「もっとこうすればよかった」2人目不妊と3人目不妊、二度の不妊治療経験を振り返る
第一子を自然妊娠で授かった後、「2人目不妊」を経験したあいこまさん(仮称)。タイミング法を根気よく続けた結果、2年目でようやく妊娠。その後、服薬や排卵誘発剤などを活用することで第三子も妊娠・出産。念願かなって3人の子どもに恵まれましたが、その裏には後悔もあると言います。不妊治療を経て、現在の心境をあいこまさんに語っていただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年3月取材。
体験者プロフィール:
あいこまさん
東京都在住、1987年生まれ。職業は会社員、現在は育児休業中。自然妊娠で第一子に恵まれ、2016年に出産。なかなか妊娠できず、2人目不妊を自覚。不妊治療専門クリニックに通院し、タイミング法で妊娠。2020年に出産。2021年に自然流産。大学病院のリプロダクションセンターに通院を開始し、第三子を妊娠。2023年に出産。
記事監修医師:
吉田 悠人
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
自然妊娠による第一子誕生、しかしその後不妊に……
編集部
まず、不妊が発覚したときの経緯について教えてください。
あいこまさん
第一子を出産したのは2016年で、自然妊娠による出産でした。続けて第二子を望みましたが、なかなか妊娠しませんでした。もともと生理不順で周期が安定しているタイプではないことに加えて、授乳期が終わって生理が再開しても不安定な状態だったので、心配になり婦人科へ行きました。
編集部
婦人科ではなんと診断されたのですか?
あいこまさん
「授乳から1~2年は周期が安定しないこともあるので大丈夫ですよ。妊娠を希望するなら排卵のタイミングだけ見ましょうか」と言われ、1年くらいそうしてもらいました。しかし、全然結果が出ず、「まだ若いのに、1年経っても妊娠しないのはおかしいですね。妊娠を望むなら不妊治療専門クリニックへ通院することをおすすめします」と言われました。
編集部
それで、不妊治療専門クリニックに相談したのですね。
あいこまさん
そうです。当時は仕事にも復帰していましたから、通院に便利ということもあり、近所にある不妊治療の専門クリニックに転院しました。
編集部
そこでは、どのような治療を受けたのですか?
あいこまさん
1医院目のクリニックと同様、タイミング法です。ステップアップも考えましたが、経済面で不安があったのと、「もう1人目はいるし、そこまでして2人目を望まなくてもいいんじゃないか」ということで、結局タイミング法を選択しました。まだ若かったので「タイミング法でも大丈夫じゃないか」と当時は考えていました。
編集部
その後の経過はいかがでしたか?
あいこまさん
1年経っても、一向に妊娠の兆候はみられませんでした。根気よくタイミング法を続けてきましたが、さすがに1年近く経つと焦りや不安がありましたし、メンタル的にもかなり落ち込んでいました。頭の中には「いつ、不妊治療をやめようか」ということしかありませんでした。「あと1、2周期トライして、それでダメだったらもう諦めよう」と思っていたとき、幸いにも妊娠できました。
編集部
その後、第三子はどのように治療されたのですか?
あいこまさん
第二子の授乳終了後、妊娠検査薬で陽性が出たものの胎嚢が確認できず、異所性妊娠の疑いがあったので大学病院へ行きました。結局、自然流産となったのですが、担当の先生に「多嚢胞気味だから、妊娠したいならぜひ不妊治療を」と勧められ、そのまま大学病院のリプロダクションセンターに通院を開始しました。
編集部
第三子もタイミング法ですか?
あいこまさん
はい。排卵のタイミングを観察するだけではなく、排卵を誘発する服薬や注射なども積極的におこないました。第二子を妊娠したクリニックではホルモン投与の機会はとても少なかったのですが、第三子のときはホルモン投与の機会が多く、びっくりしました。でも先生が言うには「周期をなるべく28日に整えるのが第一目標。そうすることで妊娠のチャンスを多く作ることができます」とのことだったのでお任せしたら、1年も経たないうちに妊娠することができました。
ただタイミングを待つだけの期間がもったいなかった
編集部
第二子と第三子の治療、どちらが大変でしたか?
あいこまさん
第二子です。最初の1年は排卵のタイミングだけを見てもらっていましたし、不妊治療の専門クリニックに転院したあとも薬をあまり使わず、自然の周期に任せて排卵のタイミングを見つけるという方針だったので、通院して診察してもらっても「まだ卵胞が育っていないので、数日後にまた来てください」と言われることが多かったんです。仕事帰りで疲れているなか、クリニックに行っても「またダメだった」ということが多くて、身体的にはもちろん、精神的にも疲れ切ってしまいました。そのうち、「いつ治療をやめようか」ということばかり考えるようになりました。
編集部
それでも治療を頑張ったのはなぜですか?
