【闘病】頭が真っ白になった「悪性リンパ腫」 それでも治療の支えとなったもの
悪性リンパ腫は、初期症状がほとんどなく、リンパが腫れたケースのほうがむしろ早期発見につながるのだそうです。闘病者の小島瑶兵さんも、最初の違和感はリンパのしこりだったそうです。初期に感じた違和感から病気発覚、治療中の想いなどを聞きました。
※※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。
体験者プロフィール:
小島 瑶兵
1988年生まれ。神奈川県在住。妻と病気当時1歳の娘と3人ぐらし。職業はマーケティングのコンサルタント。病気前から完全オンラインで勤務。2022年に悪性リンパ腫が発覚し、R-CHOP療法を受ける。2023年に寛解診断を受ける。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「こんな大きさのしこりは見たことがない」
編集部
最初に違和感があったのはいつですか? どういった状況だったのでしょうか?
小島さん
2022年の年始だと思います。左の鼠径部に大きなしこりがあるのを発見しました。当時通っていた整骨院で相談すると「こんな大きさのしこりは見たことがないです。病院に行ったほうが良いかもしれません」と言われ、その時は「一応行っておくか」程度に思っていました。自宅で「鼠径部 しこり 大きい」などのキーワードで調べてみると、いくつかの病名が可能性として挙げられており、その最後のほうにリンパ腫という言葉がありました。近くの病院に行き、大きさを測定すると「今まで見たことのない大きさです」と言われて、東京の医療施設へ精密検査に行くことにしました。
編集部
受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。
小島さん
東京の医療施設でCT検査をした時には良性か悪性かはわからず、最終的に生検をして確定診断となりました。その時には、最初にしこりを見つけてから2ヶ月くらい経っていました。
編集部
その間は不安だったのではないですか?
小島さん
最初は、そこまで不安ではありませんでしたが、徐々に「え、もしかして……」と感じ始めました。腫瘍と言われた時も、「悪性じゃない可能性もある」と半々くらいの心持ちでした。ただ、ずっと総合内科で診てもらっており、生検の結果も総合内科で聞くことになっていたのですが、当日いきなり総合受付で「血液内科で説明を聞いてください」と言われた時に頭が真っ白になりました。急いで妻に電話して病院に来てもらいました。
編集部
血液内科ではどのような説明がありましたか?
小島さん
「悪性リンパ腫」という血液のがんで、型は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」と言われました。医師は治療の説明などをしてくれていたと思いますが、あまり覚えていません。落ち着いて受け止められる状態ではありませんでした。
転移あり
編集部
その後どのように治療が進みましたか?
小島さん
転移の有無を調べるためにPET検査をしました。臓器への転移はなかったのですが、喉に転移していました。この時もかなりショックでしたね。抗がん剤で、精子にも影響が出る可能性があるとのことで「この先、子どもを希望するのであれば精子凍結を」という説明も受けました。その時は娘が1歳前でしたが、2人目を検討する可能性も踏まえて、専門の医療機関に行って精子凍結を行いました。あとは、抗がん剤で髪の毛が抜けるのがわかっていたので、坊主にしました。
編集部
実際の治療はどのようにすすめられましたか? 抗がん剤の副作用はどうでしたか?
小島さん
「R-CHOP療法」という抗がん剤治療を行いました。副作用は、投与1週間で吐き気、その後の1週間で倦怠感がありました。脱毛は徐々に抜けていく感じでした。あとは顔に皮疹ができてしまいました。最もキツかったのは、指の痺れです。症状そのものがキツかったというよりは「治療後も痺れが残る可能性があり、最悪の場合お箸も持てなくなるかもしれない」と言われたのが恐怖でした。私にとって「指が使えない」というのは、パソコンが使えず、仕事ができなくなり、職を失うことを意味します。ですから指に障害残ったらどうしよう、と不安でした。しかし、主治医に聞いても「後遺症が残るかどうか、現時点でなんとも言えない」としか言われず心許なかったですね。治療は8サイクルの予定でしたが、6サイクル目で「血栓ができそう」と言われ、見えるがんはすでに消えていたので、そこで治療を終了しました。
編集部
医師との意思疎通が大変でしたか?
小島さん
はい。医師とのコミュニケーションを余計なストレスに感じていました。立場上、個人的な感覚を口にするのは難しいのかもしれませんが、無責任にでも良いので「痺れが残る可能性は何割くらい」「自分がその立場ならこう考える」などの言葉がほしかったです。医師としての「経験からくる見通し」みたいなものを伝えてもらえずに「患者自身で(治療の)意思決定」と言われても、どうして良いかわかりませんでした。指の痺れについても、仕事を失うかもしれないといったリスクを理解してもらえていなかったようで、「痺れが怖い」と言ったら「じゃあやめますか?」と言われてしまい……。R-CHOP療法は、一度やめたらもうできないですから、最終的な判断について相談に乗ってほしかったですね。
編集部
どのように対処したのですか?
小島さん
弟が医者だったので、話を聞いてもらいました。当時はまだ研修医で、専門も違っていましたが、弟なりに相談にのってくれました。「こういう聞き方したら意見もらえるんじゃない?」「自分だったらこうするよ」と、1人の人間としての意見が聞けたので、ストレスが減りました。すごく感謝しています。
最悪を想定するより、最善に期待しよう
編集部
受診から手術、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
小島さん
2016年くらいの話ですが、後頭部に激痛が走り、「死ぬかも、障害残るかも」と感じたことがありました。結果的にそれは帯状疱疹だったのですが、当時は仕事漬けの日常生活だったので「このまま死んだらめっちゃ後悔する」と思いました。今回は、死ぬかもしれないと感じながらも、「結婚してよかったな」「子どもをもててよかったな」と心から感じましたし、「この生き方でよかったんだな」と思えていました。妻にも「自分が死んだら気にせず再婚しなよ」と伝えました。がんと告知された時も入院する時も落ち着いていた妻が、この時は泣いていましたね。
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
小島さん
あれ以上に早くは気づけなかったし、治療も含めてベストだったと思います。現実的なところでの後悔といえば、お金をケチらず、個室にすればよかったという点です。病室では通話NGで、通話が許されているフロアに移動しないといけませんでした。最初の入院時にはお金の心配があったので大部屋にしたのですが、親族との面会が多い場合や通話などが多い場合は「絶対個室にしておいた方が良い」と声を大にして言いたいです。
編集部
がん治療には経済的な不安もありますよね。
小島さん
治療費自体は、高額療養費制度などもあって思ったよりお金がかからなかった印象です。それよりも周りの話なども聞くと、働けなくて給料が入らなくなることの損失の方が大きいようです。「勤め先にリモートワークがないので、感染リスク承知で出社するしかない」というケースも聞きました。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
小島さん
元気です。病気になる前よりも健康的な生活をしています。脂質を減らして、お酒も減らしました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
小島さん
闘病中、弟に「最悪を想定するのも大事だけど、最善に期待しなさい」と言われました。当時は、例えば生存率が7割なのか8割なのかがすごく気になっていましたが、その差にさほど意味はなく、また「死んだらどうしよう」と考えても仕方ないので、いい意味で無責任に生きるのが大事だとも思っています。
編集部まとめ
医療従事者とのコミュニケーションは、患者のQOLを大きく左右します。立場上「自分はこう思う」とはなかなか口に出せないのかもしれませんが、少しでも患者の想いが共有できるような着地点があるとよいですね。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。