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【闘病】「皮膚筋炎」 筋肉に力が入らず、道端で倒れて血だらけになったことも(1/2ページ)

 更新日:2025/08/20
【闘病】筋肉に力が入らず、道端で倒れて血だらけになったことも《皮膚筋炎》

「皮膚筋炎」というと馴染みのない疾患かもしれませんが、「膠原病」というと聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。皮膚筋炎も膠原病の一種であり、皮膚と筋肉に炎症を引き起こす自己免疫疾患で、日常生活に多大な影響を及ぼします。ここでは、ある日突然起き上がれなくなり皮膚筋炎と診断されたナンシーさん(仮名)に、診断を受けるまでの経緯や治療、現在の生活や印象的だったエピソードなどを聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年5月取材。

ナンシーさん

体験者プロフィール
ナンシー(仮称)

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山形県在住。1972年生まれ。一人暮らし。39歳の時に関節リウマチを発病。薬で寛解状態の中、結構ハードな仕事をこなしながら2年程経った頃、関節リウマチが再燃。今までになかった症状も徐々に現れ仕事にも支障が出たため退職を決意。病状が分からないまま半年以上たった後、難病の皮膚筋炎と診断されるが、2年後新たな仕事を見つけ社会復帰。その後8年の間に2度再燃したが、現在は2・3月に1回くらいのペースで通院し薬を服用しながら寛解状態に至る。

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

不調は「持病のせい」だと思っていた

不調は「持病のせい」だと思っていた

編集部編集部

最初に不調を感じたのはどういった状況だったのですか?

ナンシーさんナンシーさん

もともと持病に関節リウマチがあるのですが、関節の痛みや発熱、朝のこわばりなどが強くなり「関節リウマチが再燃しはじめている」と、通っていた町の整形外科に相談しはじめていました。ドライヤーを片手でもつこともできず、壁で肘を支えながら髪を乾かしていましたが、これもリウマチによるものだと思っていました。

編集部編集部

そこからどのように受診にいたったのですか?

ナンシーさんナンシーさん

ある朝、起き上がることができなくなったのです。その時はベッドではなく布団に寝ていたので、低い位置から立ち上がる必要があったのですが、どんなに体制を変えてみても体に力が入らず、立ち上がれませんでした。リウマチの症状に気をとられていて、筋肉が弱くなっているとは思いもよりませんでした。今まで無意識に行っていた「立ち上がる」ということができないという状態が理解できず、一人暮らしの私は混乱のあまり泣きながら叔母に電話をしていました。

編集部編集部

受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。

ナンシーさんナンシーさん

関節リウマチで通っていた町の整形外科でも改善せず、38度以上の発熱がほぼ毎日出ていました。発熱した時は余計に関節痛もひどく、大学病院に紹介状を書いてほしいと先生にお願いしました。整形外科医は「どこに行っても同じだと思う」と紹介状を書くのを渋っていましたが、なんとか大学病院の整形外科に行けることになりました。この時点で、最初に立ち上がれなかった日から半年近くたっていました。

編集部編集部

大学病院で診断を受けたのですか?

ナンシーさんナンシーさん

そうです。大学病院では、整形外科だけでなく、内科や脳神経外科などでいろいろな検査と診察をしました。2か月程たっても病名が分からなかったので、ひとまず関節リウマチの皮下注射アクテムラを始めることになりましたが、何回か注射をしても改善が見られませんでした。そんな中、インターネットで「皮膚筋炎」という病名を知り「自分はこの病気ではないか」と疑いはじめていたころ、内科の先生から「筋肉が損傷しているかどうかを調べるCK値が高いので、入院して詳しい検査と治療をしましょう」と言われました。

編集部編集部

そこからの告知はどのような形でしたか? また、その時どのように感じましたか?

ナンシーさんナンシーさん

入院して1週間くらい経った頃、主治医の医師から身内を呼ぶように言われ「皮膚筋炎です」と告知されました。親は高齢だったので「来なくてもよいのでは?」とも思ったのですが、薬をたくさん使う治療で副作用もあることから、説明必須なのだと理解し病院にきてもらいました。

病名がわかるまで1年… 「やっと治療に進める」と安堵

病名がわかるまで1年… 「やっと治療に進める」と安堵

編集部編集部

皮膚筋炎とはどんな病気なのでしょうか?

