【闘病】しびれや目の違和感は「多発性硬化症」だった『サーフィンが心の支え』
闘病者の川尻修也さんは、20歳の時に病院で脳の萎縮を指摘され、その後しびれや目の違和感などの症状を繰り返し、2017年に多発性硬化症を発症しました。現在は毎日の服薬と定期的なMRI検査を行っているそうです。そんな川尻さんが、多発性硬化症の診断を受けた経緯や治療内容、現在の状態について話してくれました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年10月取材。
体験者プロフィール:
川尻 修也
1976年生まれ。茨城県で妻と両親の4人暮らし。診断時は会社員。趣味はバイクツーリングとサーフィン。20歳のころに身体に違和感があり病院を受診するも、異常は見つからず、数年後の受診の際に別の病気の疑いから多発性硬化症と診断される。現在は定期健診や薬剤投与による治療を行いながら日常生活を送っている。
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
発症例が少ない珍しい難病
編集部
多発性硬化症とはどのような病気ですか?
川尻さん
多発性硬化症は中枢神経系の疾患の1つです。若い年齢での発病が多く、日本では10万人に15人程度が発病するといわれている珍しい疾患です。はっきりとした原因はまだ分かっていないそうです。
編集部
どのような症状がありましたか?
川尻さん
人によって異なるようで、僕の場合はしびれや視界の違和感がありました。現在は左半身にしびれの症状がでています。食べ物が飲み込みづらい、しゃべりづらいなどの症状が出る方もいるようで、本当に人によって様々です。
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
川尻さん
20歳のころに身体に違和感があり病院を受診したのですが、異常は見つかりませんでした。数年後に脳梗塞の疑いで病院を受診したのですが、MRI検査で別の病気の疑いが見つかったため、検査入院することが決まりました。その結果、多発性硬化症の診断が下りました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
川尻さん
入院時や急性期にはステロイドパルス治療を行いました。現在はメーゼントという薬を1日1錠飲んで、進行を止めている状態です(取材時)。定期的なMRI検査と、必要に応じて入院治療を行うと説明されています。加えて、今後ケシンプタという薬剤の自己注射による投与が始まります。
大好きなサーフィンが心の支えになっていた
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
川尻さん
多発性硬化症という難病に負けず、みんなに頑張っている姿を見せてやろうと思いました。「難病であってもこれだけサーフィンが出来るんだ」と頑張っている姿を見せることで、みんなに勇気を与えられたら嬉しいです。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
川尻さん
記憶に多少の障害があるため、道に迷ってしまって疲れることがあります。そんな日が続くと体力的につらいと感じるときもあります。そのほか、高次脳機能障害の影響から仕事場でのミスが増えてしまいました。仕事内容を忘れないためにメモを必ずとるように気をつけています。それでも失敗してしまった場合は、必要以上に気にしすぎないように意識しています。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
川尻さん
「またサーフィンをやりたい」と思う気持ちが支えになっていました。僕の中で波乗りが頭から離れることはなかったですね。波乗りを知らない人からしたら、ただの遊びに感じると思いますが、僕にとってサーフィンは人生そのものですから。
今できることを精一杯取り組みながら今後の医学の進歩を期待する
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
川尻さん
「必ずメモをとろう。この先何があるか分からないよ」と強く助言します。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
川尻さん
現在は左手左足に脱力感のような症状があり、サーフィンでは立った状態での波乗りが難しくなってきました。そのため座った状態で波に乗れるニーボードというものに取り組んでいます。
編集部
日々の生活で意識していることはありますか?
川尻さん
自分の病気は、車いすや寝たきりの状態になる可能性もあるようなので、今できることをやろうと思っています。また、ストレスが症状の再発につながることもあるそうなので、なるべくストレスを溜めないように意識しています。完全にストレスを無くすのは難しいかもしれませんが、ストレス発散のための運動や筋トレを無理のない範囲で取り入れています。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
川尻さん
見た目からは分からないと思いますが、僕の患っている病気はわりと面倒なものです。症状がなかった時の僕と、現在は違う僕であることを理解してもらえると嬉しいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
川尻さん
多発性硬化症に関する治療は、これからも新しいものがどんどん出てくると聞きました。医療の発達によって、この病気が完治可能な病になることを切実に望んでいます。そして、その日が少しでも早く来ることを願っています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
川尻さん
僕は自分自身がこの病気になるまで多発性硬化症の存在を知りませんでした。世の中には、みんなが知らないような病気で悩む人がたくさんいることを知ってもらいたいです。
編集部まとめ
現在、多発性硬化症を完全に治す治療法は見つかっていません。しかし、医学の発展を信じ、前向きに、今できることを全力で取り組む姿は、同病ないしさまざまな病と闘う人たちに勇気を与えられるものかもしれません。医療の進歩を信じて待っている人たちがいることを、読者に知ってもらえると嬉しいです。