【体験談】「不妊症」と「不育症」を併発、三度の流産を経て体外受精で第一子を出産
妊活を1年以上続けても妊娠しない「不妊症」と妊娠をしても流産や死産が続いてしまう「不育症」、その両方を同時に経験したももみさん(仮称)。妊活をはじめて1年後には、体外受精に踏み切ったそうです。なかなか妊娠しない、妊娠してもすぐに流産するという体験が続いた中、「メンタルが落ち込んだこともあったけれど、周囲の協力もあって乗り切れた」と語ります。晴れて第一子を授かった今、不妊治療について振り返っていただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年2月取材。
体験者プロフィール:
ももみさん(仮称)
東京都在住、1992年生まれ。職業は会社員。2019年に結婚して、2020年から妊活を開始。すぐに妊娠できたが、流産してしまう。三度の流産を経た後、体外受精で妊娠、第一子を出産。
記事監修医師:
浅野 智子(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
妊活をはじめてすぐ妊娠。でも流産に……
編集部
お子さんを授かろうと思ったのはいつ頃ですか?
ももみさん
結婚したのは2019年で、1年後の2020年3月頃から子どもがほしいと思いはじめました。そのタイミングで妊活をスタートしたところ、すぐに妊娠できました。しかし、残念なことに流産してしまいました。
編集部
流産してしまったのですね……。その後も妊活を続けたのですか?
ももみさん
はい。その後、タイミングを図って妊活したのですが、うまく妊娠できず。病院で検査をしても、異常は見つかりませんでした。病院へ行った直後に再び妊娠しましたが、また流産してしまいました。
編集部
妊娠してからどれくらいで流産してしまったのですか?
ももみさん
1回目も2回目も妊娠8週で流産してしまいました。その後に検査を受けたところ、不育症の疑いがありました。
編集部
それから、不妊治療に取り組まれたのですね。
ももみさん
はい。2回目に流産した後、タイミング法で妊活したのですが、妊娠には至らず。もうどれだけ頑張っても妊娠できないことが本当に辛く、不妊治療を始めることにしました。
編集部
どのような治療を始めたのですか?
ももみさん
通常なら、タイミング指導、排卵誘発、人工授精というようにステップアップしていくのでしょうが、私は思い切って体外受精に踏み切ることにしたんです。当時、まだ人工授精は保険が適用ではありませんでしたし、体外受精の方が確実だと思いました。
編集部
早く妊娠するなら、体外受精の方がいいと考えたのですね。
ももみさん
そうですね。当時は20代でしたし、医師から「その年齢で体外受精をしたら、おそらく3回目までには妊娠するでしょう」と言われたことも決め手になりました。2021年4月に体外受精を考え始めて、5月にはもう治療を始めました。
編集部
それだけ早く行動に移したということは、周囲で体外受精をした知人がいらしたんですか?
ももみさん
いいえ。いませんでしたし、正直なところ体外受精についての深い知識も持っていませんでした。「お金がどれくらいかかるんだろう」とか、フルタイムで仕事をしていたので「会社を休めるのかな」とか、漠然とした不安が当時はありました。
編集部
それでも、はじめから体外受精とは思い切った決断ですね。
ももみさん
「早く、確実に妊娠したい」という思いが強かったので、割と勢いだったのかもしれません。夫に相談すると「君がそうしたいなら、やってみよう」という話になり、思い切ってやることに決めました。
会社を休職して不妊治療に専念
編集部
体外受精の治療を受けるクリニックは、どうやって決めたのですか?
ももみさん
会社の先輩の紹介です。先輩がそのクリニックでタイミング指導を受けて、出産したという実績がありました。会社からも近く、通いやすそうだったので私もそこに決めました。
編集部
実際に体外受精を始めてみて、結果はいかがでしたか?
ももみさん
1回目ですぐに妊娠できたのですが、残念ながら3回目の流産になってしまいました。それで、その病院へ行くのはもう嫌になってしまって、「もっと良い病院があるんじゃないか」と思うようになり、別のクリニックを探し始めました。
編集部
仕事をしながら不妊治療も並行するのは大変だったのでは?
ももみさん
じつは、三度目の流産の後に休職したんです。流産が続くことも心理的に辛いですし、仕事をしながらの治療は体力的にもきつかったので、「いっそ仕事を一度休んで、不妊治療に専念した方がいいのでは?」と思い、休職をしました。
編集部
治療期間はどれくらいだったのですか?
ももみさん
だいたい1年間です。ありがたいことに会社の制度はとても充実していて、1年間は有給で休職扱いにしてくれました。おかげで自宅から遠いクリニックへ転院することができました。もし、会社の制度が整っていなくて休職できなかったら、退職していたかもしれません。
編集部
新しいクリニックに通い始めてからはいかがでしたか?
