【闘病】わかってない! 「子宮体がん」で経験した治療・副作用・後遺症の辛さ
小夏さん(仮称)は、子宮体がんで手術と抗がん剤治療を経験しました。子宮体がんは女性の子宮に発症するがんであり、2020年には全国で約1万8000人が診断されている病です。40代後半から発症リスクが高くなり、50代でピークを迎えます。主な初期症状は不正出血やおりものに血が混じるといったものであり、小夏さんも同様の症状が受診のきっかけとなったそうです。今日に至る経緯を詳しく聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年5月取材。
体験者プロフィール:
小夏さん(仮称)
40代女性。2023年7月頃から性器の不正出血が現れ、黄色っぽいおりものの量が徐々に増加したため近所の産婦人科を受診した。検査で腫瘍と思われるものがあったため、がんセンターで10月末に検査、11月末頃手術を実施した。手術後は2024年1月から抗がん剤治療を実施し、5月に終了となった。定期的な経過観察を行いながら、治療の後遺症と付き合っている。
記事監修医師:
鈴木 幸雄(神奈川県立がんセンター/横浜市立大学医学部産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
健康が自慢のはずなのに思わぬ病気が発覚
編集部
はじめに、なぜこのインタビューを受けようと思ったのですか?
小夏さん
がんの治療は、多くの困難がついてくることを世のたくさんの人に知ってほしいと思ったからです。がんは治る病気になってきた時代ではありますが、手術・抗がん剤治療の副作用・後遺症についてはあまり知らないという人も少なくないと思います。実際に私も手術を受ける前になって、色々な説明を受け、そのことで頭がいっぱいになって不安で心が押しつぶされそうになりました。
編集部
なるほど。そうかもしれません。
小夏さん
抗がん剤治療は以前より副作用が少ないと言われていますが、私は吐き気としびれ、倦怠感などで何度も治療を辞めたいと思いました。しかし、実際に体験するまでは「簡単に終わる治療」程度に思っていました。体験すると想像以上の痛みとしびれがあり、体験談を発信する必要があると強く感じました。
編集部
では、小夏さんが経験した子宮体がんについて教えていただけますか?
小夏さん
子宮のがんには子宮体部にできる「子宮体がん」と、子宮頸部にできる「子宮頸がん」があります。どちらにできるかで治療方針も変わるのですが、私の場合は検査でも判別が難しい部分にできていました。主な症状は不正出血で、私も不正出血とおりものの量の増加で異変に気づきました。それまではスポーツや登山をして健康的な生活を送っていると思っていたため、子宮体がんの宣告には驚きました。
編集部
検査を受けるきっかけは何だったのですか?
小夏さん
不正出血とおりものが増えて3か月ほど経った頃、友人と話したことをきっかけに診察を受けました。50代が近づく中で、体に異変が出ていてもおかしくはないと思い、近所の産婦人科を受診しました。そして、エコー検査で腫瘍のようなものが見つかり、医師から「できている場所が良くない」と言われたため、がんセンターに紹介してもらいました。
編集部
がんセンターで診てもらって、どのような検査と説明を受けたのでしょうか?
小夏さん
子宮の細胞を取る細胞診を受けたのですが、子宮体がんか子宮頸がんかの判断が難しいと言われました。「位置的には子宮頸がん」ということで、子宮頸がんとして11月末に手術を受けることになりました。
編集部
がんと告げられたときはショックだったのでは?
小夏さん
むしろ、吹っ切れた気持ちになっていたと思います。最初の産婦人科では「この場所の腫瘍は珍しく、今まであまり診てきていない。そのうち1人は1か月後、もう1人は2年後に亡くなった」と聞かされていたので、最初はショックと不安もありました。しかし、がんセンターではっきりと病名(子宮体がん)がわかり、治療も受けられると知ってホッとしたと同時に、診察室を出るころには前向きに治療へ向かおうと切り替えられました。それまではおりものに悩まされていたほか、落ち込んで夜は眠れず、食欲も湧かなかったので、はっきりしたことで「これで解放される!」と思えたのがその理由です。
編集部
治療は具体的にはどのような方針だったのでしょうか?
小夏さん
まず手術で子宮・卵巣・リンパ節・腟の一部まで切除する広汎子宮全摘術を行い、採取した細胞の病理検査結果次第で、追加の抗がん剤治療が必要になるかもしれないと言われました。実際に私の子宮体がんは悪性度であるグレードが高かったため、手術後には再発予防の目的でTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン療法)を約5か月間、計6回行いました。
抗がん剤治療後も辛い副作用に悩まされる
編集部
治療に伴う副作用や後遺症で困ったことはなんだったのでしょうか?
小夏さん
広汎子宮全摘術の影響で尿意をほとんど感じず、リンパ節郭清の影響で下半身がむくみやすいので大変です。脚がむくむと力が入りにくく、つまずきやすさ、ふらつきやすさなども出るため日常生活でも困ることが多いです。また、抗がん剤治療の副作用で手足に痺れが残っており、長時間歩くと足が痛み始めます。以前はスポーツや登山も楽しんでいたのですが、現状はそれも難しい状態です。
編集部
病名が判明してから、小夏さんの生活で変わった部分はありますか?
