさよさん
症状を悪化させないことが大事なので、身体の声を聴くようにしています。人混みを避け、体調が悪くなったと感じたら早めに休み、すぐに通院するようにしています。子どもたちにも生活面で迷惑をかけたくないという想いからです。また、緊張すると唾液の分泌量が少なくなり、より乾燥を感じてしまいます。なので、何事もリラックスして無理のない範囲で取り組むよう心がけています。心と体の平和を保つことを意識していますね。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
すずきあさよさん
最終的に、同じ病を経験した母の言葉に支えられました。「子どもの頃一緒に暮らしていたのに、母の苦労を何もわかっていなかった」と今になって痛感しています。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
すずきあさよさん
朝は近くの森をゆっくり歩きながら歌い、穏やかな時間を過ごしています。スケジュールも余裕を持って組むようにしていますね。あとは、物質的な価値にとらわれる生き方を見直すようになりました。身近な幸せを大切にすることで、日々の暮らしが穏やかになりました。不調のない現在の体調を維持するために、無理をしない、簡素な暮らしを楽しんでいます。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
すずきあさよさん
病気のことに限らず「人生は何が起こるかわからないよ」と助言したいです。病気になった自分にがっかりすることもありましたが、今では「これは自分に与えられた人生を深く理解する良い機会」だと思うようになっています。
「外見では分かりにくい病気がある」と知ってほしい
編集部
シェーグレン症候群のことをよく知らない人に一言お願いします。
すずきあさよさん
シェーグレン症候群はほかの病気と比べると、周囲からの理解が得にくいと思っています。なので「外見ではわかりにくい病気を抱えている人もたくさんいる」ということを知っていただけたらと思います。「無理をせず、リラックスしながら過ごす」というと、わがままに聞こえるかもしれません。でも、これは症状を悪化させないための努力なのです。そうして日々を過ごしている人もいるということを、理解していただけたら嬉しいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
すずきあさよさん
西洋医学だけでなく、東洋医学も含めて、その人に合った治療法を見つけるよう、サポートをしていただけると良いと思います。検査の数値はもちろん大切ですが、数値では表せない心のもどかしさや日常生活での不便さを感じている人もいますので、ケアしてあげてほしいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
すずきあさよさん
「水を飲んでも喉の渇きが治らない」といった症状があれば、年齢や発声方法の問題だと決めつけず、早めに受診することをおすすめします。あとは自分に合った治療法を見つけること、普段の小さな体調変化も気軽に相談できるホームドクターを見つけることを意識されると良いと思います。
編集部まとめ
すずきあさよさんの言葉からは「自分の身体の声を聴いてあげることの大切さ」を強く感じました。もし、身体に異変を感じている人がいたら、早めに病院を受診してみてください。身体が出したSOSを見逃してはいけません。そしてシェーグレン症候群のように、外見ではわからない病気を抱えている人がいることを知り、少しでも理解を深めていただければ幸いです。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。