【闘病】「精巣がん」で睾丸は握り拳まで腫れ上がり摘出 『子どもができないかも…』
国立がんセンターがん対策情報センターの推計によると、「日本人男性の二人に一人、女性の三人に一人ががんになる」と言われています。今回、自身の体験を語ってくれたはらさん(仮名)は、精巣腫瘍(精巣がん)と診断されました。結婚して半年のことだったため、「将来子どもができないのではないか……」という不安もあったそうです。病気発覚から寛解まで、詳しく話を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年4月取材。
体験者プロフィール:
はら(仮称)
1987年生まれ、長野県松本市在住。家族構成は妻・娘(発症〜闘病時は妻のみ)。作業療法士として老人保健施設へ勤務。2014年5月精巣腫瘍(精巣がん)の告知を受け、翌6月から入院し、摘出手術や抗がん剤治療を開始。2015年1月に最終のリンパ節郭清術を受け、同月に医師より「寛解」と診断される。その後は月1回ごとの定期観察へ移行、1年経過時より半年に1回、5年経過時~現在は年1回の観察受診で経過観察中している。
記事監修医師:
石川 智啓(名古屋大学医学部附属病院泌尿器科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
痛みと腫れが半年ほど続き、泌尿器科を受診
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
はらさん
痛みや腫れが半年ほど続いたためインターネットで調べたところ、精巣腫瘍の疑いがあることが分かり、地元の総合病院の泌尿器科を受診しました。その日、泌尿器科は休診だったのですが、症状を受付の方に伝えたところ、その内容を医師へ伝えてくれました。
編集部
その後どうなったのですか?
はらさん
「急いで検査をした方がよい」と医師からの返事があり、その後、急遽血液検査やエコー、造影CTなどの検査をすることになりました。検査の結果、医師から精巣腫瘍であることが告げられました。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
はらさん
病気との関連性があるかは不明ですが、めまいや慢性的な倦怠感など、体調不良を感じることが増えてきていました。そんな中、歩いたり動いたりしたときに、下着など何かに触れるたびに、左の睾丸に強い痛みを感じるようになってきました。最初は痛みだけだったので様子をみていましたが、痛みが弱まることはありませんでした。1~2カ月ほど経ったころから徐々に睾丸が腫れ始め、痛みを感じ始めてから半年ほど経ったころには睾丸が握り拳ほどに腫大していました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
はらさん
告知された病院では対応できないため別の病院を紹介され、まずは手術で左の睾丸を摘出し、その後再入院して4カ月ほど抗がん剤治療を行うと言われました。リンパ節に転移もしていたので、抗がん剤でがん細胞が鎮静化したら、再入院して最後にリンパ郭清の手術をするとのことでした。
結婚して半年、「子どもができなくなるのではないか…」という不安も
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
はらさん
症状を基に自分で病気を調べて、精巣腫瘍の疑いがあると思い受診したのですが、いざ告知されると頭が真っ白になり、もはや他人事のようでした。家に帰り「がんなんかには負けない」と気持ちを切り替えましたが、結婚して半年ほどだったので「抗がん剤治療で子どもができなくなるのではないか……」などの不安が出てきました。
編集部
奥さまは何とおっしゃっていましたか?
はらさん
突然の報告に初めは驚いていましたが、「大丈夫だよ」「絶対治るから」と笑顔で声をかけてくれました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
はらさん
新婚生活から入院生活へとガラッと変わりました。抗がん剤治療中、副作用止めの薬が身体に合わなかったため、副作用を緩和する点滴なしでの治療となってしまいました。そのため副作用が強く出てしまい、ほとんど動けず、ベッドで寝たきりの生活となっていました。食事もあまり食べられず、最初の1カ月で10kg以上痩せました。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
はらさん
人との繋がりです。抗がん剤が思ったように効かず、入院中も転移が進んでしまっていたのですが、家族をはじめ友人など、いつも誰かが見舞いに来てくれていました。「待ってくれている人がいる」「みんなが応援してくれている」と思うと、辛い治療も頑張らなくてはいけないと思えました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
はらさん
元々、生活リズムが乱れていたり、身体を酷使したりすることが多かったのですよね。これが原因と決めつけるわけではないですが、「生活は見直しなさい」と言いたいです。
定期的に自身の身体をチェックすることを忘れないでほしい
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
はらさん
髪が生え揃わない、手足の感覚や嗅覚の低下、息切れしやすいなどの後遺症は残っていますが、闘病中に出会った趣味により、さらに人との繋がりの輪が広がって、よりイキイキと元気に生活を送っています。抗がん剤治療中に肺塞栓症を発症してしまったため、現在は1日1回、薬(リクシアナ)を服用しています。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
はらさん
誰もががんになる可能性があります。自分は大丈夫だと他人事に考えず、検診など定期的にご自身の身体をチェックすることを忘れないでください。そして、基本的なことかもしれませんが、日々の睡眠や食生活など、「身体に負担をかけない」「身体を大切にする」といった生活を心掛けることが大切だと感じています。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
はらさん
望むことという話ではないですが、入院治療することになった病院で入院前、医師に将来の子ども(妊娠・出産)について相談した際、「心配する必要はない」と言われたものの、入院までのわずかな期間で、念のため近くの産婦人科へ行き精子凍結保存をしました。抗がん剤治療の影響で、現在は自然な流れでパートナーとの間に子どもを授かることが難しくなってしまったため、保存しておいて良かったと感じています。また、前向きな気持ちで治療に向き合っていましたが、初めてのがん治療はやはり不安だらけでした。患者の話をもう少し聞いていただけたら嬉しいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
はらさん
がんになるとどうしても落ち込むと思いますが、前向きに向き合えたら良い方向へ進めると思います。現代は、二人に一人ががんになると言われている時代です。一見しただけではわかりませんが、意外とがん治療と向き合っている人は多いです。実際に、自分の身近にもがんと向き合っている人がたくさんいました。自分だけではないと気付くことができると、とても心強いです。
編集部まとめ
ご結婚されて半年での病気発覚で、はらさんはもちろんのこと、奥さまも不安だったと思いますが、インタビューを通してご夫婦で力を合わせて病気を乗り越えられたのだと感じました。そして、はらさんもおっしゃられていましたが、自分の体に異変を感じたら、過信せずに早めに病院を受診するようにしましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。