【闘病】「まさか自分が」長女妊娠中に『特発性血小板減少性紫斑病』その経験をSNSで発信する理由
特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP)とは、自己免疫異常によって血小板が減少することで全身から出血しやすくなるといった血液に関する症状が現れる疾患です。成人の場合は原因がわからないまま発症することが多く、国の難病にも指定されています。今回お話を聞いたAYAKOさんは、妊娠中に突然発症し、突然闘病生活が始まりました。特発性血小板減少性紫斑病とはどんな疾患なのか、AYAKOさんが病気を通じて学んだことや新たなチャレンジについてお話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年12月取材。
体験者プロフィール:
AYAKOさん(仮称)
夫と子ども2人の4人で暮らす40代の女性。13年前、長女を妊娠中に突然身体中に点状出血が現れ、病院で検査したところ「特発性血小板減少性紫斑病」と診断された。入院治療の甲斐もあり、一度寛解したが10年後に再発。現在も通院とステロイド薬を内服しながら、特技のピアノを生かしてさまざまな施設で音楽療法の仕事に取り組んでいる。
記事監修:
今村 英利いずみホームケアクリニック
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
仕事と妊娠で充実した日々を突然襲ってきた病
編集部
はじめに特発性血小板減少性紫斑病について教えていただけますか?
AYAKOさん
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は血小板の表面の抗原に対して自分の抗体が反応し、血小板が脾臓で破壊される自己免疫疾患の一種です。厚生労働省の指定難病にも入っており、子どもや女性が発症しやすいそうですが、子どもの場合は感染症や予防接種で発症、私のような成人女性は突然発症して慢性化することが多いといわれます。
編集部
AYAKOさんの場合、自覚症状にはどのようなものがありましたか?
AYAKOさん
私の場合、一番分かりやすかったのは全身に現れた点状出血です。その当時私は妊娠中で、突然現れたので急いで近所のクリニックを受診しました。ほかにも歯を磨いた時に歯ぐきからの出血、鼻血が止まらない、便に血が混じる、月経で出血が止まりにくいなど、出血に関する症状が起こりやすくなりました。
編集部
妊娠中の病気の発覚は、かなり大変だったことが想像できます。
AYAKOさん
はい。当時は長女を妊娠中で、妊娠後期に突然病気を発症したのでとにかく衝撃でした。
編集部
病院ではどのような検査、説明がありましたか?
AYAKOさん
病院で骨髄検査を受け、「特発性血小板減少性紫斑病」と診断されました。発症してすぐは何ともなかったのですが、風邪をひくと血小板が3万くらいまで下がることもありました(正常値は15~40万)。医師からは「血小板が2万を切ったら入院してステロイドの治療を始める」と言われました。
編集部
1回目の発症時は入院することなく、無事に出産されたそうですね。
AYAKOさん
はい、1回目は治療をしながら出産し、その後は寛解しました。
編集部
その後はいかがでしたか?
AYAKOさん
寛解から10年経ってから再発してしまいました。当時は認定こども園の教諭として忙しく働き、夫は単身赴任だったのでほとんどの家事や子どもの送迎を1人でこなしていました。ある時、急に胃の痛みを強く感じたため、近所のクリニックで胃カメラや検査を受けた結果「血小板が7万しかないから、すぐに大きい病院で診てもらうように」と言われ、総合病院を受診することになりました。
編集部
再発が判明した時の心境はどのようなものでしたか?
AYAKOさん
「まさか!また自分が!」と思い、気分は沈んでどん底でした。入院になれば仕事もしばらくできなくなります。当時責任の重い仕事もしていたため、「自分はこれからどうなるのかな」と不安だらけでした。
応援してくれる家族、医療従事者の存在が立ち直るきっかけに
編集部
再発時について詳しく教えてください。
AYAKOさん
2回目はとうとう血小板が2万以下になり、入院することになりました。最初の1年間は本当にどん底の気持ちで、家に引きこもって外にも出ませんでした。なにより、仕事を途中で抜けたことが気掛かりで、入院中も号泣して看護師さんにひたすら話を聞いてもらっていました。
編集部
立ち直れたきっかけは何ですか?
