吐き気止め薬は原因ごとに選ぶ! 症状別の選び方を薬剤師が解説
誰しもが経験したことはある吐き気の症状。吐きたいけど吐けない人もいますし、この症状が続くと気持ちも辛くなりますよね? そんな時、吐き気止めを使うことでその症状を和らげることができます。しかし、吐き気止めといってもその種類は豊富です。今回は薬剤師の尾田さんに吐き気止めの種類や選び方、注意点について伺いました。
監修薬剤師:
尾田 健志(薬剤師)
目次 -INDEX-
吐き気の原因別に考える「吐き気止めの市販薬」の選び方とは
編集部
ストレスによる食べ過ぎや二日酔いのときにどうして吐き気が起こるのでしょうか?
尾田さん
食べ過ぎによる吐き気の場合、胃の粘膜が荒れてしまい、胃酸に胃の細胞が負けてしまうことが一つの原因です。飲み過ぎによる吐き気は、別の原因となります。飲み過ぎの場合、アルコールが分解されてできた「アセトアルデヒド」が肝臓で十分に処理できない状態となり、吐き気が誘発されるのです。
編集部
市販の吐き気止めの薬の中には、どのような成分が含まれているのでしょうか?
尾田さん
市販の吐き気止めは医療用医薬品と異なる成分が入っています。例えば、消化酵素が多く含まれている胃腸薬などが該当します。ただし、子どもの胃腸薬に関しては吐き気止めの成分が入っているものはありません。ほか、漢方薬などで吐き気を抑えるものもあります。食べ過ぎによる吐き気では消化酵素や粘膜保護剤が入っている市販薬、ストレスや飲み過ぎの場合、胃の調子を整えるような胃腸薬が比較的効果があるとされています。
編集部
食あたりや胃腸風邪のときに市販の吐き気止めを服用しても良いのでしょうか?
尾田さん
結論からいうと、市販薬の吐き気止めなどは胃腸風邪や食あたりのときに使用しない方がいいでしょう。吐き気を抑えると体は少し楽に感じますが、治るまでかえって時間がかかることもあります。食あたりや胃腸風邪による吐き気は、細菌やウイルスなどの体にとって有害なものを外に出そうとする人間の反射によって起こるものです。無理に止めることは避けておきましょう。
「吐き気止めが効かない」のはどんな原因のとき? なぜ効果が出ないの?
編集部
市販薬の吐き気止めを飲んでも効果がないことはあるのでしょうか?
尾田さん
絶対に効果がでないというわけではありませんが、めまいを伴っている吐き気や抗がん剤投与中における吐き気には効果がほとんど出ないこともあります。めまいを伴う吐き気の場合、まずはめまいを落ち着かせることが必要です。飲み薬などで効果がない場合、エプリー法というめまいの起こらない頭位を30秒程保持する方法が効果的です。また、抗がん剤による吐き気の場合、市販薬ではなく、医療用成分の吐き気止めでないと効果が期待できないでしょう。
編集部
低用量ピルを飲んでいると吐き気がすることもありますが、吐き気止めは効果がありますか?
尾田さん
非常に難しい質問ですが、医療用の吐き気止めが処方されることがあります。ただし、ピルによる吐き気は、ホルモン投与に伴う妊娠中のつわりと同じような症状と頭が錯覚することで起こっています。つわり中に吐き気止めを飲んでもほとんど効果がないのと同じですね。そういった場合、できればビタミンB1,B6を摂取してみましょう。特にB6については米国産婦人科学会が推奨しているため、積極的な摂取が望ましいと思います。
編集部
医療用の吐き気止めはどのようなものがあるのでしょうか?
尾田さん
例えば、メトクロプラミドといわれる成分の薬があります。これは胃腸や脳内にあるドパミン受容体への伝達物質の働きを邪魔することで、吐き気を抑えることができます。ほかにもドンペリドンという成分で同じような作用をする薬があります。あまり一般的ではないのですが、抗がん剤の副作用による吐き気には、アプレピタントという飲み薬が処方されることもあります。
編集部
薬以外における吐き気を止める方法はあるのでしょうか?
尾田さん
飲み薬以外にも吐き気を止める方法があります。心の不安に伴った吐き気の場合、背中をさすってもらうことで安心感を得ることができ、症状が改善することもあります。ほかにも、空気の入れ替えや楽な姿勢で深くゆっくりとした呼吸法を行うこと、アロマテラピーなども効果があるとされています。
吐き気止め薬を使用する際のポイント・注意点を薬剤師に効く 常用はしても大丈夫?
編集部
吐き気止めに色々な種類がありますが、薬を使用するポイントについて教えてください。
尾田さん
吐き気止めには様々な剤形があります。例えば吐き気が非常に強く、口から薬を飲めない場合、吐き気止めの坐薬を使用する方法があります。市販薬にはその剤形はありませんが、小さいお子さんの嘔吐などには、医師から処方される坐薬などを使用すると良いかもしれません。また、飲み薬については、嘔吐した後に服用しても効果はほとんど期待できません。できることなら、症状が少し落ち着いているときに服用することがポイントです。
編集部
吐き気の症状が長く続く場合、常用はしても良いのでしょうか?
尾田さん
そもそも吐き気という原因には、食あたりや胃腸風邪のように症状が数日間(1~4日間)程度だけ続く場合と、薬の副作用のようにその原因となるものに触れ続けることで起こってくる場合に分かれます。慢性的な胃腸虚弱に伴う症状に対しては、常用することもあります。ただし、腎臓の機能が低下している高齢者などにおいては、副作用が出る恐れもあり、医師・薬剤師に相談していただく方がよいでしょう。
編集部
複数の吐き気止めを一緒に飲んでも大丈夫でしょうか?
尾田さん
複数の吐き気止めを一緒に飲むと、作用点が同じ場合、副作用が生じる可能性が高くなるため、勝手に服用することは避けるようにしましょう。ただし、吐き気止めによっては複数種類を組み合わせることでその効果を高める方法もあります。抗がん剤における吐き気の場合、副腎皮質ステロイドとほかの吐き気止めを複数種類組み合わせることもあります。医師や薬剤師に相談してもらいながらのほうが良いでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
尾田さん
吐き気が出ると食事が摂れないため、身体の辛さもあり、精神的な辛さも相乗的にアップします。そういった辛さを和らげるために、吐き気止めの薬を上手に使うと、その辛さを少しでも軽減できます。我慢しすぎずに、医師や薬剤師に相談して吐き気に対する方法をしっかりと対策できるようにしてくださいね。
編集部まとめ
胃腸風邪や食あたりのときには無理に吐き気を止める薬を飲まない方がかえってよいこともあります。吐き気止めを服用すると、身体は少し楽にできますが、症状が長引くため注意した方がよさそうです。また、めまいを伴う吐き気や低用量ピルを服用している場合の吐き気には、吐き気止めが効果を発揮しないことも。医療用と市販薬の吐き気止めの成分には違いもあり、吐き気の原因にあった吐き気止めを選択したり、薬の剤形を選択したりすることも大切です。勝手な判断で吐き気止めを服用して副作用が起こることもあり、医師や薬剤師に相談しながら吐き気止めについて考えていくとより安心に薬を服用できそうです。