【闘病】「娘を一人にしたくない」46歳で“乳がん”になり全摘出。もっと早く検査を受けるべきだった…
「乳がん」は身近な病気で、今や9人に1人が乳がんになるといわれています。特に40~50代の女性のがんによる死亡原因では一位であり、早期発見・早期治療が必要不可欠です。今回お話を聞いたK.Sさんは、40歳のときに行ったマンモグラフィ検査で石灰化の病変が発覚、46歳で乳がんと診断されたそうです。「受験を控えた娘さんに遺伝してしまうのではないか」など不安は絶えませんでした。そこで今回は、乳がんの発覚から現在に至るまでお話していただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年5月取材。
体験者プロフィール:
K.Sさん(仮称)
1974年生まれ、宮城県仙台市在住。娘と2人暮らし。診断時は会社の経理事務。2020年6月に乳がんが発覚し、2020年8月に左胸全摘手術を受ける。非浸潤性乳管がんの0期だったので、投薬などはなし。体調の波があるので、無理のない範囲でメリハリをつけて仕事を続ける。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
自己検診で前兆を察知、46歳で乳がんを発見
編集部
病気が判明した経緯を教えてください。
K.Sさん
40歳の時、初めて会社の検診でマンモグラフィ検査を受けたのですが、その際に石灰化(2~5mm)の病変があると分かり、医療センターで年に一度経過を診てもらっていました。2年経過して病変の大きさが変わらないということで、医療センターからクリニックに変更して年に一度検査をしていました。乳がんが分かったのは46歳のときです。その時までは細胞診を半年に一度していましたが、不安を感じて大学病院を紹介してもらい、大学病院のマンモトーム生検にて乳がんであると診断されました。
編集部
診断される前に、なにか前兆などはあったのでしょうか?
K.Sさん
判明する2年前から、体の怠さや生理前の胸の張りが異常に強くありました。それと、1年前に自己検診をしていた時に、乳首からの出血、分泌物があり、不安を感じたことを覚えています。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
K.Sさん
大学病院の医師からは、「この広がり(約7cm)ががんなら、乳房の全摘出。がんの種類に合わせて治療を進めます」と説明がありました。検査の結果私のがんのタイプはルミナルAタイプ(増殖能力が低いホルモン受容体陽性乳がん)だったので、まずは手術をしましょうと言われました。
編集部
手術後はいかがでしたか?
K.Sさん
「手術をして浸潤が分かったら、投薬や放射線治療、標準治療をします」と説明を受けましたが、手術の結果「非浸潤性乳管がんの0期」と診断されたので、経過観察を続けています。術後1年間は大学病院、その後はクリニックにて5年間、半年に一度の経過観察を受けて、6年目からは年に一度の経過観察に切り替えることになっています。
娘への遺伝の不安。手術後は腕が上がらず日常生活にも影響
編集部
「乳がん」だと判明したときの心境について教えてください。
K.Sさん
40歳の時のマンモグラフィ検査から6年、ある程度覚悟していたので、「やっぱりか」と冷静に受け止めました。ただ娘に遺伝しないか? 一人残してしまうのではないか?という不安がひたすら襲ってきましたね。
編集部
娘さんには病気のことをどのように伝えましたか?
K.Sさん
「乳がん」だと確定診断されてから、娘には伝えました。乳がんが判明した年には娘の受験もあったので、自分が闘病中どのように受験期を乗り越えるか2人で話し合いました。学校の先生にも協力してもらい、受験前の娘の精神的な支えになってもらえたんです。担任の先生や部活の先生にはとても感謝しています。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
K.Sさん
免疫力が下がったせいで、カンジダ食道炎などになりました。そして、当時はコロナ渦でしたので、コロナなど感染症にも過敏に反応していました。
編集部
日常生活を送る上で困ったことなどありましたか?
K.Sさん
乳房を全摘出をすると、摘出した側の腕が上がらなくなるんです。先生からリハビリをすすめられ、術前の腕の状態へ戻すまで3カ月以上かかりました。手術する場所が利き手側の場合は、手術する前に利き手とは逆側の腕・手を上手に使えるようにしていた方がよいと思います。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものはなんでしたか?
K.Sさん
周りの支えや娘の成長、愛犬の癒やしや同じ乳がんの方と前向きな話ができることが、私の支えになっております。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
K.Sさん
40歳のマンモグラフィ検査を待たず、若い時にエコー検査や定期検診を受けるべきでした。がんになってからさまざまな情報や本を読みましたが、やっぱり「自分は大丈夫」と過信しなければ良かったと反省しています。
乳がんは他人事ではない。もしかしたら? と思ったらすぐに病院へいくことの重要性
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
K.Sさん
幸いにも乳がんの薬の服用はありません。実は30歳のときに子宮筋腫が見つかり、月経痛がひどくて薬を服用していましたが、それもひどくなってきたので乳がんの手術の翌年に卵巣(左)と子宮も全摘出しています。そのせいか体調に波もありましたが、最近は上手く付き合えるようになってきました。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
K.Sさん
私もそうでしたが、「もしかしたら?」と思った時に病気の可能性をそのままにするのではなく、医療機関を受診するようにしましょう。少しでもいいから乳がんの情報を知ってほしいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
K.Sさん
どこの病院の先生も一緒に病気について考えてくれましたし、女性疾病のデリケートなことをとても理解してくれていました。ただ、優しい言葉をかけてもらえるのは心強いですが、ただの流れ作業のようにしてほしくないなとは思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
K.Sさん
私のようにしこりがない乳がんは0期でも範囲が広く全摘手術になりました。乳がんは他人事ではありません。若い方にも普段から女性特有の疾病の情報に興味を持ち、自分自身の身体と向き合ってほしいと思います。
編集部まとめ
しこりがなく、乳管がんの0期でも全摘出となったK.Sさん。症状がないと気付きにくいため「自分は大丈夫」と思われるかもしれませんが、K.Sさんがおっしゃるように女性特有の疾病に興味を持ち、自分の身体を向き合うことが大切だと実感しました。子どもや家族など大切な人がいるからこそ、自身の健康をしっかり守っていくことが重要です。乳がんは自己診断や定期検診によって早期発見・早期治療も可能ですので、意識しておく必要がありそうです。