【闘病】「急性大動脈解離」で奇跡の生還を遂げた加藤貴さんのケース 生活習慣は大事!
加藤貴さんは、Stanford A型急性大動脈解離とアテローム血栓性脳梗塞を経験しました。どちらも生活習慣の乱れで発症のリスクが高くなる疾患であり、加藤さんも不摂生な生活を送っていたそうです。加藤さんの闘病体験から、急性大動脈解離とアテローム血栓性脳梗塞について、どのような危険があるのか、発症後にどんな生活習慣の変化があったかを知り、今後の生活に活かしてください。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年7月取材。
体験者プロフィール:
加藤 貴
50代の男性。2022年2月、外出中に突然の胸痛に襲われ、救急車で病院へ搬送された。検査で大動脈解離と判明し、緊急手術を受ける。さらに、手術中に心筋梗塞を発症したものの、奇跡的に一命を取り留めた。しかし、退院後に左半身の麻痺を発症し、アテローム血栓性脳梗塞と診断を受け、カテーテル手術も受けた。入院と自宅療養で半年経過した後、仕事へ復帰。
記事監修医師:
大沼 善正(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
生活習慣の大切さを思い知る良い経験だった
編集部
はじめに加藤さんの闘病経験を通して、最も大事だと思うことや伝えたいことは何でしょうか?
加藤さん
やはり「生活習慣病を甘く見ない方がいい」ということです。私の経験した大動脈解離や脳梗塞の場合、糖尿病予備軍や高血圧などリスクのある方は特に注意してほしいです。私の場合は偶然が重なって命は落とさずに済みましたが、「車の運転中に発症していたら」「手術できる先生がいなかったら」「脳梗塞のときにすぐ病院に行っていなかったら」と想像するだけでゾっとします。今こうしてジムに通えるくらいにまで回復し、後遺症もほとんどないことは、まさに奇跡としか言えません。だからこそ、日頃の生活習慣に気を遣い、異変を感じたときは素直に病院を受診することが大切だと感じています。
編集部
ありがとうございます。次に、加藤さんの経験したStanford A型急性大動脈解離とアテローム血栓性脳梗塞について教えてもらえますか?
加藤さん
まず、Stanford A型急性大動脈解離は、心臓から伸びる上行大動脈に解離(血管が裂けること)が発生するもので、緊急手術を行わなければ命を落とす可能性が高い危険な疾患です。私は幸いにも手術ができる医師がいたおかげで、奇跡的に命は助かりました。次にアテローム血栓性脳梗塞ですが、動脈硬化で血管が狭くなり、狭くなった血管の内側に血液中の血小板などがこびりつくことで、血管が閉塞してしまう疾患です。症状は突然発症することが多く、麻痺や言語障害なども現れます。どちらも生活習慣の悪さが原因になりやすく、不摂生やストレスの多い生活を送る人ほど発症リスクが高いとされています。
編集部
加藤さんの場合も急な発症だったのでしょうか?
加藤さん
そうです。2022年2月の休日に、ラーメン屋で昼食後、帰りの車に乗り込んだところ、突然激しい胸の痛みに襲われました。「これはやばい」と思い、店内に戻って店員に救急車を要請したところで意識はなくなりました。話によると救急車で病院に搬送され、そこで検査を受けたところ「大動脈解離」と判明し、緊急手術が決まったそうです。
編集部
大動脈解離は急に発症することから死亡率が高い疾患として知られています。すぐに緊急手術できたうえ、成功したのは幸運でしたね。
加藤さん
その点は運が良かったのですが、問題は手術中に起こりました。上行大動脈置換術を受けたのですが、その過程で心筋梗塞を併発してしまいました。幸いにも手術は成功し、2週間ほどの入院で済んだのですが、退院して20日ほどで今度は左半身に麻痺が表れたのです。救急外来に駆け込んだところアテローム血栓性脳梗塞と判明し、今度はカテーテル手術を受けて、無事に生還できました。
編集部
アテローム血栓性脳梗塞も早期発見・治療が重要な疾患ですね。術後はどのような経過だったのでしょうか?
加藤さん
約1か月の入院をして、その後は5か月間自宅で療養しました。幸いにも再発することはなく、療養が明けてからは職場復帰もできました。
健康への意識を180度変えるほど大きな体験となった
編集部
病気を発症したときの心境についても教えていただけますか?
