【闘病】気づいた時には脳出血で倒れていた。多忙な日々でめまいをそのままにした結果…「無理せず誰かを頼ってほしい」
めまいを感じるも「多少疲れているだけだろう」と考えていたところに、突然起こった脳出血。今回お話を聞いた杉本さんは、それまで目立った前兆もなく、突然の脳出血とリハビリ生活が始まったそうです。病気の発覚、リハビリ、現在に至るまでにあった苦労や、気を付けるべきことなどについてお聞きしました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年6月取材。
体験者プロフィール:
杉本 有美(仮称)
1970年代生まれの女性。現在は長男・長女との3人暮らし。2017年11月の休日、軽いめまいなどを感じていたものの、「疲れが溜まっている」と考えていたところ、自宅で倒れた。辛うじて動かせた左手で家族に電話をかけ、家族の連絡で病院へと搬送。脳出血との診断を受ける。
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「頑張りすぎていたから休みなさい」というメッセージなのだと感じた
編集部
脳出血とはどのような病気か教えてください。
杉本さん
脳出血は、脳の間を通っている細い血管が破れる、もしくは裂けることで脳組織内に出血する病気です。前兆はほとんどなく、ある日突然起こるのが怖いところです。そして、出血すると血腫という血の塊になり、脳細胞の破壊や脳組織の圧迫などをきたすことで、いろんな症状が現れます。原因の多くは高血圧といわれており、生活習慣が大きく関係しているようです。
編集部
杉本さんが脳出血を発症した時のことも教えてください。
杉本さん
2017年11月頃、普段通りの何気ない日曜日を過ごしていました。朝から少しめまいを感じていましたが、「週末で疲れが溜まっているから今日はゆっくりお風呂に入って、早めに寝よう」という程度にしか考えていませんでした。それから、買い物へ行こうと準備していたところ、突然めまいで壁にもたれかかり、そのまま畳に倒れました。その瞬間「何かおかしい」と思い、スマホで子どもたちに連絡しようとするも、上手く身体が動かずに操作ができませんでした。
編集部
それからどのように連絡して病院へ行きましたか?
杉本さん
近くで遊んでいた長女が帰宅後、救急車を呼んでくれました。病院に搬送されてからも意識はあったのですが、動かそうとしても右側の手足がまったく動かない状態でした。
編集部
治療や入院はどのように行われたのですか?
杉本さん
検査の結果、「脳出血」という診断でした。脳の深い部分で出血したため手術は難しいと判断されて、点滴による薬物治療をしました。この急性期病院には2週間入院して、リハビリも並行して行いました。それからリハビリ病院へ転院して3カ月半、入院とリハビリの生活を送りました。
編集部
まったく前兆や気になる症状がなかったということですか?
杉本さん
そうですね。軽いめまいがあったくらいでそれ以外の症状はなく、気付いた時には倒れ込んでいました。
編集部
突然の脳出血発症でしたが、発症当時の心境も教えていただけますか?
杉本さん
私は母子家庭で、当時は長男・次男・長女、そして猫と暮らしていました。今は次男が結婚のために別の場所に住んでいますが、当時は子どもたちを養うために必死でした。だからなのか、「頑張りすぎたからおやすみしなさい!」と言われた気がしました。とはいえ、自分が倒れたことで子どもたちのこと、家のこと、仕事のことなど不安で一杯でした。
半年間のリハビリ生活を経て復職へ
編集部
発症後の生活はどのような変化がありましたか?
杉本さん
合計で4カ月間入院し、退院後は2018年5月から短時間勤務で復職させていただきました。働きながらリハビリも続け、6月でリハビリ通院は終了、7月には通常勤務に戻りました。
編集部
家族からの支えはどんなことがありましたか?
杉本さん
当時高校3年生だった次男が家事・家計を支えてくれて、長女の世話までしてくれました。長女は中学3年生で思春期と受験もあって大変だっただろうと思います。また、私を頼るわけにいかなかったので、食事や洗濯は各自でやってもらうことにしました。
編集部
治療中に印象深かった出来事などはありますか?
杉本さん
発症初期の入院中、見守り時期という期間があって、ベッドから移動する時やトイレや食堂に行く時、何かものを取る時などに看護師さんを呼ぶ必要があります。この期間、車椅子への移乗と移動の際は看護師さんが優しく、「このまま車椅子生活でもいいかな」と少し思ったことがあります。
編集部
最初のうちは仕事が大変だったのではないでしょうか?
杉本さん
仕事は通勤の際のバスの昇降が大変でした。あとは、平坦ではない道路の歩行や社内のちょっとした段差、通路などもしんどい時期がありました。それに、会社へ迷惑をかけては申し訳ないと思い、あらゆる面で気を配りました。ですが、入院中の時から身体を動かして生活していたおかげで、生活動作が十分できるようになるまで早かったです。
編集部
現在はリハビリ通院をされていないのですか?
杉本さん
2019年9月頃、リハビリ入院していた病院に相談して、自宅近くのリハビリ病院での月1回のリハビリを4カ月ほど継続しました。今は、自宅でできるセルフリハビリをしていて、一時期歩行のバランスや装具のことで不安があり、相談したこともあります。
現在でも日々のリハビリと生活リズムへの意識は欠かせない
編集部
杉本さんが日課にしていること、取り組んでいることを教えてください。
杉本さん
片麻痺と上手く付き合っていくために、身体をバランス良く動かしています。バランス良く動かしていないと支障が出て、年齢とともに余計に動かしにくくなると思い、日々のストレッチや休日の朝の散歩は欠かせません。自由に動く左側を見本にする、YouTubeの動画を見ながら動かす、動かしづらい箇所にはマッサージやストレッチもしています。食事も毎日水を2リットルくらい飲むこと、果物とゆで卵を食べて、小麦粉を使ったものは控えるといったことを意識しています。
編集部
発症前の自分にアドバイスできるとしたら、何を伝えたいですか?
杉本さん
「無理しないで、誰かを頼ってほしい」です。あとは、脳出血は生活習慣が関係しているので、「早寝早起きと腹八分目を意識してほしい」と伝えたいです。
編集部
脳出血の患者さんに対して、周囲の方が配慮してほしいことは何でしょうか?
杉本さん
病気の患者ではなく健康な人として対応してもらえるのはありがたいですが、不意にぶつかったり、おされたりするのが本当に危険なので、その点に配慮してほしいです。
編集部
最後に、読者の方へのメッセージをお願いできますか?
杉本さん
私は病気になってから食生活を改善しましたが、誰でも病気の予防はできます。いろんな情報を上手に使って、ご自身に合う方法で病気の予防をしてみてください。
編集部まとめ
今回は脳出血を経験し、現在も自分なりにリハビリと生活習慣の改善を続けながら、社会復帰を果たした杉本さんにお話していただきました。杉本さんは身体の片側に麻痺を残しつつも、以前に近い生活を送っています。脳出血の多くは高血圧が原因とされており、日頃から食生活や生活リズムを整えることが大切です。杉本さんの経験談を参考に、ご自身の生活で見直すべきところを見直し、病気を予防するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。