浮気・不倫がやめられない…「セックス依存症」かも? 8つの診断基準を医師が解説
昨今、芸能界でも話題が尽きない浮気・不倫問題。浮気や不倫を繰り返すのは、単なる「遊び」や「性格」の問題なのでしょうか? じつは、その背景に「セックス依存症」という心の病気が隠れている可能性もあるそうです。なぜ、浮気や不倫を繰り返してしまうのか。セックス依存症とは、一体どんな病気なのか、どうすれば克服できるのか。医師の秋谷先生にわかりやすく解説していただきました。
監修医師:
秋谷 進(東京西徳洲会病院小児医療センター)
目次 -INDEX-
なぜ、浮気・不倫をしてしまうのか 男女それぞれどんな心理が働く?
編集部
なぜ、浮気・不倫をしてしまうのでしょうか?
秋谷先生
※Adultery understanding as a psychological problem by the representatives of different ethnic groups
編集部
「浮気・不倫は遺伝子も関係している」という話を聞いたことがあります。本当ですか?
秋谷先生
※Why women cheat:testing evolutionary hypotheses for female infidelity in a multinational sample
編集部
男性側が浮気・不倫するときに、特有の心理状態や要因はありますか?
秋谷先生
- 進化心理学的な要因:進化心理学的に、男性は子孫を残すために複数の女性を求める傾向があり「約50%が生涯に一度は浮気を経験している」という調査結果があります。
- 社会文化的要因:男性の浮気は女性より容認されやすく、約30%が男性の浮気を「仕方がない」と考えている現状が影響していると考えられています。
- 心理的要因:男性は約70%が「刺激が欲しかった」と回答。性的な刺激への反応が強く、新しいものを求める傾向や、仕事からの逃避なども理由に挙げられます。
- パートナーの問題:パートナーとのコミュニケーション不足や性的不一致など、約60%がパートナーへの不満を理由に挙げています。
- 個人の性格:自制心の欠如や責任感の不足、自己中心的な性格も浮気・不倫につながりやすいとされています。
※Relationship status and gender-related differences in response to infidelity
編集部
女性側についてはいかがでしょうか?
秋谷先生
- 進化心理学的な要因:「女性は限られた数の子どもしか産めないため、より質の高い遺伝子を持つ男性と子どもを作るように進化してきた」という考え方があります。そのため、現在の夫よりも優れた遺伝子を持つ男性が現れた場合、浮気・不倫をしてしまう可能性があります。
- 社会文化的要因:近年、女性の社会進出が進み、経済的に自立する女性が増えています。そのため、男性に頼らずとも生活できるようになり、浮気・不倫に対する心理的なハードルが下がっている可能性があるとされています。
- 心理的要因:男性と比べて女性は共感力が高く、感情的なつながりを求める傾向があります。夫と精神的なつながりを感じられない場合、それを求めて浮気・不倫をしてしまうことがあります。
- パートナーの問題:夫とのコミュニケーション不足や愛情不足を感じている場合、それを埋めるために浮気・不倫をしてしまうことがあります。また、セックスレスや性的欲求の不一致なども、女性が浮気・不倫に走る要因となり得ます。
- 個人の性格:自己肯定感が低い女性は、浮気・不倫によって自分の魅力を確認し、自信をつけようとする傾向があるとされています。また、依存的な性格の女性は、相手に依存することで安心感を得ようとし、それが浮気・不倫につながることも考えられます。
編集部
これらは全ての人に当てはまるのでしょうか?
秋谷先生
いいえ。これらの要因はあくまで一般的な傾向であり、全ての人に当てはまるわけではなく、浮気や不倫の原因は人それぞれです。似たような状況や性格であっても浮気や不倫をしない人もいれば、逆にこれらの要因に当てはまらない理由で、浮気や不倫をしてしまう人もいるでしょう。人間の行動は「本来の人間としての性質」「社会的な要因」「心理学的な要因」「個人の性格」など、様々な要因が複雑に絡み合って決められています。大切なのは、それぞれが浮気や不倫をしてしまったとき、どのような経緯で至ったかをきちんと理解することです。
浮気・不倫がやめられないのは「セックス依存症」が原因?
編集部
浮気・不倫がやめられないのは、病気の可能性もありますか?
