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【闘病】「成人スティル病」治療で使ったステロイドの副作用で「糖尿病」にも…

 公開日:2023/12/28
【闘病】手足にできた発疹から始まった 認知度の低い難病「成人スティル病」

「成人スティル病」とは、発熱や皮膚の発疹、関節症状が主な症状の炎症疾患です。症状は患者ごとに異なり、特徴的なものが少ないため除外診断(似た疾患の可能性を除外すること)が重要になります。闘病者のN.Aさん(仮称)はなかなか診断がつかず、確定診断までに1ヵ月を要したそうです。難病を抱えながら経営者として働き続けるN.Aさんに、これまでの経験を話してもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年8月取材。

N.Aさん

体験者プロフィール
N.Aさん(仮称)

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1982年生まれ、埼玉県熊谷市在住。父、母との3人暮らし。弟が1人。診断時の職業はWeb制作会社の役員。2021年11月に皮膚の発疹と39度の高熱が数週間続き、成人スティル病と診断される。現在はステロイド服用による治療を継続しながら仕事復帰している。

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

成人スティル病と診断されるまで

成人スティル病と診断されるまで

編集部編集部

まず初めに、「成人スティル病」とはどのような病気なのでしょうか?

N.AさんN.Aさん

人によって症状が違うこともありますが、私の場合は37~39度の熱が1週間以上続き、1日の中でも上がったり下がったりを繰り返していました。ほかに膝の関節が腫れ、ひどい時は歩けなくなるほど痛くなりました。また手足にピンク色や痛みを伴う赤色の皮疹が出るなど、3つの症状がありました。

編集部編集部

成人スティル病が判明した経緯を教えてください。

N.AさんN.Aさん

2021年11月に手足に皮膚の発疹が表れ、皮膚科を受診したのが始まりでした。両腕の肘から手の内側に赤いポツポツができ、両太ももは外側の付け根から膝にかけて濃いピンク色になっていました。皮膚科でははっきりとした原因はわからず、飲み薬をもらって帰りました。その翌日に高熱が出たため、今度は近くの内科を受診しました。PCR検査をし(当時コロナ禍)、陰性だったため「風邪だろう」とのことで解熱剤と漢方薬をもらって様子を見ることになりました。

編集部編集部

その後熱は下がったのでしょうか?

N.AさんN.Aさん

数日経っても熱は下がらず、蕁麻疹も悪化し、膝の関節が腫れてきました。この頃から、歩行困難な状態になっていました。処方薬を変えたり、抗生剤も飲んだりしていましたが熱は下がらず、そのうちに蕁麻疹が脚全体に広がり、痛みと熱を帯びてきたため、総合病院の皮膚科への紹介状を書いてもらいました。それが受診した3つ目の病院になります。

編集部編集部

なかなか診断がつかなかったのですね。

N.AさんN.Aさん

そうですね。最初は皮膚の症状が強く出ていたので、皮膚科を中心に受診していました。今までの経緯を話すと、ウイルスなどの感染が原因ではないかとのことで、ステロイドの塗り薬を出してもらいました。ステロイドの塗り薬は効果があり、蕁麻疹は引いてきたものの、熱は変わらずに続いていました。総合病院の皮膚科では熱の原因までは分からず、皮膚科ではない所で診てもらうことを勧められました。

編集部編集部

「皮膚科以外」と言われても困りますね。

N.AさんN.Aさん

そうなのです。結局、膠原病外来のある病院を受診することにしました。これが4つ目の病院になります。症状と血液検査の結果を見た先生から「成人スティル病」の可能性があるので、今度は大学病院で検査入院するように言われ、紹介してもらいました。5つ目となった大学病院では、2週間ほど検査入院をして、指定難病の成人スティル病と診断されました。

編集部編集部

成人スティル病はどのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

N.AさんN.Aさん

ステロイドの錠剤を服用(ステロイドの副作用を抑えるための薬も併用)で、ステロイドの服用量を少しずつ減らしながら寛解を目指しています。最終的にはステロイドを飲まないで寛解となることを目指すのですが、担当の先生からは再燃(再発)が多い病気なのでステロイドを0にするのは難しいかもしれないと言われています。万一、ステロイドを減らしていく過程で再燃してしまった場合は、ステロイドのほかに免疫抑制剤も使用していくと説明を受けました。ステロイドは病気の治療には必要な薬ですが、同時に副作用が出た場合はそちらの治療も行っていくことになります。

当たり前に過ごしてきた日常は実はすごいことだった

当たり前に過ごしてきた日常は実はすごいことだった

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

N.AさんN.Aさん

成人スティル病の判明までには時間がかかりましたし、2週間ほど検査入院もしましたので、「やっと病名がついて治療ができる」という安堵の気持ちが大きかったです。最初に熱が出てから1か月以上が経っていました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

