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お尻から血が出たら「大腸がん」のサイン!? 血便の原因や考えられる病気とは【医師解説】

 公開日:2024/08/21

便の色は私たちの健康状態を反映しており、時に深刻な病気のサインということもあります。鮮やかな赤色や黒い便はもちろんのこと、健康的な便の色でも、肉眼ではわからない微量の出血が隠れている可能性も否定できません。今回は、便の色が示す病気のリスクや検査の重要性について、「かわぐち内科・内視鏡クリニック」の川口先生に解説していただきました。

川口 佑輔

監修医師
川口 佑輔(かわぐち内科・内視鏡クリニック)

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北里大学医学部卒業。その後、北里大学病院消化器内科、北里大学メディカルセンター、永寿総合病院などで経験を積む。2022年、東京都台東区に「かわぐち内科・内視鏡クリニック」を開院。医学博士。日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内科学会認定医。日本消化器病学会、日本胆道学会の各会員。

便の検査って何を調べるの?

便の検査って何を調べるの?

編集部編集部

まず、便の検査について教えてください。

川口 佑輔先生川口先生

いわゆる「検便」は、正式な検査名ではありません。私たちが健康診断でおこなう検便は「便潜血検査」のことで、主に便に血が混じっていないかを調べる検査です。ほかに、食品取扱い従事者などにおこなわれる検便は「腸内細菌検査」のことで、便に特定の細菌やウイルス、ぎょう虫などがいないかを調べる検査です。

編集部編集部

健康診断での便潜血検査で陽性が出たら、どうしたらいいですか?

川口 佑輔先生川口先生

医療機関で精密検査を受けるよう案内されると思います。たとえ一度きりであったとしても、大腸がんの症状である可能性を否定できないからです。様子を見ず、すみやかに消化器内科や内視鏡科を受診しましょう。

編集部編集部

大腸がんの可能性があるのですね。

川口 佑輔先生川口先生

はい。そう聞くと不安になるかもしれませんが、便潜血検査で陽性になる原因は大腸がんのほかにも、痔や大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎や小腸などほかの消化器官からの出血など、様々な要因が考えられます。便潜血検査で陽性となった人のうち、大腸がんが見つかるのは約2%というデータもあります。極度に不安を覚えず、落ち着いて受診していただけたらと思います。

便でどんな病気の可能性がわかるの?

便でどんな病気の可能性がわかるの?

編集部編集部

便の色でも健康状態がわかると言いますよね。

川口 佑輔先生川口先生

ある程度はわかると思います。いわゆる黄褐色、黄色~茶色い便は健康な便だと言えます。ただし、これらの色の場合でも、目に見えないくらい微量の血液が含まれていることもあるので、定期的に検査はしましょう。

編集部編集部

黒っぽい便の場合はいかがでしょうか?

川口 佑輔先生川口先生

黒っぽい便は、胃や十二指腸などの上部にある消化管から出血している可能性があります。血液は時間が経過すると黒っぽくなるので、上部消化管からの出血が、排便される頃には黒くなっているのです。

編集部編集部

なるほど。ほかにも注意すべき色はありますか?

川口 佑輔先生川口先生

鮮やかな赤がみられる血便の場合は、肛門に近い箇所から出血していると推察され、痔核(じかく)や大腸がんなどの可能性が考えられます。厳密な医療用語では、赤い血が混じっている便のことを「血便」、黒っぽい便を「下血」と区別します。

編集部編集部

便の色からわかることも多いのですね。

川口 佑輔先生川口先生

そうですね。ほかにも、子どもに多くみられる「ロタウイルス性胃腸炎」では、白っぽい便が出ます。便の色から推察できる疾患は、いくつかあります。

知っておきたい血便の基礎知識

知っておきたい血便の基礎知識

編集部編集部

ストレスで血便が出ることはありますか?

川口 佑輔先生川口先生

潰瘍性大腸炎などはストレスで増悪して血便が出ることもあるので、無関係とは言えません。しかし、「じつはストレスが血便の直接的な原因になることはない」と考えられています。便潜血検査が陽性になったら「最近ストレスが多かった」と放置せず、病気の早期発見のためにもさらなる検査を受けることをおすすめします。

編集部編集部

痛みのない血便は心配ありませんか?

川口 佑輔先生川口先生

痛みを伴わない血便でも、何らかの病気が隠れている可能性があります。例えば、大腸の壁のくぼみにある血管が切れて出血する「大腸憩室出血」は、痛みのない血便が特徴的な症状です。ほかには、大腸がんの場合も、初期は痛みがなく血便のみというケースが多くあります。初期症状がほとんどない病気は多くあるため、やはり放置せず検査を受けてください。

編集部編集部

血便プラス痛みの有無などで、疾患名がある程度絞られるのですか?

川口 佑輔先生川口先生

はい。ほかにも、下痢のような血便に、腹痛と発熱があれば感染性大腸炎が疑われます。血便と痛みの有無、腹痛の有無、発熱の有無、そして症状の継続状況で、ある程度特定される大腸の疾患は多いですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

川口 佑輔先生川口先生

便の色や性状の変化で来院する患者さんは多くいらっしゃいます。ほんの少しの変化が、病気の最初の症状かもしれません。そして、その変化を見逃すことで、数年後に重篤な状態で病気が見るかる可能性があります。検査をして何もなければ安心にもつながるので、便の色や性状で気になることがあれば、ぜひお気軽に受診いただけたらと思います。

編集部まとめ

お尻からの出血や血便について、解説していただきました。お尻からの出血や血便は、多くの人が不安になりますが、必ずしも大腸がんを意味するわけではありません。痔や大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎など、様々な原因が考えられます。大腸がんである可能性は低くても、放置せず早めに医師の診察を受けることが重要です。早期診断が早期治療につながるので、気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。

医院情報

かわぐち内科・内視鏡クリニック

かわぐち内科・内視鏡クリニック
所在地 〒111-0032 東京都台東区浅草1-35-9
アクセス 東京メトロ「浅草駅」 徒歩1分
診療科目 内科、循環器内科、消化器内科

この記事の監修医師