「婦人科形成術」は抜糸しない? 溶ける糸っていつ溶けるの?
婦人科形成術での抜糸の有無はクリニックによって異なります。それは、クリニックによって使用する糸や縫い方などが異なるためです。では、抜糸が必要な治療と不要な治療ではどのような違いがあり、「溶ける糸」はいつ溶けて消えるのでしょうか。SOL CLINICの向井先生にお聞きしました。
監修医師:
向井 英子(SOL CLINIC)
婦人科形成とは?
編集部
婦人科形成とはなんですか?
向井先生
婦人科形成とは女性器の診療科目のことで、女性外性器の形態や機能異常を修復する診療科です。「女性器形成」「婦人科形成外科」「婦人科の整形」「陰部形成」などと呼ばれることもあります。
編集部
具体的に、どのような治療を行うのですか?
向井先生
婦人科形成で最も多く行われている治療は、小陰唇縮小術というものです。小陰唇とはデリケートゾーンの一部を指します。陰部の一番外側には大陰唇という膨らみがあり、その内側に小陰唇というひだがあります。
編集部
「小陰唇縮小術」とは、その小陰唇を切除して小さくするのですか?
向井先生
そうです。小陰唇には尿道口や膣を保護する役目を持ちますが、人によって形や大きさなどが異なって個人差がとても大きいのが特徴です。そのため、どのくらいの大きさであれば正常という定義はありません。
編集部
それより大きい場合、切除術が行われることがある、ということですか?
向井先生
はい。小陰唇が大きくなると下着にこすれて痛む、汚れや垢がたまってにおいのもとになることがあります。また、性交渉時にまきこまれるリスクもあります。その場合には余分な組織を部分的に切除し、形を整えて縫合します。
婦人科形成術では抜糸する? しない?
編集部
デリケートゾーンなので、手術が不安です。
向井先生
小陰唇をはじめデリケートゾーンは非常に繊細な部位ですし、女性器は痛みにとても敏感です。また痛みの感じ方には個人差があり、「術後の痛みが不安」という人も少なくありません。そのためクリニックによってはオプションとして、鎮痛効果が72時間続く麻酔を使用できることもあります。痛みが不安な場合は、ぜひ医師にご相談ください。
編集部
傷跡が残ることはないのですか?
向井先生
一般的に女性器は血流が良い部位なので、傷の回復が早いという特徴があります。また、ひだなどに隠れて傷跡が目立ちにくいとされています。
編集部
手術後には抜糸が必要なのですか?
向井先生
抜糸が必要な場合と、抜糸が不要な場合があります。吸収糸という糸は体に吸収されて溶ける性質があり、抜糸が不要となります。また糸の違いだけでなく、縫い方によっても抜糸が必要な場合と不要な場合があります。
編集部
吸収糸は手術後、いつ溶けてなくなるのですか?
向井先生
素材の種類によりますが、だいたい手術後1か月前後で吸収されていきます。ただし、糸の張力が強いものは溶けて消えるまでに時間が長くかかり、短期間で吸収される糸は張力も弱くなります。
抜糸する手術と抜糸しない手術。それぞれのメリットとデメリット
編集部
抜糸する手術としない手術では、何が違うのですか?
向井先生
単に「体に吸収される糸を使っているか、どうか」という違いではなく、縫合する技術にも違いがあります。抜糸が必要な手術では皮膚縫合を行いますが、縫合後を見ると糸が見えている状態になります。一方、抜糸が不要な場合は真皮縫合といって皮膚の中で糸をかけていくような縫合になります。
編集部
縫合には高度な技術が必要なのですか?
向井先生
一般的に抜糸をしない真皮縫合の方が高度な技術を要するとされています。また、縫う時間も異なってくるので、それらの違いが金額の差となってあらわれ、通常は抜糸不要の方が若干手術費は高くなります。
編集部
結局、どちらがいいのですか?
向井先生
メニューによっても異なりますし、医師の考えによっても違います。一般的には抜糸不要の手術の方が、「傷の治りが早い」「術後出血や痛みが少ない」「仕上がりがきれい」というメリットがあるとされています。
編集部
抜糸ありの場合、糸を取るために再度受診しなければならないですよね。
向井先生
はい。抜糸する手術では、1~2週間後に糸を抜く処置を行うので再度来院していただく必要があります。長期間糸を放置すると、糸にゴミや垢などがつくなど衛生面の問題や、体に吸収される糸で皮膚縫合をした場合には糸が埋まってしまうので、抜糸するのに苦労することもあります。場合によっては糸を取りきれず、いつまでも残ってしまいます。
編集部
抜糸しないことでいろいろなリスクもあるのですね。
向井先生
それから「縫合糸痕(ほうごうしこん)」といって、抜糸をしないで放置してしまった場合、皮膚の表面に糸による傷跡が残る可能性もあります。
編集部
そうなると、抜糸が不要な手術の方が良いということになりますか?
向井先生
医師によっては「抜糸が不要な糸を使うと炎症反応が起こり、糸が崩れてくる」という人もいます。そのあたりは医師の考えによるところが大きいのですが、当院では「抜糸なし」も「抜糸あり」も吸収される糸を使用しています。そして、抜糸をする場合には皮膚縫合、抜糸をしない場合には真皮縫合をしています。これにより傷跡が目立ちにくく、また、きれいな仕上がりになります。
編集部
いろいろな考えがあって、一概に抜糸不要が良い、悪いということは言えないのですね。
向井先生
糸の種類だけでなく縫合の仕方でも大きく変わります。抜糸ありなしのどちらがいいかについては、受診するクリニックで確認することをおすすめします。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージをお願いします。
向井先生
当院の場合、基本的に「抜糸不要」を選択する患者様が大多数です。一般に、抜糸不要の方が抜糸ありよりも若干金額は高めですが、私自身は、抜糸不要には金額差を上回るくらいのメリットがあると考えています。長期的に考えると、抜糸をしない方が痛みの点でも楽ですし、傷跡が残らないということは、手術をしたことすら忘れてしまうくらいの感覚になります。抜糸ありなしで迷っている場合には、担当医に双方のメリットとデメリットを詳しく教えてもらってから選択することをおすすめします。
編集部まとめ
女性にとって気になることの多い婦人科形成術。手術の際に抜糸ありなしのどちらがいいかは、医師による考えや治療内容によっても異なるようです。詳しくは受診先で確認し、納得したうえで選択するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-7-8アペルト中目黒2階 |
アクセス | 中目黒駅徒歩2分 |
診療科目 | 形成外科 美容外科 美容皮膚科 |