【闘病】再び増えてきた「新型コロナ」感染者 娘の入学式を台無しにした当時の記憶
2023年・夏を迎え、再び「感染者数」の増加を伝える報道も見受けられるようになった新型コロナウイルス感染症。5類感染症に移行したとはいえ、できれば感染しないにこしたことはありません。とはいえ、感染を防ぐことに限界があるのも事実です。そこで過去のものとなりつつあるコロナ禍の状況を振り返るべく、3児の母という立場で新型コロナウイルスに感染したあおきさん(仮称)に、当時の話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年8月取材。
体験者プロフィール:
あおき こと(仮称)
1980年生まれ。北海道在住。3人の子育てをしながらフリーランスとして主にママ向けセミナーや保育士向けの研修を開催している。2022年に絵本を出版した。
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
発熱、そこからあっという間に41度に
編集部
最初に不調や違和感を感じたのはいつですか?
あおきさん
2022年の2月末です。身体が重く感じられ、なんとなく「熱が上がりそう」という感じがありましたが、熱を計っても平熱でした。風邪の場合、普段ならそこから半日ほどで実際に熱が出ていましたが、今回はそれが3~4日ほど続きました。娘の卒業式の前でもあったため、発熱外来に行かなければと思っていましたが、その時点で既に体調がものすごく悪くなっており、熱もあっという間に41度まで上がっていました。
編集部
受診から診断に至るまでの経緯を教えてください。
あおきさん
診てもらえる医療機関が見つからず、受診までがとにかく大変でした。オンライン診察や完全予約制のところが多く、すぐに診てもらえる所を探すのに時間がかかりました。体調が悪い中で、あちこちに問い合わせをするのはとてもしんどい作業で、本当にきつかったです。私が住んでいるのは県庁所在地でもあり、病院もたくさんある人口100万人以上の都市ですが、それでも「こんなに大変なんだ……」と驚きました。
編集部
その日の内に受診できる病院は見つかったのですか?
あおきさん
はい。やっとの想いで「その日の午後なら予約が受けられる」という病院を予約し、自分で車を運転して病院に行きました。駐車場で待機、その後の検査、診断も含め、全てが車に乗ったままのいわゆる「ドライブスルー診察」でした。その結果、「陽性です」と伝えられました。
編集部
新型コロナウイルス感染症ということでしょうか?
あおきさん
はい。何株なのかといった細かいことは診断していないようで、私にもわかりませんでした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
あおきさん
解熱剤を処方されました。報道されていた通り、新型コロナウイルス感染症には特効薬などはなかったため、そのほかに治療法もなく、自宅待機もしくは入院して療養し、保健所からの連絡を待ってくださいとのことでした。
娘の入学式を親子で欠席
編集部
新型コロナウイルスへの感染が発覚したときの心境について教えてください。
あおきさん
近々の仕事や子どものことなどが心配になりました。私はセミナー講師をしていて、講演の予定もありましたので、隔離期間のことも気がかりでした。誰かに変わってもらえるものでもありませんので、オンラインに切り替えてもらってなんとか対応しましたが、体調が悪い中、関係各所に連絡をしなければならないのは本当に大変でした。治療は入院せずに自宅療養にしましたが、だからと言って子どもと普段通り一緒に過ごせるわけではありません。また、娘の中学校の入学式を控えていたので、この先どうなるのだろうと心配でした。
編集部
娘さんの入学式はどうしたのですか?
あおきさん
隔離期間を計算したところ、入学式には出られないことがわかりました。私だけではなく、娘自身も「濃厚接触者」となったため、彼女も自分の入学式を欠席しなければならなくなりました。娘にどうやって伝えるか、それに当たって娘の心のケアをどうするかなども考えるのが辛かったですね。
編集部
それはショックでしたね。娘さんの反応は?
あおきさん
「入学式に参加できない」と伝えた時、娘は声を出さずに大粒の涙を流していました。申し訳なくて、私も泣いてしまいました。
編集部
感染するまでを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
あおきさん
「どこでうつされてしまったんだろう」「もっと感染対策をしていれば」と思ったこともありましたが、当時は自分なりにマスクや消毒など出来ることはすべてやっていましたので、仕方がなかったのだと今では思っています。
編集部
その後の娘さんはどうでしたか?
あおきさん
娘が祖母(あおきさんの母)に、「入学式には参加出来ないけど、落ち込まずに頑張るね。これはこれで、心に刻まれると思っています」とメールしていました。起きない方が良いことはたくさんありますが、全てを避けることはできません。起きた時にどう捉えるかが大事なのだと思いました。
支援物資が届かない
編集部
治療や闘病生活の中で、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
あおきさん
買い物にも行けない中、支援物資が全く届かず困りました。隔離期間が明けてから届き始めたので、ほとんど意味がありませんでした。関係各所の方々はお忙しいとは思いますが、これではやむを得ず買い物に出かけてしまう感染者がいても仕方がないのではないかと思いました。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
あおきさん
熱が下がってからしばらくは体力も落ちて疲れやすかったりしましたが、現在は体調も戻り、幸いなことに味覚障がいなどの後遺症もありません。今まで通りの生活ができています。
編集部
コロナ感染の前後で変化したことを教えてください。
あおきさん
先ほどの支援物資の件があったので、非常時の際の備蓄を気にするようになりました。あとはもちろん、感染についてはこれまで以上に意識して対策をするようになりました。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
あおきさん
発熱外来を調べてあちこち電話したときは、多くの医療機関に断られて辟易しましたが、実際にドライブスルー検査・診療などを経験してみると「こんなにも大変なことをしているか」と驚きました。お忙しい中、そして自分たちにも感染リスクがある中、こんなにも社会のために頑張ってくれているのだと感謝の気持ちでいっぱいでした。ありがとうございました。
編集部まとめ
通常「闘病」というと、医療機関と患者とで進める場合が多いですが、新型コロナウイルス感染症に関しては当時、「医療機関」「保健所」「行政」など、さまざまな機関と関わりながら行われている状態だったようです。「診てくれる病院がない」「支援物資も届かない」という中、この経験を前向きに捉え、「こんなにも大変なのか」「こんなにも社会のために頑張ってくれている」と、医療機関への感謝の気持ちを伝えてくれました。再び感染者の増加傾向に見られる中、あおきさんの談話が何かの役に立てば幸いです。