【闘病】筋肉痛ではなく難病「SLE」だった…10代で発症、病気と共に生きる方法とは?
高校生の時にSLEを発症し、4度にわたる再燃を経験しながら現在も闘病を続けているxuさん。最初は筋肉痛のような痛みを感じ、次第に体調が悪化したことが発症に気付くきっかけだったそうです。発症までの経緯や治療内容、病気の闘病中だからこそ気づけたことについて教えてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年1月取材。
体験者プロフィール:
xuさん(仮称)
20代の女性。高校生の時に全身性エリテマトーデス(SLE)を発症し、緩和と再燃を繰り返す。2021年には線維筋痛症も併発の疑いがあり、現在も経過観察中。現在はフリーランスのライターとして在宅ワークをしながら、SNSなどで情報発信を続けている。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
両膝の筋肉痛のような症状が闘病の始まりだった
編集部
はじめにxuさんの経験された全身性エリテマトーデス(SLE)について教えてください。
xuさん
全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫疾患の一種です。三大初期症状として発熱、関節炎、皮疹があります。比較的20~40代までの若年・中年の女性に多く、風邪のような症状から始まることがあります。代表的な症状として、顔面に蝶々のような形の皮疹が出現する「蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)」があります。
編集部
xuさんの場合はどのような症状があったのでしょうか?
xuさん
私の場合、高校2年生の時に授業でテニスをしていたところ、両膝に筋肉痛のような痛みを感じたことが始まりでした。その時は数日で痛みが改善したので、運動不足程度にしか思っていませんでした。しかし、夏頃に家族と旅行中体調が悪化し、全身の筋肉痛・関節痛・倦怠感・微熱・食欲不振などが現れ、一日中寝て過ごすようになりました。
編集部
では、その症状が現れてからはすぐに病院を受診しましたか?
xuさん
ちょうど夏休みだったので病院へは行かずに家で休んで過ごしました。ですが、新学期に入ってすぐ歩けないほどの膝の痛みを感じるようになり、ようやく「なんだかやばい、危険かもしれない」と感じて近所の整形外科を受診しました。
編集部
整形外科ではどのようなことをしましたか?
xuさん
整形外科ではレントゲンと血液検査を受け、総合病院を紹介されました。紹介された血液・腫瘍内科では異常が見つからず、次にリウマチ・膠原病内科を受診し、再度血液検査を行ったところ「膠原病の疑い」とのことで入院となりました。それからさまざまな検査をして、「SLE」と診断されました。
編集部
SLEが判明した時の気持ちを教えてください。
xuさん
正直、ほっとしたというのが第一の感想でした。ネットで調べると怖いことも書かれていたので、診断が確定するまでは「死ぬかもしれない」と怖くて仕方ありませんでした。もちろん、SLEは一生付き合っていかなければならず、高校生だった私にとってかなりの重荷だったことも確かです。霧は晴れたけれど、目の前に広がる闇に立ち向かわなければならず、覚悟が必要でした。
服薬治療を開始 日常の多くの変化に困惑
編集部
SLE発症時の治療内容について教えてください。
xuさん
医師からは「主にステロイドで治療をします。症状に合わせて徐々にステロイドを減量し、ゆくゆくは免疫抑制剤の治療に移行しましょう」と説明されました。ステロイドといえば忌避される薬の1つと知っていたので、正直ドキっとしました。しかし、生きていくためには必要なもので、適切な用法で使えば怖くない薬ということも説明を受けました。
編集部
ステロイド治療ではさまざまな副作用も予想されますが、注意すべき点はどう説明されましたか?
xuさん
医師からは紫外線に注意すること、そして過度な運動と疲労を避けることが大事だと説明されました。外出時は日焼け止めを塗り、日傘を差して出かけなければならず、慣れるまでは面倒だったことを憶えています。また、発症当時は高校生でしたから、激しい動きのあるスポーツや外の体育は見学し、準備運動や卓球のような動きの激しくない種目は参加していました。体育祭や外でのレクリエーションもすべて保健室で見学し、授業で疲れた時も保健室で休むことが多かったです。
編集部
高校生という多感な時期にもかかわらず、大変な経験をされたのですね。
xuさん
ただ、通院のための早退にも快く応じてくれて、高校は病気に配慮してくれていたので、とても過ごしやすかったことを憶えています。
編集部
日常生活にもいろんな変化があったと思いますが、治療中の心の支えになったものは何でしたか?