N.AさんN.Aさん

色々ありますが、生活するうえでは成人スティル病の主な治療薬であるステロイドの副作用の影響を大きく受けています。例えば、朝早く目が覚めてしまうため朝型の生活になりました。服用する薬も多いため朝、昼、晩の薬を飲む時間にあわせて食事も規則正しく摂るようになりました。

編集部編集部

お仕事面でも大きく変化があったそうですね。

N.AさんN.Aさん

はい。仕事に復帰してからはワークスタイルが大きく変化しました。Web制作の仕事をしているのですが、午前中に集中して仕事をほぼ終わらせ、午後はペースを落とし休憩を入れながら仕事をするという形です。夜はほとんど仕事を入れず、どうしても必要な場合だけ夕食後2~3時間程度入れるか、次の日の早朝にまわすなどで調節をしています。また、仕事はほぼリモートワークになりました。コロナ禍のご時世ということもありますが(取材時)、ステロイドを服用していることにより免疫力が低下しているため、外に出ることを極力控え、自宅中心の仕事スタイルになっています。

編集部編集部

病気と向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

N.AさんN.Aさん

病気になった後は助けてくれる人の言葉や気持ちが一層温かく感じ、日々の心の支えになっています。病気のことは一人だと受け止められなかったと思いますし、大変な時も家族や周りに居てくれる人、自分を必要だと思ってくれる人がいるということが嬉しいです。感謝の気持ちを大切にしていきたいと思っています。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

N.AさんN.Aさん

「当たり前に過ごしてきた日常は実はすごいことだった」ということを伝えたいです。病気になった当初は体中が痛く階段を降りるのもやっとで、膝が曲げられなくなり一時は歩けなくなるかもと思ったこともありました。「一日一日を無事に過ごせること、これがとても大切なことなんだよ、だから家族や大切な人と過ごす時間を大切にしてほしい」と以前の自分に言いたいです。

自分の体の些細な変化、いつもと違うなと思ったら受診して欲しい

自分の体の些細な変化、いつもと違うなと思ったら受診して欲しい

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

N.AさんN.Aさん

退院してからはありがたいことに順調に治療が進んでいます。発症前と同じとはいきませんが、通勤ができる程には体力が回復しています。ステロイドは現段階で入院時から5分の1まで減り(取材時)、ステロイドが減るごとに体力が回復していくのを感じています。ステロイドの減らし方は、50mgを20mgに減らすまでは2週間で5mgずつの減薬。20mgを10mgに減らすまでは1か月で2mgずつの減薬となりました。10mgからは1mgずつの減薬になる予定です。

編集部編集部

治療のためとはいえ、ステロイドと向き合うのが大変だったようですね。

N.AさんN.Aさん

そうですね。20mgに減った時は副作用であるステロイド糖尿病と診断され、コレステロールの値が上がって薬も増えました。20mgを切ってからはステロイド糖尿病も緩和されました。ステロイドの減少と共に体調に変化があるため、体に負担がかからないよう様子を見ながら生活しています。自分の体の些細な変化も見逃さずに生活をしていきたいと思っています。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

N.AさんN.Aさん

成人スティル病に限らず、一見元気そうに見えても実は病気と闘っている人は結構います。特別扱いする必要はないのですが、一緒に仕事をする時などに配慮が必要な時もあります。もし、周りに困っている方がいたら耳を傾けてほしいと思います。また、難病は発病の理由が分かっていないことも多く、誰もがかかる可能性がある病気です。発熱や蕁麻疹などよくある症状だからといって油断せず、ちょっと変だな、いつもと違うなと思ったらすぐに病院へ行って検査をしてほしいです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

N.AさんN.Aさん

症状が落ち着き、こうしていられるのも医療従事者の方のお陰だと思っています。治療によって落ち着いた状態を保てていることに、まずは感謝の気持ちです。まだ解明されていないことが多い病気ですが、今後少しでも患者さんの明るい未来が広がっていくように治療が進歩していくことを願っています。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

N.AさんN.Aさん

大変な時もありますが病気にばかり目を向け過ぎず、一人の人間として何がしたいか、どう生きていきたいかを考えていくことが大切だと感じています。また、病気を持っていても社会と繋がれる場、自分の能力を活かして活躍できる場、あきらめずにやりたいことができる環境を作っていくことが必要と考えています。私は会社を経営していますが、難病当事者でもあるため、これからも働き続けることでひとつの例として実現していきたいと思っています。

編集部まとめ

闘病しながら仕事を続けていくことは、私たちが想像するよりも遥かに大変なことと思います。病気になってしまったからと後ろ向きになるのではなく、今後どう生きていきたいかを考え、自分が輝ける場を探し、その環境作りもしっかり行っているN.Aさんのお話からは生きるパワーを感じました。そして、N.Aさんがおっしゃるように、少しでも自分の身体に違和感を感じたら病院を受診することが大切だと実感しました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師