【体験談】すでにステージIIIになっていた「乳がん」 胸の違和感から発覚
闘病者の新井美和子さんは、2019 年に自身で胸の違和感に気付き、人間ドックを受けました。その結果、右胸に乳がんが見つかり、すでにステージIIIAの状態だったそうです。 抗がん剤治療のあと、同年に右胸を全摘出。 治療では何度となく心が折れたそうです。 今回は、自身でがんに気づき、乗り越えてきた過程について、新井さんに話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。
体験者プロフィール:
新井 美和子
静岡県在住。1971年生まれ。夫、娘、双子の息子との5人家族。診断時は、パートで事務職をしていた。2019年に人間ドックで乳がんが見つかる。右胸を全摘出し、涙することもあった。趣味の一環で、乳がんパッドを作成したところ、がんサバイバーの目にとまり、現在も作成し続けている。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
違和感から勇気を持って人間ドックへ
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
新井さん
自分で「怪しいな」と感じたのがきっかけです。この際だから全部見てもらうつもりで、人間ドックを受けました。するとそこで、右胸にしこりがあり、乳がんが見つかりました。人間ドックを受けた機関が、たまたま近所で有名な病院の系列だったので、そのまま系列病院の乳腺科を受診しました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
新井さん
ステージIIIAだったので、抗がん剤治療、右胸全摘出術をおこない、その後は病理検査の結果次第だと説明を受けました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
新井さん
肺がんで父を亡くした過去がありますので、自分の死も考えました。「まだ死にたくない。まだやり残したことがある」と病院の帰りに号泣したのをいまだに覚えています。
編集部
乳がん発症後、生活にどのような変化がありましたか?
新井さん
これといって変わらなかったですね。元々が丈夫なのか、抗がん剤治療時も副作用が少なく、普通にパートに行っていました。ただ、疲れやすく、全く体が動かないときがありました。その時は、子どもたちが、家事を分担して手伝ってくれたので助かりました。
がんの治療方法
編集部
入院や治療の内容を教えてください。
新井さん
2019年8月に抗がん剤AC療法を開始しました。同年10月パクリタキセル(PTX)療法を開始して、同年12月には、右胸全摘出手術を受けました。2020年1月から、経口抗がん剤・カペシタビンの服用を開始しました。翌月2月から3月にかけて放射線治療をおこない、5月にはカペシタビンの服用は終了となったのです。同年6月から、現在にかけては、ホルモン療法のタモキシフェンを服用中です。
編集部
AC療法とはどんな治療ですか?
新井さん
AC療法は、アドリアマイシンとシクロホスファミドという2種類の抗がん剤を組み合わせた治療です。頭文字をとって「AC」と呼ぶようです。
編集部
治療中の心の支えはありましたか?
新井さん
家族と友人ですね。あとは、嵐と関ジャニ∞が好きなので、2組のテレビや音楽を見て、元気をもらいました。ほかにも、ドラマや映画を見て、日々過ごしていました。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
新井さん
抗がん剤治療を終えてから2 年ぐらい経ちますが、未だに足のしびれが若干残っています。その他は、治療中であることを忘れてしまうぐらい罹患前と変わりなく過ごしています。そんな中でも、たまたま趣味の一環で作った「乳がんパッド」(写真)が知人の乳がんサバイバーの目にとまり、「私にも作って」と依頼を受け、現在も制作をおこなっています。
早期発見や早期治療の認識を広めたい
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
新井さん
助言はしないかもしれませんね。ただ寄り添って話を聞くと思います。「私でよければ話しを聞くから」と。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
新井さん
乳がんは、自分で見つけられる可能性があるがんです。早期発見、早期治療が大事なので、普段から意識を向けて欲しいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
新井さん
コロナ禍なので仕方がないのですが、入院中など同病の方との交流や情報交換の機会が少なかったと感じています。私は、 SNSを利用していますが、先輩サバイバーさんの中には、ネットをうまく利用していない人も多いですから、そういった方々のために細かな情報提供をお願いしたいです。「お医者さんや看護師さんは忙しそうだからお話を聞いてもらえない」という声もあります。もちろん、相談窓口があるとは思いますが、もう少し相談しやすくなるといいなと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
新井さん
罹患したからといって人生終わりではないと私は思っています。一度きりの人生です。前向きにいい気分で日々過ごしていきましょう。私はがんになってから、家族や友人が元気で笑って過ごしていると、自分も嬉しい気持ちになるということに気付かされました。周りの人たちに感謝をしながら「一人でも多くの乳がんサバイバーの方の力になりたい」そんな思いで日々「乳がんパッド」製作しています。
編集部まとめ
新井さんは自身で気づき、勇気をもって人間ドックを受けた結果、診断・治療につながりました。乳がんは、自分で気がつくこともあるがんです。異変を感じたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。また、監修医師からは「何か自覚症状を感じた場合、検診や人間ドックではなく、病院やクリニックなどの医療機関を受診することをお勧めしています。そうでない時に、定期的に受けるのが検診や人間ドックです。これは乳がんに限った話ではありませんが、うまく使い分けることをお勧めしています」とコメントをいただきました。