xuさん
大きかったのはやはり周りの人の温かさです。できなくなったことが多く、悲しむこともありましたが、家族・友人含めて病気のことに配慮しつつも、いつも通りに接してくれたことが嬉しかったです。ほかにも、入院中に皮膚科の先生が「頑張りすぎないでね。あなたは頑張り屋さんだから」と優しい言葉をかけてくださったこと、看護師さんの温かい言葉に何度も助けられたことも治療中の心の支えになっていました。
日々悩み、試行錯誤しながらSLEとの生き方を模索
編集部
xuさんの現在の体調について教えてください。
xuさん
数年前に「線維筋痛症」の疑いがあると言われました。そのせいか、SLEの症状が落ち着いていても痛みやだるさがあり、時々寝込むこともあります。ですが、それ以外は問題なく生活できています。仕事もフルタイムの正社員で働きに出るのではなく、在宅勤務のフリーランスで自分のペースで仕事ができていることも、再燃を防止できた理由なのではないかと感じています。
編集部
普段から注意していることはありますか?
xuさん
自分のキャパシティを超えないように、60~70%もしくは50%くらいの力で過ごす意識をしています。エンジンを吹かしすぎずにゆるく生きようと心掛けるようになりました。
編集部
高校生という若い頃にSLEを発症されましたが、過去の自分に声をかけるなら何と助言したいですか?
xuさん
「頑張りすぎないで。辛い時は休む、異変を感じたら病院に行くことを大事にしてほしい」と伝えたいです。私は過去に4度再燃を経験しています。再燃した時はいつも疲労やストレスがパンパンに溜まった状態でした。
編集部
xuさんと同じくSLEを抱えている方、病気を知らない方に向けて一言いただけますか?
xuさん
SLEは比較的若い女性に起こりやすい病気です。私のように高校生から発症することもあれば、20・30代のやりたいことがたくさんある時に発症し、絶望してしまうこともあるかもしれません。ですが、今の時代はSLEでも生きることができます。少しでも異変を感じたら病院に行っていただき、早期に治療を開始することが大切です。専門医も少なく、診断に難航するかもしれませんが、治療することで健常者のように普通の生活を送ることは可能です。SLEは見た目ではわかりにくい病気ですが、このような病気があることをぜひ広く知っていただければ幸いです。
編集部
xuさんが医療従事者の方に伝えたいことはありますか?
xuさん
主治医をはじめ、看護師など医療従事者の方にはいつも助けられています。特に本当に多忙な主治医には頭が上がりません。「ステロイドをできるだけ増やしたくない」という共通認識の下で、一緒に治療できていることに感謝しています。また、看護師のみなさんも暖かい対応をしていただき、辛い治療も乗り越えられています。ただ、膠原病専門家の先生がもっと増えていただけると、通院のハードルが下がるのでとても助かるなと感じます。
編集部
最後に記事の読者向けにメッセージをお願いします。
xuさん
SLEは見た目ではわかりづらく、仕事や日常生活において周囲からの理解が得づらい病気だと思います。それまでできたことができなくて、落ち込んでしまうことも多々あります。ですが、できなくなったことではなく「できること」に目を向けて生きてください。世界は思っているよりもできることにあふれています。私自身、何度も悩みながら試行錯誤し、なんとかSLEと一緒に生きる道を手探りで見つけていっています。そして、あなたは1人ではありません。あなたを支えてくれる人たちを大切に、なによりも自分のことを最優先に大切にして、生きていきましょう。また、SLEは症状に個人差がある病気ということを知ってほしいです。何も症状が出ず普通に生活している方もいれば、治療を行っていても日常生活に支障をきたしている方もいらっしゃいます。全部は理解できなくても、目には見えない病気を抱えている人がいるということを、頭の片隅に置いていただければ幸いです。
編集部まとめ
10代で全身性エリテマトーデス(SLE)を発症し、再燃とも闘いながら日々の生活を送られているxuさん。SLEは比較的若い女性に発症しやすい病気で、一見しても症状がわかりにくく、周囲からの理解を得られずに孤立される方もいます。病気について周囲も理解していくことで、すべての人にとって暮らしやすい社会が実現できます。まずは、周囲で困っている人を見かけたら、自分から助けが必要かどうか声をかける気持ちを大事にしましょう。そして体に異変を感じても我慢せず、専門病院や総合病院などの医療機関を受診して早期発見に努めましょう。