【皮膚科医が教える】「肝斑」と「シミ」の違いや見分け方。治療法や施術時間なども詳しく解説
シミには様々な種類があります。肝斑もシミの一種ですが、ほかのシミとは性質が異なり、適切なケアをしないと悪化してしまうこともあると言います。そこで今回は、肝斑の特徴やシミとの見分け方、治療法について「ウォブクリニック中目黒」の髙瀬先生にお話を伺いました。
監修医師:
髙瀬 聡子(ウォブクリニック中目黒)
肝斑とシミの違い
編集部
そもそも、シミとはどんなものを指すのですか?
髙瀬先生
一般的にシミと呼ばれるものは、多くが加齢によるものや紫外線の暴露によるものです。その中でも高い頻度でみられる代表的なシミが、「老人性色素斑(日光黒子)」や「肝斑」です。そのほか、炎症後の色素沈着やそばかすと呼ばれるものもあります。
編集部
肝斑もシミの一種なのですね。
髙瀬先生
そうですね。ただし、ほかのシミとは性質が異なります。肝斑は、両側の頬を中心としてできる境界がはっきりとした色素斑で、30代半ば以降から多くみられます。肝斑以外のシミは、特定の場所にできるということはありませんが、肝斑は目の周りを避けるようにモヤモヤっと広がるようにして左右対称にみられるのが特徴です。また、日光黒子やそばかすのようにはっきりした輪郭がなく、もやっと薄褐色のシミが広がるものは、一見すると顔色がすぐれないような印象に見えるケースもあります。
編集部
肝斑ができてしまう原因は何ですか?
髙瀬先生
肝斑の主な原因は、女性ホルモンによる影響と紫外線暴露、摩擦と考えられています。そのため、間違ったスキンケアやマッサージ、洗顔時の摩擦、妊娠や出産などのホルモンバランスが変化する時期などによって肝斑が発生することもあります。
肝斑の見分け方
編集部
どんなものが肝斑なのでしょうか?
髙瀬先生
目の周りを避けるようにモヤモヤと広がっているものや妊娠をきっかけに広がったもの、出産の度に濃くなっているもの、エステで光治療を受けたらかえって悪化してしまったものなどは、肝斑の可能性があります。
編集部
肝斑を自分で見分ける方法はありますか?
髙瀬先生
1.目の周りを避けるようにシミが広がっている
2.頬骨に沿うような形で左右対称にシミが広がっている
3.輪郭がはっきりせず、モヤッと広がるような薄い褐色のシミである
4.目の周りだけ肌の色が白く縁取られているように見える
5.月経の周期や季節の変化によってシミの濃さが変化する
6.美白ケアをしているのにシミができてしまう
7.光治療でシミが悪化したことがある
8.妊娠したことがある、またはピルを服用している
9.メイクや洗顔、フェイスマッサージを入念にしている
10.日々強いストレスを感じることが多い
編集部
多く当てはまっていたら、肝斑のケアを始めた方がいいのでしょうか?
髙瀬先生
当てはまる数が多いほど肝斑の可能性は高いですが、肝斑は老人性色素斑を合併している例もあるため、専門医でなければ見分けが難しい場合があります。また、肝斑を通常のシミと誤って解釈して光治療などを受けてしまうと悪化することもあります。そのため、一度皮膚科や美容皮膚科を受診して診断してもらった方がいいでしょう。
肝斑の治療法
編集部
肝斑の治療法には、どんなものがあるのでしょうか?
髙瀬先生
内服薬や外用薬による治療、「肝斑レーザートーニング」というレーザー治療、美白成分入りのスキンケア化粧品を使用する方法もあります。
編集部
肝斑レーザートーニングについて教えてください。
髙瀬先生
黒い色素を吸収する波長を持ったレーザーをごく弱いパワーで照射し、肌の中に停滞しているメラニンを少しずつ壊していく肝斑専用のレーザー治療です。レーザーによる炎症を極力抑え、メラニン色素を作らせない効果が期待できます。施術中は輪ゴムで弾かれるようなパチパチとした感覚が生じ、照射後は軽度の赤みや敏感になるような感じがありますが、次第に軽快していきます。なお、照射後のガーゼやテープの保護は不要です。施術時間は約10分で、1週間に1回の間隔で受けることをすすめています。個人差などにもよりますが、徐々に肝斑が薄くなっていく効果が期待できるでしょう。
編集部
内服薬や外用薬にはどのようなものがあるのですか?
髙瀬先生
トラネキサム酸やビタミンC、ビタミンEなどの内服薬、塗り薬などの外用薬による治療です。トラネキサム酸にはメラニンの発生を抑える働きがあり、ビタミンCには今できているシミを薄くする「還元作用」があります。また、ビタミンEと併用して内服することでさらに効果が期待できるでしょう。ただし、飲み合わせに注意が必要な薬などもあるため、服用前には医師に相談した方がいいでしょう。そのほかに、医療機関でしか出すことのできない濃度(4%以上)のハイドロキノンクリームや美白剤などを使った治療法もあります。
編集部
化粧品はどのような種類を使用すればいいのでしょうか?
髙瀬先生
スキンケア化粧品の中でも、ハイドロキノンやビタミンCが配合された製品がおすすめです。医療機関で販売している化粧品であれば、高濃度でハイドロキノンが配合されていると思います。そのほか、シミ予防のためにはアルブチン酸やコウジ酸が配合されている製品も効果的でしょう。
編集部
スキンケアなど、日常生活での注意点はありますか?
髙瀬先生
現在使用している化粧品がご自分の肌に合っているか合っていないか判断することは重要です。もし合っていない場合には、過度な炎症やシミの悪化などにつながる恐れがあります。使っていて赤みやひりつき、違和感があれば、使用を中止してください。また、先ほどもお話ししたように、摩擦が原因で肝斑ができてしまうこともあります。スキンケアをしているのに肝斑ができてしまった場合には、現在おこなっているマッサージや美顔器の使用、洗顔時の摩擦などを見直してみることも大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
髙瀬先生
肝斑を含むシミの原因となる紫外線は、一生避けられないものです。シミはできる前に予防できるのが一番ですが、できてしまった場合には早いうちに対処することで悪化を防ぐことができるでしょう。しかし、適切なケアのためには肝斑かどうかの判断や正しいスキンケアが重要です。肝斑かどうか気になっているという場合や、適切なスキンケアの方法については、皮膚科や美容皮膚科でお気軽ご相談ください。
編集部まとめ
肝斑は、目の周りを避けるようにして左右対称に広がるなどの特徴があるとのことでした。この記事で紹介したチェックポイントから、ご自身のシミが肝斑かどうか確認してみましょう。しかし、いずれの場合にも間違ったケアをおこなうと悪化してしまうこともあります。シミのケアを始める前に、一度医療機関で診察を受けて、スキンケア方法などについて相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒153-0061 東京都目黒区中目黒1-10-23 シティホームズ中目黒アネックス2F |
アクセス | 東急東横線「中目黒駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科 |