なんだか疲れやすい…「寒暖差による疲労」が起こる理由と対策方法を薬剤師が解説
季節の変わり目や冷え込みが厳しい冬になると、疲れやすいと感じたことはありませんか? その疲労の原因は「寒暖差」かもしれません。そこで今回は「寒暖差疲労」が起こる原因とその対策方法について、薬剤師の村山さんに解説してもらいました。
監修薬剤師:
村山 菜奈(薬剤師)
冬場に起こりやすい「寒暖差による疲労」の原因とは?
編集部
冬場になると、疲れを感じやすくなります。冬の疲労の原因は何ですか?
村山さん
冬場に疲れやすいと感じるのは「寒暖差疲労」かもしれません。冬場は気温の日内変動や暖房による室内と屋外の気温差が大きくなるので、身体が感じる寒暖差も大きくなります。寒暖差の激しい環境で過ごすと、身体が気温差に対応しようと何度も熱を作ったり逃したりするので、必要以上にエネルギーを消費します。その結果、自律神経が乱れて疲労が蓄積してしまうのです。
編集部
自律神経が乱れることで疲労が起こるのですか?
村山さん
自律神経とは内臓の働きや代謝など、生きるのに必要な身体の機能を無意識のうちに調整してくれる神経です。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」からなり、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキのような役割を持って身体の状態を調整しています。自律神経が乱れると身体の調整ができず、頭痛や肩こり、冷えなどの不調が増えて、疲れやすくなってしまいます。自律神経の乱れで起こる不調のひとつが「寒暖差疲労」です。
編集部
では、「寒暖差疲労」はどのようなときに起こりますか?
村山さん
前日との気温差や、1日の最高気温と最低気温の差が7度以上あるときに寒暖差疲労は起こりやすくなるといわれています。季節の変わり目や暖房の使用頻度が高くなる冬場だけでなく、屋外での活動や寒い地域や熱い地域への旅行などにも注意が必要です。さらに寒暖差疲労が慢性化すると、わずかな気温差でも不調を感じやすくなります。
編集部
寒暖差疲労が起こりやすいのはどのような方ですか?
村山さん
夏の暑さ・冬の寒さが苦手な方や、季節の変わり目に体調を崩しやすい方、エアコンが苦手で冷え性に悩む方、熱中症経験のある方、PCやスマートフォンの使用時間が長い(1日4時間以上)という方は寒暖差疲労が起こりやすいので注意が必要です。見過ごしがちですが、PCやスマホの使用中はうつむき姿勢になりやすく、自律神経の通り道である首の筋肉に負担がかかってしまうので、自律神経が乱れる原因となります。
「寒暖差による疲労」は放っておくと危ない? 健康リスクについて
編集部
寒暖差疲労の症状にはどのようなものがありますか?
村山さん
寒暖差疲労の症状には、頭痛、肩こり、腰痛、冷え、めまい、便秘、下痢などの身体的不調や、イライラ、不眠、食欲不振などがありますが、人によって症状は異なります。寒暖差疲労が蓄積すると、さまざまな不調を連鎖的に引き起こしてしまうこともあります。
編集部
寒暖差疲労を放っておくとどのようなリスクがありますか?
村山さん
寒暖差疲労が蓄積してしまうと、自律神経がコントロールできなくなってうつ病や自律神経失調症のような疾患になる可能性はゼロではありません。ほかにも、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患につながるリスクもあると言われます。さらに、寒暖差が原因で起こるくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状は「寒暖差アレルギー」と呼ばれ、詳しい原因はわかっていないものの自律神経の乱れが関係していると考えられています。
編集部
寒暖差疲労に効く薬はありますか?
村山さん
頭痛や腰痛には痛み止め、不眠には寝つきを良くする薬など、それぞれの症状に応じた薬はありますが、寒暖差疲労を根本から改善するには、生活習慣を見直して自律神経の乱れを整えることが必要です。
「寒暖差疲労」の症状を緩和する! 3つの対策方法
編集部
寒暖差疲労の症状を緩和するための対策方法を教えてください。
村山さん
1つ目の対策方法は、40℃前後のぬるめのお湯にゆっくりつかり、身体の芯まで温めることです。入浴によって血行が良くなり、精神的にもリラックスして自律神経が整います。自律神経は首周りに集中しているため、首までつかって温めましょう。2つ目の対策方法は、首をストレッチして筋肉の緊張を緩めることです。首周りは自律神経の通り道であるため、首のこりは自律神経の乱れにつながります。首を前後左右に気持ちよく伸ばしてストレッチしましょう。3つ目の対策方法は、質の良い睡眠をとることです。脳や自律神経の疲労回復には、質の良い睡眠が必要です。就寝の2時間ほど前からリラックスして眠るための環境を整えましょう。スマートフォンなどの強い光は交感神経を優位にして睡眠の質を下げると言われますので、就寝前の使用は控えてください。
編集部
寒暖差疲労が起こらないように予防する方法はありますか?
村山さん
冬の寒暖差疲労を予防するためには、自律神経を整えて冷えにくい体をつくることが重要です。規則正しい生活を基本として、適度な運動を行いましょう。適度な運動には血流を改善して気分をリフレッシュさせ、自律神経を整える効果があります。30分程度のウォーキングやストレッチなど、無理なくできる運動を続けましょう。エアコンなどの暖房器具の使用を控え、寒さに身体を慣らすことも寒暖差疲労の予防に効果的です。本来持っている体温の調整機能を弱めないためにも、エアコンに頼りすぎず、日常生活に適度な寒暖のリズムを作って自律神経をトレーニングしましょう。
編集部
寒暖差疲労が起こりにくくなる食事についても教えてください。
村山さん
冷たい飲み物や食べ物を控え、身体を温める食事をとりましょう。鶏肉などの肉類や、イワシ、カツオなどの赤身魚・青魚、ショウガ、にんにく、カボチャ、カブ、長ネギ、ニラなどの野菜、納豆や味噌などの発酵食品は体を温めるのでおすすめの食材です。一般的に冬が旬の食材は体を温めるものが多くて栄養価も高いので、旬の食材を選ぶようにしましょう。さらによく噛んで食べることで、ストレスが軽減して自律神経が整います。身体の調整機能を助けるビタミンやミネラルが不足すると自律神経の乱れにつながるため、主食、主菜、副菜を揃えて、バランスのよい食事を食べるようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
村山さん
自律神経が乱れると、寒暖差疲労のほかにもさまざまな不調を招きます。規則正しい生活や適度な運動、バランスの良い食事を心がけ、自律神経を整えて寒暖差に負けない身体をつくりましょう。
編集部まとめ
冬場に起こりやすい寒暖差疲労の原因と対策方法について薬剤師の村山さんに解説していただきました。季節の変わり目や冬場に疲れを感じやすいという方は、ぜひ自律神経を整える対策方法を実践してみてくださいね。それでも症状が改善しない場合は無理をせず、かかりつけのクリニックなど医療機関を受診し、医師に相談してみてください。