秋谷先生
そうですね。前述のとおり浮気や不倫を繰り返すのは、それぞれの「理由」がありますが、「セックス依存症(性依存症)」の可能性があります。セックス依存症は、性的な衝動や行動をコントロールできず、日常生活や人間関係に深刻な影響を及ぼす状態です。アルコールや薬物依存と同様に、専門的な治療やカウンセリングが必要となることがあります。もし心当たりがある場合は、専門の医療機関やカウンセラーに相談することをおすすめします。
編集部
セックス依存症の定義や診断基準について教えてください。
秋谷先生
■過去6カ月間、以下のうち3つ以上を満たす。
- 性的な活動に関連することに多くの時間を費やす。
- 性的な活動への欲求や衝動が強迫観念のようになっている。
- 性的な活動をコントロールしようと繰り返し試みるが失敗する。
- 性的な活動をおこなうことで、仕事、学校、家庭などにおける重要な義務を放置(neglecting)する。
- 性的な活動によって、対人関係の問題が生じている。
- 性的な活動によって、身体的または精神的な健康問題が生じている。
- 性的な活動によって、著しい苦痛または機能障害が生じている。
- これらの症状は物質(例:薬物)、またはほかの医学的状態(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。
※Sexual Addiction Disorder— A Review With Recent Updates
編集部
セックス依存症の原因はなんですか?
秋谷先生
セックス依存症の原因は、いくつかの要素が絡み合っています。まずは心理学的な問題が考えられます。具体的には、幼少期のつらい経験や愛情不足、自分に自信が持てない気持ちが、依存につながりやすくなります。また、ストレス解消の手段として性的行動を繰り返す場合もあり、ほかの依存症や強迫的な行動と似た傾向もみられます。
編集部
ほかにもありますか?
秋谷先生
脳科学的な異常があるケースも考えられます。例えば、セックス依存症では特定の神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)のバランスが乱れることで、欲求を抑えられなくなることがあります。また、性的刺激に対する反応が過剰な人では、大脳の腹側線条体や扁桃体などの特定の神経回路が異常に活性化することが確認されています。このように、セックス依存症は単にメンタルの問題ではなく、脳の問題の可能性もあるのです。
編集部
「セックス依存症かもしれない」と思ったときのチェックリストやセルフチェック方法はありますか?
秋谷先生
- 1日の大半を性的な動画の閲覧や性的なチャットに費やしている。
- 仕事中や勉強中でも性的な思考が頭から離れず、集中できない。
- 性的な衝動を抑えられず、不適切な場面で性的な行動をとってしまう。
- 性的な活動を「もうやめよう」と決意しても、数日後にはまた同じ行動を繰り返している。
- 性的な活動のために遅刻や欠勤が増え、仕事の評価が下がっている。
- 性的な活動が過剰すぎて友人や家族から心配され、関係が疎遠になっている。
- 性感染症に感染したことが複数回ある。
- 性的な行動が原因で、うつ病や不安障害の症状が表れている。
- 性的な衝動を抑えられない自分に対して、強い罪悪感や自己嫌悪を覚える。
セックス依存症との向き合い方 対処法・治療法を医師が解説
編集部
セックス依存症になったときに考えられるトラブルはなんですか?
秋谷先生
セックス依存症になると、「浮気や不倫によるパートナーとの信頼関係の破綻」「家族や友人との人間関係の悪化」「性病リスクの増加」「違法な行為に及ぶ可能性の増加」「仕事や学業に集中できず、社会生活への悪影響が出る」など、多くのトラブルが考えられます。
編集部
セックス依存症の対処法はありますか?
秋谷先生
セックス依存症は単にメンタルの問題だけではない可能性があるので、専門家による診断・治療が必要です。そのため、けっして自分1人で抱えずに、医療機関を受診しましょう。カウンセリングや治療を受けることで改善が期待できます。
編集部
セックス依存症の治療法について教えてください。
秋谷先生
セックス依存症の治療法には、「認知行動療法(CBT)」「精神分析療法」「薬物療法」などがあります。認知行動療法は、依存症の根本的な行動や思考パターンを見直し、トリガーへの対処法を学ぶ方法です。薬物治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やアルコール依存症に使われるナルトレキソン、抗アンドロゲン薬などが使われます。セックス依存症の治療には時間がかかる場合もあり、再発のリスクもありますが、早めに治療することで多くの人がコントロールできるようになります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
秋谷先生
もしセックス依存症が原因で浮気・不倫に走ってしまっても、まずは自分を責めずに勇気を出して専門家に相談してください。1人で抱え込んでも限界があります。非常にデリケートな問題であり、周囲の目を気にしがちですが、様々なサポートを受けることで改善されやすくなります。浮気や不倫を避けるためには、信頼できる人とのコミュニケーションを深めたり、趣味や運動など健全な活動に時間を費やしたりすることが効果的です。自分自身を大切にし、小さな一歩から始めてみましょう。
編集部まとめ
浮気や不倫を繰り返してしまう人には、意外と複雑な背景が隠れているかもしれないことがわかりました。愛情不足や承認欲求、性的欲求の不一致など様々な要因が考えられますし、中にはセックス依存症という病気の可能性もあります。本記事で紹介したチェックリストに当てはまる人は、専門家への相談をおすすめします。