加藤さん
急性大動脈解離のときは急な発症で、その後意識も失いましたからはっきりとは覚えていません。しかし、ICUに入ったときには「このまま死ぬのか……」と、自分の死を感じました。その後のアテローム血栓性脳梗塞を発症したときは、「なんでやねん」という感じです。どちらも死を連想させるには十分な病気で、その後の治療や療養生活に大きな影響を与えたと思います。
編集部
急性大動脈解離とアテローム血栓性脳梗塞を発症後、加藤さんの生活や日々の習慣で変わったことはどんなことですか?
加藤さん
一番大きく変わったのは健康に対する意識です。これは180度変わりました。食事の栄養バランスはもちろんですが、日々の運動も行うようになりました。まず、毎朝トマトジュースにオリーブオイルを混ぜて飲み、心臓や血管に良い栄養素のサプリメントも摂取しています。また、血圧や血糖値を整えるために週3日ジムに通って、軽い筋トレとエアロバイク、水泳で1時間半ほど運動もしています。他にも週1・2回程度ですが20分ほどのウォーキングをするのも習慣です。おかげで今は元気に仕事ができています。
編集部
現在の体調はどのような状態か教えていただけますか?
加藤さん
病気前と同じ、というわけにはいきませんが、大病を経験したにしては体調も良い方だと思います。ただ、今でも手術の影響で嗄声(声の出にくさ)があるのが悩みです。手術で長い時間人工呼吸器のための挿管をしていたため、声帯が麻痺してしまい、今でも声のかすれは残っています。あとは睡眠不足になりやすいのも悩みです。それ以外はおおむね良好ですから、体調は良いほうだと思うことにしています。
突然襲ってくる病だからこそ日頃の備えをすること
編集部
加藤さんは病気をきっかけに生活を見直したようですが、以前の自分にアドバイスできるなら何を伝えたいでしょうか?
加藤さん
「まずは食生活を改善して運動しろ」ということ、もう一つは「ブラック企業には行くな」ということです。当時は激務の上に乱れた食生活に運動不足もあり、病気の発症の原因になったと思うからです。そして、仕事のストレスも大きかったと思います。この2つさえ気を付けていれば、違った未来もあったのではないかと考えています。
編集部
急性大動脈解離やアテローム血栓性脳梗塞という病気について、あまり詳しく知らない人に伝えたいことはありますか?
加藤さん
この病は何の前触れもなく、本当に突然やってきます。私もいつもと変わらぬ休日を過ごしていたときに、突然胸の激しい痛みに襲われ、意識を失いました。とはいえ、普段から血圧や血糖値などに気を付けていれば、リスクを下げることはできます。病はいつ襲ってくるかわからないからこそ、日頃から体調管理をすることが大切だと知ってほしいです。
編集部
加藤さんが医療従事者の方に期待すること、伝えたい言葉はありますか?
加藤さん
私が急性大動脈解離を発症したとき、医師からは「成功する可能性は低い」と言われました。しかし、私は奇跡的に助かり、今ではジムに通い、職場復帰もできるほど回復しています。私の命を救ってくださった病院の皆様には、感謝しかありません。ICUにいたときは幻聴や幻覚で騒いでいたと記憶しており、そのようなときも丁寧に対応していただきました。医療従事者の方には、これからも沢山の奇跡を起こしていただき、多くの人の命をつないでほしいです。
編集部
最後に読者へメッセージをお願いします。
加藤さん
私の経験談からですが、健康診断の結果に少しでもリスク要因がある場合は、迷わず生活習慣を変えるという選択をしてもらったほうがいいと思います。生活習慣の乱れから発症する病気は多いので、日頃から健康に気を遣うことが何よりも大切です。健康診断で要検査やリスクありの判定が出たら、少しずつでも健康に優しい生活に切り替えてほしいです。
編集部まとめ
Stanford A型急性大動脈解離は発症すると予後不良になることが多く、命の危険もある非常に危険な疾患です。動脈硬化や高血圧、糖尿病、脂質異常症など、生活習慣に関係する要素が原因とされています。そのため、加藤さんも語ったように、少しの異変でも見逃さず、生活習慣を改善することが重要となります。生活習慣改善の重要性を再認識するとともに、突然の激しい胸痛には十分警戒してください。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。