ももみさん
残念ながら、移植を2回おこなっても妊娠することができませんでした。「もう一度、採卵をやり直そうか」と考えていたとき、以前、体外受精をおこなったクリニックに、凍結した胚盤胞が1つ残っていたことを思い出したんです。それでそのクリニックに戻り、再び体外受精を受けました。そうしたら、見事に妊娠できたんです。
編集部
妊娠したときは安心しましたか?
ももみさん
いいえ。治療を続けながらでしたから、出産するまでは「また流産したらどうしよう……」という不安をずっと抱えていました。
編集部
不妊治療中だけでなく、妊娠中も不安が続いたのですね。
ももみさん
はい。でも当時、個人的に良かれと思って通っていた鍼治療と漢方の存在が心の支えになりました。鍼の先生も漢方の薬剤師さんも私が不妊治療中であることを知って、親身に相談に乗ってくれましたし、元気づけてくれました。
編集部
ほかにも、ストレス解消のためにしたことはありますか?
ももみさん
住んでいる区の療育センターでベビーシッターをやりました。いわゆる、療育センターに通う子どもの弟や妹の面倒を見るというボランティアです。多いときは週2回くらい、毎回1~2時間、0歳から3~4歳の子どもの面倒を見ていました。
編集部
なぜ、ベビーシッターのボランティアを?
ももみさん
学生時代も子どもと遊ぶボランティア活動をしていたくらい、子どもと触れ合うのが大好きなんです。無邪気な赤ちゃんや子どもと遊んでいると、不妊治療の辛いことやストレスを忘れられる。純粋に癒される感じがして、私にとってはいい気分転換になりました。
できるなら男女ともに20歳で不妊の検査を
編集部
そして、無事出産したのですね。ご主人の反応はいかがでしたか?
ももみさん
とても喜んでくれました。私も「また流産しないだろうか」という不安から解放され、ようやく心の底から喜ぶことができました。
編集部
不妊治療を経て、夫婦関係に変化はありましたか?
ももみさん
ありました。治療を始める前は、本当に仲良しのカップルでした。でも、治療を始めると喧嘩も増えて、イライラすることも多くなりましたね。
編集部
どんなことで喧嘩をしたのですか?
ももみさん
例えば、タイミング法で妊活していた時期は、お互いに仕事で疲れていることも多かったので、苛立ちをぶつけてしまうことがありました。体外受精を始めてからもベストなコンディションで精子を採ってほしかったのに、前日にお酒を飲んでいたり、協力的でなかったりしたことがありました。基本的に、不妊治療は私の好きなようにさせてくれましたが、振り返ってみると小さな価値観の違いなどでぶつかることも多かったですね。
編集部
なるほど。出産して1カ月が経った今、政府や医療機関に望むことはありますか?
ももみさん
難しいとは思いますが、男女ともに20歳を過ぎたらもっと気軽に検査を受けられる仕組みがあれば、助かる人も多いのではないかと個人的には感じます。男性なら精子の検査、女性ならAMHを測ったり、卵管造影をしたりと。若いうちにそうした検査を受けて不妊の原因が判明すれば、早いうちに手を打つことができると思うんです。もしくは、ブライダルチェックなどの検査の存在を知る機会が近くにあれば、不妊症をもっと身近に感じられて「パートナーと一緒に受けておこう」と思う人も増えるのではないでしょうか。
編集部
たしかに、「一定の年齢を過ぎてから不妊に気づき、治療を始めたけれど妊娠できなかった」という人も多いですよね。
ももみさん
そうなんです。ある程度年を重ねてから不妊に悩み、検査をして治療を始めても、年齢的に間に合わないこともあるでしょう。不妊に悩んだり、検査をしたりしている時間がもったいないので、できるだけ早い時期にそうした検査を受けられるような体制を整えてほしいと思います。
編集部
最後に、これから不妊治療を始める人や現在治療中の方へメッセージをお願いします。
ももみさん
私自身、不妊治療中は「不妊治療を経験して出産しました」という人からのメッセージを読んでも、あまり心に響かなかったんです。「結局、あなたは出産しているんでしょ」って。当時はひねくれていたのかもしれません(笑)。 逆に、私が治療中は「不妊治療をしてもダメで、諦めました」という人の話の方が安心することができました。私はそういう人たちのメッセージを読みながら、「もし自分もダメだったとしても、こういうハッピーな人生を送りたいな」と、子どもがいなくても幸せな人生を想像していました。もともと子どもが大好きなので、「保育士や幼稚園の先生に転職してもいいな」とか。そうした未来も想像することで、もしかしたら自分のプレッシャーを軽くしていたのかもしれません。
編集部まとめ
あまり体外受精に関する知識はなくても、「早く妊娠して出産したい」という強い思いから、一足飛びに体外受精を選択したももみさん。不妊症だけでなく不育症にも悩み、妊娠中は「出産するまで不安が絶えなかった」と振り返ります。でも、鍼治療や漢方の先生に話を聞いてもらったり、大好きな子どもたちと触れ合うボランティアしたりして、上手にリフレッシュできたそうです。ももみさんのように自分のメンタルを保つことが、幸せな出産につながるのかもしれません。