小夏さん
一番変わったのは心構えで、当たり前の毎日をしっかり楽しむことを大切にするようになりました。子宮体がんと分かってからは、がんに勝つために気持ちが暗くならないようにし、日々を明るく過ごすように心掛けました。また、笑うことは免疫力をアップさせると聞いたので、今まで以上によく笑うようになりました。がんと分かるまでは、いつ死んでも後悔しない生き方をしてきたつもりですが、いざ「死ぬかもしれない」と考えたときに、私の中で「まだ死にたくない!」という強い気持ちがあるとわかりました。だからこそ、治療が終わってからは、これまで以上に後悔がない人生にするために「したいことはすぐに行う、会いたい人には会う」ことを大事にしています。
編集部
小夏さんが治療中の心の支えにしたものは何でしょうか?
小夏さん
家族と仲間の支えです。手術前から抗がん剤治療が終わるまで、今まで変わらず接してくれたおかげで、穏やかな気持ちで過ごすことができました。また、辛い抗がん剤治療中は、病院で知り合ったがんと闘う仲間に助けられました。お互いにがんになった者しか分からない不安や悩み、抗がん剤治療の辛さを分かり合えて、仲間がいたことが治療を乗り越える大きな力になったのは間違いないです。
編集部
小夏さんは2024年5月に抗がん剤治療を終えたそうですが、現在の体調や生活で困っていることなどはありますか?
小夏さん
現在は治療を受ける前と同じくらいの生活に戻れていますが、抗がん剤治療の副作用で手足のしびれは残っています。特に足のしびれが酷く、長時間歩くと鋭い石の上を歩いているような、刺されるような痛みを感じることがあります。とても痛くて辛いですが、治療前のように登山ができるように「これもリハビリだ」と思い、動くようにしています。ほかにも、手術でリンパ節郭清を行ったため、リンパ浮腫のリスクが高く、今も下半身がむくみやすく、痛くなることが術後の悩みです。リンパ浮腫のリスクがあるので、激しい運動はできないですし、同じ態勢で長くいることもできなくなり、これまでと同じようにやりたいことをやれないことが辛く、悔しいです。
がん治療はほとんどの患者にとって初めての経験であり、医療従事者にもそのことを理解してほしい
編集部
子宮体がんについて、普段は意識せずに過ごしている人に伝えたいメッセージなどはありますか?
小夏さん
私自身もそうでしたが、ほとんどの人は思い込みで「まさか自分がなる病気ではない」と思っているでしょう。しかし、なってから気づくのでは遅いですから、定期的に検診を受けることと、少しでも「何かおかしいな」と思ったら受診してほしいです。がんは早期なら治る病気ですが、少しでも進行しているとメンタル、体の双方に負担が大きくかかり、今まで当たり前にできていたことができなくなります。よく言われていることですが「早期発見・早期治療」を心掛ければ、元の生活に戻りやすくなりますから、頭の片隅に覚えておいてほしいです。一度、“がん”と宣告されると、手術や化学療法をできたとしても、一生「転移」「再発」「生存率」を常に意識せざる負えない病気であることを忘れないでほしいです。
編集部
小夏さんの経験を通して、これからの医療従事者に期待することはありますか?
小夏さん
診察や手術前、抗がん剤治療前など、医師からの説明を受ける機会が多くある中で、初めて聞く単語や専門用語がたくさんありました。そのせいでメモを取ることすら難しく、頭の中は疑問だらけでした。医師や看護師の方々は毎日同じような話をされていて慣れているのでしょうが、私を含め多くの患者にとって「がん」は初めての経験です。ゆっくりと、大きな声で説明してほしいこと、そしてわからないことを訊きやすい雰囲気、環境を作っていただけると助かります。医師の言葉が患者にとってどれほど重いものか、認識していただけることを願います。
編集部
最後に読者へ伝えたいことがあれば、お願いできますか?
小夏さん
この記事を読んでいる方には、がんになってから「あの時こうしておけばよかった」と後悔しないように、定期的な検診を受けてほしいです。特に、検診に長らく行っていない人は、これを機に受けてみてください。婦人科はほかの診療科と違い足が向きにくいところですが、自分の命を守るために、何かあればすぐ受診すべきです。がんは治る病気になってきていますが、早く見つけて治療できれば、その分失うものも少なくて済みます。命と引き換えになることもありますから、病気を甘く見ず、異常があれば早期受診することが大切です。がんは誰にでもなる可能性があると念頭に置いて、他人事と思わずに定期的な検診を受けてください。受診して”問題なし”と言われて安心を得ることが大切です。
編集部まとめ
多くの方にとって、がんは身近な病気であるにも関わらず、いざ経験すると「なぜ私が」と感じることが多いようです。以前は「がん=死」のイメージが強く、命を失うかもしれない恐怖におびえる人も多くいました。しかし、現代の医療は大きく進歩しており、早期発見によって完治する可能性も高まっています。小夏さんも話していた通り、定期的な検診・健診が病気から身を守る術になります。自分自身や家族、大切な人達との日常を続けていくためにも、異常の早期発見が大切です。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。