AYAKOさん
家族の存在です。いつも私を心配してくれたこと、そして子どもたちが頑張る姿を見ていると「このままではあかん!」と思い、動き出す決意をしました。また、病院では看護師さんや看護助手さんなど、色々な人が話しかけてくれてコミュニケーションを取ってくれたことも本当に助けになりました。そして、いつでも私に寄り添って治療法を考えてくれたり、話を聞いてくれたりした先生には一番感謝しています。「この先生で良かった」と思える今の先生と出会えたから、自分のやりたいことに挑戦出来ていると思います。
編集部
現在の体調、生活の様子を教えてください。
AYAKOさん
再発して3年が経ち、現在もステロイド薬を服用しているので副作用で夕方にだるい、しんどいと感じる日がたくさんあります。息子のサッカーが生活の中心にありますが、無理はせずに自分の体調を一番に考えて毎日をこなしています。仕事上ピアノが弾けるので、地方の施設に音楽療法へ行ったり、手話を勉強したりしています。薬を調整しながらやりたいことへ挑戦して、人生を楽しんでいるという感覚がありますね。
編集部
AYAKOさんはSNSもされていると伺いました。
AYAKOさん
病気から立ち直ったのを機に、病気用のインスタグラムを開設しました。インスタグラムを通じて、同じ病気の人や薬の副作用に悩む人の相談に乗るなど、多くの方とやりとりさせてもらっています。
編集部
インスタグラムでは病気のこと以外に何か発信されていますか?
AYAKOさん
私は音楽が好きなので、自分の好きなアーティストや楽曲を皆さんに広めています。特にワンオクロックの「wasted nights」にはまっています。歌詞のワンフレーズにある「don’t be afraid to dive(挑戦することを恐れるな)」が好きです。
これからも寛解を目指しながら、色々なことに挑戦していきたい
編集部
特発性血小板減少性紫斑病について知らない人も多いかと思います。病気について知らない方に向けて、伝えたい言葉をお願いできますか?
AYAKOさん
特発性血小板減少性紫斑病に限った話ではありませんが、ヘルプマークをつけている人を見かけたら、少しでも気にしてあげてほしいと思います。私も人からはよく「元気そう」と言われますが、本当にしんどいと感じる時があります。その人の苦労を想像することで、今より少しでも優しい社会になってほしいです。
編集部
医療従事者の方に希望されることはありますか?
AYAKOさん
医師・看護師、ほかの医療従事者のみなさんは日々忙しく、大変な仕事をされているとおもいます。なかなか時間を作るのはむずかしいかもしれませんが、患者さんに寄り添って話を聴いてもらえるだけでも救われる人はたくさんいます。私が先生に話を聴いてもらうことで救われたので、ぜひ多くの患者さんに寄り添って助けてほしいと思います。
編集部
AYAKOさんの闘病経験を通して、どのようなことを人々に伝えたいですか?
AYAKOさん
特発性血小板減少性紫斑病は難病なので、完治することはないのかもしれません。ですが、うまく薬や副作用とも付き合っていけば、やりたいことや挑戦したいことを我慢する必要はないと思っています。
編集部
最後に本記事の読者へのメッセージをお願いします。
AYAKOさん
同じ病気の人も、そうでない健康な人も、辛い時やどうにもならない日があると思います。ですが、やりたいことには挑戦し、なるべく笑って過ごすようにしてみてください。みんなが思いやりを持ち、なにより自分を大切にしながら生きていくことを大事にしてほしいです。
編集部まとめ
2度にわたる特発性血小板減少性紫斑病を経験し、現在も服薬を続けながら精力的に活動するAYAKOさん。特発性血小板減少性紫斑病は現代でも明確な原因が不明です。治療によって寛解し、そのまま安定期を過ごせる人もいる一方で、AYAKOさんのように時間が経過してから再発される方もいます。突然の鼻血や歯ぐきからの出血、皮膚の内出血、血尿・血便、不正性器出血などが見られたら、早期に病院受診することが早期改善への鍵です。「自分は大丈夫」と思い込むのではなく、少しでも異変を感じたら病院で検査を行いましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。