あいこまさん
同じように不妊治療で第一子、第二子を授かった友達からの励ましがあったからです。「淡々と治療を続けていけば、いつかは授かるよ」って言ってくれたので、その言葉を信じて頑張りました。あと、第一子がとてもかわいくて、「もう1人、かわいい子が自分のところに来てくれたらいいな」という気持ちもモチベーションになりました。
編集部
治療を頑張っているとき、ご主人の対応はいかがでしたか?
あいこまさん
結婚する前から、「子どもは3人ほしいね」と話していました。でも第二子の不妊治療が精神的にもとても辛くて、「そろそろ治療をやめたい」ということは、夫にも話していました。すると、「それでもいいんじゃない、3人家族でも楽しいよ」って言ってくれました。
編集部
「子どもは3人」というのは、最初から頭の中にあったのですね。
あいこまさん
そうです。でも、第一子を2016年に出産し、第二子を生んだのが2020年。不妊治療で予想以上に時間がかかってしまったこともあり「第三子は難しいかな」と思っていた矢先、すんなりと妊娠できたので、第三子の治療はとても満足のいくものでした。その分、第二子の不妊治療に時間をかけすぎてしまったのが、本当にもったいなく思います。
「まだ若い」という油断は禁物
編集部
もし、第二子の治療中に戻れるとしたら、どんな治療を選択しますか?
あいこまさん
自然の流れに任せて排卵のタイミングを待つのではなく、早めに専門病院へ行って排卵の周期を整えて、たくさん妊娠のチャンスを作りたいです。第二子の治療中はまだ年齢が若く、第一子をすでに授かっているということもあって、安心しすぎていたんです。「不妊治療に油断は禁物」って、当時の私に教えてあげたいです。
編集部
やはり早めに不妊治療を始めて、効率よく進めるのが大切ということですね。
あいこまさん
そうだと思います。不妊治療を始めるとき、夫婦で色々な検査をしてもらいました。結果は2人とも「なんとか自然妊娠できる」というレベルの数値で、それほどいい結果ではなかったんです。私は排卵の間隔が長く、毎回良い卵胞が育っているというわけでもなくて、夫の結果も同じようなもの。「自然妊娠がなんとかできる」という合格ラインギリギリの状態でした。だから、本当はそんなに安心しすぎちゃいけなかったんですよね。
編集部
できるだけ早く検査をして、結果に応じて専門的な治療を始めることが肝心ですね。
あいこまさん
はい。婦人科に通うだけでは不妊検査項目も充実しておらず、女性だけが検査を受けることが多いと思いますが、男性の検査もとても大切です。実際のところ、男性側に原因があって不妊に至っているケースも多いので、男女そろって不妊治療専門クリニックで検査を受けることが必要だと思います。
編集部
不妊治療を終えた今、政府や医療機関に望むことはありますか?
あいこまさん
私が第二子の不妊治療をしているときに痛感したのですが、託児所を備えた医療機関が本当に少ないんです。子どもを連れての治療はとても大変で、「2人目不妊」や「3人目不妊」に悩んでいる人もいますから、ぜひ医療機関には託児所を用意してほしいと思います。
編集部
これから不妊治療を始める人、もしくは治療中の人へのメッセージをお願いします。
あいこまさん
私が不妊治療を受けているときは、たくさんの体験記を読みました。とくに役立ったと思うのは、「不妊治療を途中で諦めた人の話」です。どうやって気持ちに折り合いをつけ、不妊治療を卒業したかということをリアルに相談できる場所はなかなか見つけられないので、そうした生の声を知れる体験記は本当に役立ちました。あと、「不妊治療を始める前にタイムリミットを決めておく」ことも大切だと思います。私も第三子のときには「35歳の誕生日までに妊娠していなかったらやめる」と決めていました。不妊治療はとても大きなプロジェクトです。途中で目安となる目標をいくつか設定し、「このあたりで一度、不妊治療を続けるか見直す」「ここまでに妊娠していなかったら諦める」というポイントを決めておかないと、ズルズル続けてしまうことになりかねません。心理的、身体的、もちろん経済的な負担のことも考え、あらかじめタイムリミットを決めて治療に臨むことをおすすめします。
編集部まとめ
第一子は順調に妊娠したけれど、第二子で不妊に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。あいこまさんの場合、第一子が順調だった分、第二子で安心しすぎてしまい、結果的に想像以上の時間がかかってしまったそうです。不妊治療は確かに夫婦で臨む“一大プロジェクト”ですから、目安となる期限や目標をあらかじめ設定しておくことが大切ですね。