【闘病】「自己免疫性溶血性貧血」 臓器を2つ摘出することになってしまった
「子どもの頃、病院に行くのはとても不安でした」。話を聞いた闘病者のなおみさん(仮称)は、自己免疫性溶血性貧血で小学生にして入院することになったほか、「個室隔離」「開腹手術」「ICU管理」などを経験したといいます。なおみさんを突然襲った病や、当時、子どもなりに感じた想いを聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年9月取材。
体験者プロフィール:
なおみ(仮称)
1971年生まれ、静岡県在住。10歳(1981年)で溶血性貧血と診断され11歳で開腹手術を経験。その後、35歳で再発しステロイドを長期服用する。2021年、ステロイド性骨粗しょう症で椎体を圧迫骨折。2022年8月に骨髄異形成症候群と骨髄増殖性疾患と診断される。たくさんの病気があり不安はあるが、職場の仲間や友達、家族に支えられて楽しく前向きに過ごしている。
記事監修医師:
望月 直矢(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
小学生で、2つの臓器を摘出
編集部
最初に不調や違和感を覚えたのはいつですか?
なおみさん
最初は小学校4年生の頃です。ある日突然、黄疸(おうだん)が出て目や身体が黄色くなりました。だるさや吐き気もありました。
編集部
病院受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。
なおみさん
まず母親と一緒に、近所のかかりつけクリニックに行きました。そこですぐに大きな病院を紹介され、即日入院になりました。その時の診断名は、「肝炎の疑い」だったと思います。小学生だったので、入院だけでも不安なのに、個室に隔離という状態になってしまいました。しばらく検査が続き、採血検査の結果などで正式に「自己免疫性溶血性貧血」と診断がつきました。
編集部
どんな病気なのでしょうか?
なおみさん
自己免疫性溶血性貧血は貧血の一種で、赤血球がどんどん壊れていってしまう病気です。本来であれば赤血球の寿命は約120日ですが、この病気になるとそれよりも早く壊れていってしまいます。そのため、赤血球のヘモグロビン値が低くなり、貧血を引き起こします。病気になる原因はよくわかっていないようですが、本来、身体を守るために細菌などを攻撃してくれる正常な「抗体」とは別に自分のからだに対する異常な「自己抗体」が、自分の赤血球を異常なスピードで破壊してしまう、とのことでした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
なおみさん
赤血球を壊してしまう場所である脾臓(ひぞう)という臓器を摘出すると言われました。この病気には、血管内で赤血球が破壊されるタイプと、主に脾臓で破壊されるタイプがあり、私は後者だったようです。それから、この病気の合併症として胆石になりやすいため、予防的に胆嚢も摘出する治療をするということでした。
編集部
そのときの心境について教えてください。
なおみさん
まだ小学生だったため、説明を聞いてもわからない単語が多く、きちんと理解は出来ませんでした。ただ、子どもなりに「手術が必要」ということは分かったので、「怖いな」と思いました。
術前は怖さで泣き、術後は痛みで泣いた
編集部
治療はどのように進められましたか?
なおみさん
医師の説明通り、脾臓と胆嚢を摘出する手術をしました。手術は、小学校5年生の春休みに行いました。学校を休まなくて済むように、病院側が配慮してくれました。術式として、当時はまだ開腹手術しかなく、1ヶ月半くらいの入院だったと記憶しています。現在はもっと低侵襲で、入院期間も短い術式があるようです。手術中の記憶はもちろんありませんが、手術前は怖くて泣いていて、手術後は痛みと吐き気・嘔吐が酷くて泣いていました。
編集部
治療や闘病生活の中で、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
なおみさん
私には姉と妹がおり、妹とは5つ歳が離れていて当時小さかったために、両親がなかなか毎日お見舞いには来ることが難しく、寂しかったのを覚えています。しかし、手術の当日と、ICUに入っていた約5日間だけは、母親が付きっきりで看病をしてくれていました。母親を独り占めできる安心感や嬉しさもありましたが、一方で「妹は大丈夫だろうか」と手放しでは喜べない気持ちもありました。
編集部
術後はどのような様子だったのですか?
なおみさん
手術後は特に制限もなく過ごし、回復も比較的順調だったように思います。退院後も、すぐに学校に行けて、友達に会えた事がとても嬉しかったです。中学に入学する頃にはすっかり元気になっていました。ただ、そのずっと後、35歳くらいの時に病気が再発し、ステロイドを服用することになりました。そこから10年以上ステロイドを飲み続けたために、骨粗しょう症になった事はとても辛いことでした。ステロイド性骨粗しょう症で骨が脆くなったために、昨年は椎体の圧迫骨折をしてしまい、今でも生活動作に支障があります。
自分の飲む薬は自分で調べる
編集部
病気再発の前後で変化したことを教えてください。
なおみさん
体力が落ちてしまったことと、ステロイドの副作用で脊椎の圧迫骨折になり、走ったりかがんだりなど、今まで普通に出来ていたことが出来なくなってしまいました。また痛みもあることから、ひとつひとつの動作を慎重に行わなければならなくなったこと、そのため家事なども以前のようには出来なくなってしまったこと、などでしょうか。
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
なおみさん
自己免疫性溶血性貧血の方は原因もまだ良く分かっていないため、仕方ない部分もあり、後悔はありません。ステロイドについては、医師や薬剤師から「少量の服用だから大丈夫でしょう」と言われてはいましたが、自分できちんと調ベることもなく飲み続けてしまったので、しっかりと調べて対策をしておけばと後悔しています。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
なおみさん
現在の体調は、腰痛、背部痛と、動悸や息切れ、浮腫や目眩などがあります。また、新たに「骨髄異形成症候群」と「骨髄増殖性疾患」という診断もついたため、不安でいっぱいです。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
なおみさん
一生懸命に治療をしてくださることはとても有り難いことで感謝しています。しかし、どんな薬でも、そして例え少量の服用であっても、きちんと患者に副作用の説明をしていただき、それに対する対策や定期的な検査や治療を行ってほしいと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
なおみさん
どんなお薬でも少なからず副作用はあります。納得いくまで説明を受けて自分の身体の変化をしっかりと把握し、その都度医師や薬剤師に相談してほしいと思います。たとえ病気が良くなっても、副作用で辛い思いや痛い思いをしたり、生活の質が落ちたりするのは本末転倒だと、経験してみて思いました。
編集部まとめ
怖さや痛み、吐き気で泣きながらも、妹の心配をしていたというなおみさん、妹思いの優しいお姉さまですね。ご自身が「ステロイド性骨粗しょう症」になった経験から、「どんなお薬にも必ず副作用はある」と、薬について納得いくまで説明を受けることや、自分で調べることの大切さを語ってくれました。なおみさん、ありがとうございました。