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【闘病】ALSで亡くなった父に続き自分も発症… 「家族性ALS」を患って始まった壮大なチャレンジ(2/2ページ)

 更新日:2024/12/26
【闘病】「父に続き自分も…」 遺伝で『家族性ALS』を発症して初めてわかった人生の意味

病気と「向き合う」のではなく「受け入れる」

病気と「向き合う」のではなく「受け入れる」

編集部編集部

現在はYouTubeやメディアなどにも積極的に登場されていますね。

青木 渉さん青木さん

病気になってすぐの頃は、近しい人たち以外は病気のことを公表していませんでした。でも「どうしても治療薬を試したい」という思いで募金活動を始めてからは、募金してくださった方への現状報告や、同じ病気と闘っている人へのエール、それから「ドラッグラグ」についてたくさんの人に知ってほしいという思いから、積極的に情報を発信するようになりました。
アメリカで新薬承認。希望の光が……

青木さんのYouTubeチャンネル「ALS 〜新薬への道のり日記〜」

編集部編集部

「ドラッグラグ」とは?

青木 渉さん青木さん

海外で承認されている薬が日本でも承認され、使えるようになるまでの時間差のことです。世界ではすでに治療薬として使用されているのに、日本では承認のプロセスが遅れていて、いまだ認められていない薬がたくさんあります。

編集部編集部

悩ましい問題ですね。

青木 渉さん青木さん

はい。特にALSのように進行の早い疾患にとってドラッグラグはまさに命取りになりかねません。ドラッグラグについて少しでもたくさんの人に知ってもらい、現状が改善されることを期待しています。

編集部編集部

ALSだけでなく、「ドラッグラグ」とも闘うのは大変そうです。

青木 渉さん青木さん

それでも「ひとりじゃない」と言って支えてくれる人がいます。大変さの一方で、それを上回るくらい人の温かさも感じることができるのが、とてもうれしいです。

編集部編集部

今後、どのように治療を進めていきたいと思いますか?

青木 渉さん青木さん

これまで皆様のご支援のお陰でトフェルセンの治療を3回行うことができました。トフェルセンは継続投与が必要なので、現在4回目、5回目の治療を目指して募金活動をしています。円安ということもあって、今後も継続してこの治療を続けていくことは、正直なところ現実的ではありません。

編集部編集部

そのためにも、一刻も早くドラッグラグの解消が必要なのですね。

青木 渉さん青木さん

現在、「トフェルセン」の国内における迅速承認を要望する署名活動(※プロフィール内「サポーターの会」HP中の活動報告を参照)と、ALSの患者さんやご家族を対象にしたアンケートを行っています。11月中旬、ALS協会の協力もあり、厚生労働省と面談を行うのですが、その際に署名とアンケートを提出する予定です。

編集部編集部

政府や医療機関に望むことはなんですか?

青木 渉さん青木さん

1日でも早く、ドラッグラグを改善してほしいと思います。欧米では早期承認制度が確立されていて、新薬を承認するまでの期間を短くしようという動きが活発です。でも日本にはそうした制度がありません。

編集部編集部

一刻を争う患者さんにとっては、とてももどかしい問題ですね。

青木 渉さん青木さん

海外で承認された薬が日本で認められるまで、4年もかかったというケースがあります。その4年間で、いったいどれだけの命が救えたか。医薬品の承認においては未来のことだけではなく、「今の患者」をもっとみてほしいです。

編集部編集部

新薬が承認されたら、一般には治療法がないとされているALSの希望の光になりますね。

青木 渉さん青木さん

そう思います。難病とされる病気でも、私は可能性をあきらめたくない。少しでも可能性があるなら、確実にアプローチしていきたいと思っています。

編集部編集部

あきらめないという強い気持ちが大事なのですね。

青木 渉さん青木さん

確かにそれはそうなのですが、「あきらめない」という気持ちだけを前面に出すと、かえって自分が苦しくなって生活はうまくいかないと思うんです。

編集部編集部

それはどういうことですか?

青木 渉さん青木さん

自分の過去を振り返っても思うのですが、病気に対して真正面からぶつかると自分が苦しくなる。たとえば「どうしてこんなにリハビリを頑張っているのによくならないんだ」とか……。頭のなかは常に病気のことでいっぱいになり、病気に人生を支配されてしまいます。

編集部編集部

なるほど、ではどんな心境が必要なのでしょうか?

青木 渉さん青木さん

病気を受け入れる気持ちがないと、病気は良くならないと思っています。たとえ進行したとしても「しょうがない」と受け入れて、今の最善を尽くす。「病気が自分のすべて」になってしまうのではなく、「自分の一部に病気がある」くらいがちょうどいい。病気と正面から対峙するのではなく、受け入れる姿勢が大事なんじゃないかなと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

青木 渉さん青木さん

可能性を感じるものにはしっかりとアプローチをして、ベストを尽くすことが大事だと思っています。それは病気だけでなく、仕事や勉強などでも同じこと。私も「ALSは治らない」「難病」と言われ、希望を閉ざされることもありますが、それでも可能性は捨てたくない。どんな難題だとしても、少しでも可能性を感じることがあれば、チャレンジする姿勢が大事だと思います。

編集部まとめ

現在日本では約1万人がALSを発症しているとされています。原因が解明されておらず、治療法も確立されていないなかで治療に臨むのは、強い心が必要になります。ALSとドラッグラグの、2つの問題と闘う姿に、日本が抱える医療の問題や健康という価値に、改めて気づかせてもらいました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師