【薬剤師に聞く】「薬に含まれている添加物」は身体によくないでしょうか?
添加物と聞くと「体に悪いもの」というイメージを持つ人は多くいらっしゃいます。そんな添加物は私たちが普段病気や不調の時に飲んでいる薬にも含まれています。薬に含まれる添加物は飲んでも問題はないのでしょうか? 薬剤師の髙橋さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
髙橋 彩夏(薬剤師)
薬に含まれる添加物は飲んでも問題ない?
編集部
そもそも、なぜ薬に添加物が含まれているのですか?
髙橋さん
薬の添加物は、薬の安定性を高めたり、薬を飲みやすくしたりするために含まれています。また、製剤化する上でも添加物は必要であり、有効成分とともに薬を構成する重要な成分です。食品にも腐らず長持ちさせるための安定剤や防腐剤が含まれていますが、医薬品の添加物も同じ役割と考えてください。また、有効成分だけでは薬の形にならなかったり、匂いや苦みがきつく飲みにくかったりするのですが、添加物を加えると、薬として形成できて飲みやすくなります。
編集部
具体的に添加物がどんな目的で薬に含まれていますか?
髙橋さん
たとえば、薬には次のものが使われています。
- 賦形剤(ふけいざい)・可溶化剤:薬のかさを増やして飲みやすくしたり、薬の形状を保ったりする
- 着色剤・香料・矯味剤:苦みが強い成分や水に溶けにくい有効成分を、薬にしやすいように加える
- 乳化剤・懸濁化剤(けんだくかざい):水に溶けやすくする
- 安定剤・緩衝剤・防腐剤:薬の品質を保ち、長期間使えるようにする
編集部
薬に含まれる添加物は飲んでも問題ありませんか?
髙橋さん
はい、問題ありません。なぜなら、添加物は「薬としての効果はなく、有効成分の治療効果を妨げない、人体に無害なこと」が条件付けられているからです。安定性や安全性に関する試験データなどを厚生労働省に提出して承認を受けた物質のみが、添加物として使用されています。しかし、薬を飲む人の体質によってはアレルギーの原因になることもあるので、注意が必要です。
薬に含まれる添加物で注意すべきものは?
編集部
薬に含まれる添加物で注意すべき物質はありますか?
髙橋さん
例えばカゼインナトリウム、ゼラチン、乳糖、エタノールには注意が必要です。カゼインナトリウムが含まれている医薬品は牛乳アレルギーがある人、ゼラチンが添加されている医薬品はゼラチンアレルギーがある人は避けてください。また、さまざまな医薬品に添加されている乳糖の中には牛乳由来のタンパク質が含まれているため、牛乳アレルギーを発症する可能性が否定できません。そしてアルコールに弱い人は、液体の薬に安定剤や可溶化剤の目的で含まれるエタノールに注意しましょう。
編集部
これらはどんな薬に含まれていますか?
髙橋さん
乳糖は多くのものに含まれますが、特に注意すべきは抗インフルエンザ薬ですね。「イナビル」と「リレンザ」は牛乳由来のタンパク質が含まれている乳糖が使われています。牛乳アレルギーの人がインフルエンザにかかったときは、医師に相談してほかの抗インフルエンザ薬を処方してもらってください。気管支喘息の治療薬の中にはエタノールを使用しているものがあります。カゼインナトリウムはビタミン製剤に含まれているケースがあります。
編集部
ほかの添加物でアレルギーが出ることはありますか?
髙橋さん
上記に挙げた成分以外にも、ほかの添加物でもアレルギー症状が出ることもあります。たとえば、増粘剤として多くの医薬品に含まれるカルメロース(CMC)で、アレルギー反応を示す人がいることがわかっています。薬を飲んで発疹や皮膚・目のかゆみが出たら、すぐに病院に受診しましょう。
編集部
添加物に気を付けるべきなのは飲み薬だけですか?
髙橋さん
いいえ。貼り薬や塗り薬、目薬などの外用剤でも、アレルギーが出る可能性はあります。飲み薬にかかわらず、ほとんどすべての薬に添加物が含まれているため、購入前や使用前に確認してください。
薬を購入する際に気を付けるべきポイントは?
編集部
薬を購入する際に気を付けるべきポイントは何ですか?
髙橋さん
食べ物のアレルギーがある人や今まで薬で体調を崩した人は、市販薬のパッケージに書いてある添加物を確認しましょう。また服用して体調を崩した薬は、あらかじめ名前を控えておいてくださいね。そして薬には使用期限があるため、購入時にパッケージで確認して期限内に使い切りましょう。
編集部
同じ有効成分でも添加物が異なることはありますか?
髙橋さん
はい。薬の販売元によっては、同じ有効成分でも使用している添加物が異なります。また、同じ商品名でも剤形が異なるときは添加物が変わってくるので、パッケージ裏の説明書や添加物の欄をよく見てくださいね。
編集部
どの薬を選べばわからないときはどうしたらいいですか?
髙橋さん
薬局やドラッグストアに在籍している登録販売者や薬剤師に相談してください。悩んでいる症状やアレルギー歴、既往歴を考慮した薬を選択します。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
髙橋さん
添加物は危ないと考える人も多いですが、国で無害だと定めた成分のみが使用されているので、安心して服用してください。ただし、体質によってはアレルギーが出ることもあるため、いつもと違う症状があるときは早めに医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
医薬品添加物は、飲みやすさや品質を保つために使われています。国で人体に無害だと定められていると聞くと安心できますね。アレルギーがある人に注意すべき添加物を押さえたうえで、自分に合う市販薬を選びましょう。