ナンシーさんナンシーさん

自己免疫性の炎症性筋疾患で、膠原病と呼ばれる病気の一種です。筋肉や皮膚などを自分の免疫が攻撃してしまい、筋組織が壊れていく病気で、主な症状としては、筋肉に力が入りにくくなり、易疲労感(さほど体を使っていないのに疲労を感じる)や筋肉痛、発熱、皮膚症状(かさつき・赤み)などがあります。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

ナンシーさんナンシーさん

薬物治療として、免疫抑制剤プログラフ(タクロリムス)とプレドニン(ステロイド薬)を、まずは多めに服用し、その後、様子を見ながら減らしていくとの説明がありました。また、副作用に対する薬剤も一緒に服用するとのことでした。薬が多い間は感染しやすくなるため入院し、ステロイドが30mg/日になったところで退院。そこからしばらくは月2回の通院、様子を見て大丈夫であれば月1回の経過観察のみとなる、とのことでした。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

ナンシーさんナンシーさん

立ち上がれなくなった日から1年かかってやっと病名がはっきりし、いよいよ治療に進めることになったので、とてもほっとしました。ありがたく感じたことを覚えています。とにかく痛みから解放されたい、発熱から解放されたいと思っていたので、なにより治療を進めたい一心でした。

編集部編集部

実際の治療はどのようにすすめられましたか?

ナンシーさんナンシーさん

まずはステロイド薬50mg/日服用を4週間続け、5週目から10mg減らして40mg/日を2週間、7週目から5mg減らして35mg/日を2週間……といった感じで進められました。症状と血液検査の結果、副作用のチェックなどを行いながら、最終的に30mg/日で退院し、その後は通院しながらさらにステロイドを減量していきました。最終目標は5mg/日でしたが1年以上かけてやっと7.5mg/日くらいになったところで再燃がありました。再度ステロイドを増量し、そこからまた少しずつ減らすという繰り返しになりました。副作用によるムーンフェイスなど、見た目の違和感もありましたし、ステロイド減量を焦ると再燃してしまうもどかしさもあったのをよく覚えています。結局、寛解状態になるまでは2年くらいかかりました。

編集部編集部

薬との闘いだったのですね。

ナンシーさんナンシーさん

ステロイドのほかにも2種類の免疫抑制剤、肝臓の薬、ビタミンDの薬、胃薬と抗菌薬、葉酸、睡眠導入剤もあわせて服用しており、薬の多さに手がプルプル震える時期もありました。骨粗しょう症の薬も併せて飲んだほうがよかったようですが、処方を忘れていたようで5年くらい前から飲み始めました。入院から10年経ち、現在は飲みたくない薬を自ら申し出るなどして、様子を見ながらですがだいぶ減らすことができています。

編集部編集部

受診から手術、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

ナンシーさんナンシーさん

入院一週間くらい前、外出時にちょっとした段差で転んだことがありました。一瞬のことで何が起きたか分からなかったのですが、転んだだけでなく、顔面をコンクリートの地面に打ち付けてしまっていたそうです。そこに突然ゲリラ豪雨のような雨が降り出したのですが、腕にも足にも力が入らず立ち上がれないまま、顔面から出たと思われる血が地面を流れていくのを見ながら雨に打たれていました。

編集部編集部

そこからどうされたのですか?

ナンシーさんナンシーさん

通りがかった人が気づいてくれて、停めていた私の車まで連れて行ってくれたので助かりました。顔面血だらけでやっと車に戻った時の、車で待っていた母の驚いた顔が忘れられません。自宅に戻ってから消毒をして、キズパワーパットを貼り自分で手当をしたのですが、地面に打ち付けて歯が当たったようで唇と鼻の下のところが裂けてしまっていました。病院で縫ってもらおうか迷ったのですが、キズパワーパッドのみで治しました。今もキズはありますが縫い後が残るよりは良かったような気がしています。一度地面に倒れると立ちあがる動作ができない……。それほど筋肉が壊れていたことを改めて認識させられたショックな出来事で、今でも思い出すとゾッとします。

体と心はつながっていて、切っても切れない

この記事の監修医師