【闘病】2年間続いた原因不明の不調は「全身性エリテマトーデス(SLE)」薬の副作用すら知らなかった…
膠原病の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)は、比較的若い世代の女性によく見られる疾患です。今回お話を聞いた鈴木さんは、24年前にSLEを発症しましたが、今のようにインターネットが発達しておらず、情報収集もままならない状態で闘病生活を送られていました。そこで、鈴木さんに発症までの経緯や治療方法、自分の病気の理解をすることが闘病生活を送る上で大切である理由について教えていただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。
体験者プロフィール:
鈴木 眞知子
1951年生まれ、静岡県在住。短大卒業後、就職し23歳で結婚。3人の娘を育てる。現在6人の孫がいる。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「私、死ぬんですか?」病気の発覚と戸惑い
編集部
最初に不調や違和感があったのはいつですか?
鈴木さん
24年前のある日の朝、ひじが痒くて無意識に掻きながら目が覚めました。起き上がろうとしたら突然胸が苦しくなり、起き上がった後もずっと胸を抱えて歩いていました。それまで大きな病気や不調を感じることがなかったのでびっくりして、自宅近くの内科病院に行きました。そこでは「尋常性乾癬」と言われ、処方された薬を飲みましたが症状は良くなりませんでした。それから2年、あらゆる病院に行き「胆石」や「リウマチ」など言われましたが、指示通りの治療を続けても回復しませんでした。症状が治らないので仕事も泣く泣く辞め、寝て起きるだけの生活が続きました。
編集部
それから診断に至るまでの経緯を教えてください。
鈴木さん
2年が経ち、長女が出産をしたのでその1ヶ月健診について行くことになりました。待ち時間に「ちょっと皮膚科で診てもらおうかな」と思い受診したら、その日偶然担当してくださった先生に「ひじの組織を取ってみよう」と言われ、皮膚生検を行うことになりました。そして「2週間後に来院するように」と言われましたが、その1週間後に突然病院から「明日来院してください」と電話がありました。診察で「もしかしたら膠原病かもしれない」と言われていたので、膠原病なんだと覚悟しました。
編集部
病院ではどんな会話がありましたか?
鈴木さん
予想通り、病院に行くと医師から「検査の結果、膠原病です」と告知されました。その時、近所の方が膠原病で亡くなったと聞いたことがあったので思わず「私、死ぬんですか?」と聞いてしまいました。ですが、先生から「今は薬で抑えることができるから大丈夫」と言われ、安心しました。
編集部
症状について詳しく教えてください。
鈴木さん
膠原病にはたくさんの種類があるのですが、私は「全身性エリテマトーデス(SLE)」という病気でした。本来であれば自分の体を守る働きをしている免疫が、自分の組織を攻撃してしまう病気です。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
鈴木さん
「完治する病気ではないので、ステロイド剤を服用しながら症状を調整していくのが治療の目標です」と言われました。熱が出たら、入院して血液検査などをしながらステロイド剤の調整をするとのことでした。
人生で一番色々なことを経験し、たくさん考えた入院生活
編集部
そのときの心境について教えてください。
鈴木さん
最初は「死ぬんですか?」と聞いてしまいましたが、薬の服用で症状がおさまると聞いて少しホッとしました。一方で、最初はステロイド剤の副作用などの話が全然出なかったので、ただ単純に「薬を飲めば良くなる」とだけ思っていました。
編集部
実際の治療はどのようにすすめられましたか?
鈴木さん
1ヶ月に一度通院し、血液検査をして薬をもらっていました。
編集部
受診から手術、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
鈴木さん
治療中、熱が出て入院するということが何回もありました。そして月に一度の通院での検査と薬の処方だけという治療に不安を感じ、別の病院へ変えることにしました。その頃から、自分でも病気のことやステロイドの副作用について調べ、血液検査の数値についても学びました。転院後の病院は自分に合っていて2年ぐらい通いましたが、膠原病科の先生がいなくなるということで、さらに別の病院へ通院することになりました。
編集部
症状は落ち着いていたのですか?
鈴木さん
相変わらずきちんと薬を服用していればなんとか生活ができていました。ですが、発症から6年ぐらい経った時、右股関節の痛みがひどくなり整形外科を受診しました。レントゲンの結果、ステロイド剤の副作用で大腿骨が脆くなってしまっており、人工骨を入れる手術をしました。入院はリハビリも含め2ヶ月ぐらいだったと思います。人生の中で一番いろんなことを経験し、たくさん考えた時期でした。病気や検査、薬の副作用などについて、医療者任せにせず、患者自身も知ることが大事だと考えるようになりました。
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください。
鈴木さん
病気になる前の生活の不摂生さを反省しました。普段は病気であることを忘れてしまうぐらい元気な時もありますが、やはり急な発熱や倦怠感にどうして良いかわからなくなることもあり、先生に診ていただくしかありません。
卑屈にならず、笑って過ごすことが大事だと伝えたい
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
鈴木さん
この病気は原因は明確に解明されていないので、「こうしていれば防げたかも」というのは分かりません。ですが、過去の自分の生活の不摂生(不規則な生活、喫煙など)をとても後悔しています。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
鈴木さん
現在は、膠原病になった当初のように体調が悪く、1年くらい手足のしびれに悩まされています。また、コロナウイルスに感染してしまい、その後遺症でニューロパチーという難病も併発したので、SLEと共に治療しています。不便はたくさんありますが、受け入れながら生活しています。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
鈴木さん
自分と関わってくれた医療従事者にこれ以上望むことは特にありませんが、これからさらに難病の研究を進めていただき、完治する方法が見つかると良いなと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
鈴木さん
難病になってしまった辛さは自分にしかわかりませんが、卑屈にならず、いろいろな難病の方の話を聞いたり、ネットで調べたりして、病気や治療、服用する薬の副作用などを知ることが大事です。難病になってしまっても、病気と上手に付き合って、笑って過ごすことが何よりも大切だと思います。
編集部まとめ
病名を聞いた瞬間に死がよぎるようなことがあるかもしれませんが、まずは落ち着いて自分の体のことや病気について知ることが重要です。また、最初はステロイド薬の副作用についてすら何も知らなかったという鈴木さん。ご自身で色々調べるようになり、「病気と向き合うためには患者自身も病気についてよく知ることが大事」だと考えるようになったと言います。みなさんも、もし病気を発症してしまったら慌てずに、分からないことがあればかかりつけの医師や専門家に相談するようにしましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。