【薬剤師監修】「ワセリン」の効果や正しい使い方は? 乾燥肌を予防するための使用方法
冬の乾燥や夏場のクーラーの影響で、乾燥肌に悩む方は年々増加傾向にあります。また、大気汚染や花粉などに伴う過敏性の皮膚炎なども昨今話題になっていますね。そんな乾燥を肌に感じるタイミングで使うことが多いのは、ワセリンではないでしょうか。そこで今回は、乳幼児から高齢者まで世代を問わず、乾燥から肌を守る保湿剤として使用されているワセリンの分類と、主作用や副作用などの特徴について、薬剤師の玉井さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
玉井 大輔(薬剤師)
目次 -INDEX-
ワセリンの効果を解説 保湿だけでなくニキビも改善できる?
編集部
ワセリンの成分や保湿剤としての作用はどんなメカニズムでしょうか?
玉井さん
市販薬としても販売されているワセリンは、天然成分である石油の純度を高めた製剤です。皮膚に塗布すると形成される油膜が毛穴からの水分の蒸発を抑えることによる保湿作用と、外気からの異物の侵入を防ぐことによる保護作用を同時に発揮します。
編集部
ワセリンはどんな時に使用するのですか?
玉井さん
ワセリンは天然成分由来で刺激性の少ない保湿剤および保護剤であるため、皮膚の薄い首から上の顔の部分を含めた全身の乾燥肌に使用することが可能です。例えば、入浴や洗顔の後の肌の保湿、唇のひび割れ、髪の毛のダメージを保護するヘアケアなどにも効能が期待できます。
編集部
ワセリンはニキビの原因となるアクネ菌にも効果があるのですか?
玉井さん
石油成分で構成されているワセリンには、ニキビの原因となるアクネ菌に対する直接的な殺菌作用はありません。一方で、保湿作用によってアクネ菌の良好な生育環境となる乾燥状態を防ぐことで、間接的に増殖を抑える効果が期待できると考えられています。
編集部
ニキビにワセリンを使用するときの注意点はありますか?
玉井さん
ニキビの原因菌であるアクネ菌は酸素を好まない嫌気性菌であり、毛穴の皮脂を栄養源として増殖します。そのため、ニキビの進行具合によっては、ワセリンを塗布することでアクネ菌にとって良好な繁殖状態を生み出し、病状を悪化させてしまうリスクがあります。
ワセリンには種類がある? それぞれの特徴を知り正しく選択しよう
編集部
ワセリンにはいくつか種類があるのですか?
玉井さん
天然成分である石油の純度を高めて精製されたワセリンには、製造の過程において硫黄化合物などの不純物を含むこともあります。精製度によって黄色ワセリンや白色ワセリンなどの複数の種類に分類されています。
編集部
ワセリンを選ぶときのポイントはありますか?
玉井さん
ワセリンは、精製の純度が高くなるほど黄色から白色へと変化していく傾向があり、肌に対する刺激も少なくなります。たとえば、アレルギー体質などで肌が敏感な方が保湿剤として使用する際には、黄色よりも純度の高い白色に近いものを選んだ方が良いでしょう。
編集部
ワセリンと保湿剤のちがいは何ですか?
玉井さん
保湿剤とは肌の水分を保つための製剤のことを指し、精製された石油を主成分とするワセリンもその一つです。ほかには、天然保湿成分である尿素や、人体の血液をサラサラにする成分でもあるヘパリンの類似物質などを主成分とした複数の保湿剤が流通しています。
ワセリン使用時の注意点とは 子どもにも使える? 副作用は?
編集部
ワセリンの正しい使用方法を教えてください。
玉井さん
ワセリンには保湿や保護作用がありますが、水分を補給する作用はありません。そのため、ワセリン塗布前は地肌を清潔にし、化粧水や乳液、もしくは他の保湿剤を十分に塗布しておくことが必要です。
編集部
乳児の目の周りや唇にワセリンを使用しても大丈夫ですか?
玉井さん
はい、大丈夫です。保湿剤のなかでも天然成分である石油の純度を高めた油脂製剤であるワセリンは、眼科用製剤としても流通しています。また、乳幼児の小さなお子様が誤って少量を口にしてしまったとしても無害であるため、安全に使用できるお薬です。
編集部
アレルギー体質の敏感肌にワセリンを使用しても大丈夫ですか?
玉井さん
アレルギー体質による敏感肌の方やアトピー性皮膚炎などの皮膚のバリア機能に支障がある方にも、病状が悪化していない限りは有効です。ワセリンが保湿作用に加えて、皮膚への刺激となる外部の異物をシャットダウンすることで保護作用を発揮します。
編集部
ワセリンの副作用にはどのようなものがありますか?
玉井さん
ワセリンの主成分は天然成分であるため、一般的に副作用はないものと考えて問題はありません。ただし、黄色ワセリンなどの純度の低いものでは、不純物や添加物などによるかぶれなどが生じることがあるため、試用により反応を見てから、適切な製剤を選択した方が良いでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
玉井さん
石油成分を精製したシンプルな構造であるワセリンは、老若男女を問わずに、多くの方が幼少期から使用している最も身近な保湿剤の一つです。乾燥が気になる箇所にすぐ使えるよう、家に常備しておくことをおすすめします。多くの方々の、病気や治療に関する不安が解消されれば幸いです。
編集部まとめ
古くから乾燥肌や過敏肌に対して、天然成分の保湿剤として使われるワセリンには複数の種類があります。病気の原因が多様化した現代では、ほかの保湿剤と区別をした適切な用法を把握する必要があります。今回は、薬剤師の玉井さんにワセリンの分類と、主作用や副作用などの特徴について解説していただきました。病気の治療に使用するお薬に関する疑問などがある場合は、ぜひ薬剤師に相談してみて下さい。