カルシウム剤の副作用とは? 過剰摂取による弊害を薬剤師が解説
「現代人はカルシウムが不足しがちで、食事だけでは足りないと聞くけど、カルシウム剤で補った方がいいのかな? でも薬だから副作用とか大丈夫?」そんな心配はありませんか。そこでカルシウム剤の副作用や注意点、過剰摂取した際の弊害などについて、薬剤師の上野さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
上野 園子(薬剤師)
カルシウムの働きとは カルシウム剤で補うことはできるのか
編集部
カルシウムというと骨のイメージですが、どのような働きをしているのですか?
上野さん
カルシウムは、身体の中に最も多く含まれるミネラルです。99%が骨や歯をつくる成分として、残りの約1%が筋肉や血液、臓器の中に存在しています。骨や歯以外の部分に存在するカルシウムは、心臓の収縮に作用したり、血液を固まりやすくして出血を防いだり、神経や筋肉の働きにも関わっています。
編集部
カルシウムが不足すると、どうなりますか?
上野さん
継続的に血中のカルシウムが不足してしまうと、骨からカルシウムが流れ出て、次第に骨が弱くなり、骨粗しょう症につながるリスクがあります。転倒した時に骨折しやすくなったり、腰痛などを起こしたりすることがあります。
編集部
カルシウムは、1日にどのくらいの摂取量が必要なのですか?
上野さん
編集部
カルシウム剤でカルシウムの不足は補えるのでしょうか?
上野さん
健康な成人の場合、まずは食事からの摂取が理想です。カルシウムは牛乳など乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、骨ごと食べられる小魚、わかめ・のりなどの海草類、小松菜やちんげん菜などの緑黄野菜に多く含まれます。特に牛乳など乳製品は、ほかの食品よりも吸収率が高く、効率的にカルシウムをとることができます。しかし、個々のライフスタイルに応じて、食事で不足を感じることもあると思います。そういう時は、カルシウム剤も選択肢の1つでしょう。
カルシウム剤の過剰摂取の危険性について
編集部
薬局で購入したカルシウム剤を飲んでもいいのでしょうか?
上野さん
薬局で購入できるカルシウム剤には、ビタミンDやマグネシウムなどその他さまざまな成分が含まれていることがあり、個々のお悩みに合わせて選ぶことができます。まずはバランスのよい食生活を心がけていただいた上で、うまく取り入れてみましょう。続けやすい価格帯で、錠剤、チュアブルなど飲みやすいものを選ぶことでいいと思いますが、選択に悩む場合は、薬剤師に相談してみてください。
編集部
カルシウム剤を飲むときに注意することはありますか?
上野さん
カルシウムは、たくさん摂ればいいというわけではありません。取りすぎには注意が必要です。耐性上限量は、18歳以上の男女ともに、1日2500mgと設定されています。過剰に摂取すると、胃がむかむかしたり便秘になったりします。また血中に必要以上にカルシウムが蓄積すると、高カルシウム血症になることもあります。
編集部
高カルシウム血症とはどんな状態ですか?
上野さん
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が非常に高い状態をいい、普通の血液検査でわかります。初期には胸やけ、のどの渇き、尿の量が増えるなどの症状がみられ、重症化すると、昏睡にいたることもあります。カルシウムは、心臓の収縮にも関与しているので、発見が遅れると命にかかわることもあり、とても危険です。
編集部
高カルシウム血症に治療法はあるのでしょうか?
上野さん
原因がカルシウム剤の過剰摂取であれば、服薬をやめるだけで十分なケースがほとんどです。軽度の高カルシウム血症の人や腎機能が正常であれば、水分を十分とるよう指導されます。水分は腎臓を刺激しカルシウムを排出させるだけでなく、脱水の予防にも役立ちます。カルシウムの値が非常に高くて、腎機能が正常である場合は、水分と利尿薬を点滴することもあります。
編集部
高カルシウム血症にならないために、何に気を付けたらいいでしょうか?
上野さん
まずは、製品の説明書に記載された用法・用量をしっかり守ることです。正しく使えば、問題になるケースはまれです。ただ、腎臓が悪いといわれ医師から指摘されている人は注意が必要です。そのほか、消化性潰瘍の人が痛みを和らげるために、大量の牛乳を飲み、カルシウムを含む制酸薬を服用すると、高カルシウム血症になるケースがあります。持病のある場合やほかに薬を服用している場合は、カルシウム剤を服用する前に、医師や薬剤師に相談されると安心です。
カルシウム剤の正しい服用方法について
編集部
カルシウム剤は1日に何回飲むのがいいでしょうか?
上野さん
カルシウム剤は、消化吸収率が高くなく、1回に吸収できる量が決まっています。1度にたくさん飲むのではなく、毎食にこまめに入れる方が効果的です。
編集部
食事の影響はありますか?
上野さん
食後すぐに摂取すると、胃酸を中和してしまい、胃もたれや消化不良をおこすこともあります。食事前や就寝前など、食後の2~3時間は避けて飲むようにしましょう。特に就寝中は成長ホルモンが優位で、骨が積極的に作られる時間帯ですので、就寝前の摂取がおすすめです。また、リン、食塩、カフェイン、アルコールはカルシウムの吸収を阻害するので、加工食品を過剰に摂取することはひかえることが理想的です。
編集部
ほかに薬を飲んでいる時は、カルシウムの摂取は避けた方がいいですか?
上野さん
全てのお薬について避ける必要はありませんが、一部のお薬で気を付ける必要があります。強心薬という心臓のお薬は、カルシウム剤を併用すると効果が強まり、副作用がでてしまう可能性があります。また、一部の抗菌薬(テトラサイクリン系、ニューキノロン系)や骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート製剤)は、カルシウムが吸収を低下させて、効き目を弱くしてしまう可能性があります。ほかに薬を飲まれている場合は、事前に医師や薬剤師に確認しておくと安心ですね。
編集部まとめ
食事のカルシウム不足をカルシウム剤で補うのは有効ですが、過剰摂取には気を付けないといけないことがわかりました。使用時には用法・用量を守り、わからないことがあったら、医師、薬剤師に相談するようにしましょう。