顔の赤みの原因・治療法を皮膚科専門医が解説、引かない場合はどんな疾患が考えられる?
「顔の赤みが引かなくて困った……」ということはありませんか。とくに多いのが、口周りの赤み。突然、カサカサやぶつぶつができて「どのように対処したらいのかわからない」「このまま治らなかったらどうしよう」と不安に感じることもあるでしょう。その場合、どうしたらいいのでしょうか。今回は、顔の赤みの原因や治療法について「恵比寿駅前皮膚科」の山藤先生に解説していただきました。
監修医師:
山藤 千草(恵比寿駅前皮膚科)
顔の赤みの原因は?
編集部
顔の赤みが治らないときがあります。何が原因なのでしょうか?
山藤先生
まず、治りにくい顔の赤みとしては、「湿疹」や「かぶれ」、「感染症」などが考えられます。実際のところ、これらが大半を占めています。また、かゆみなどの症状の少ないものとしては、「脂漏性皮膚炎」や「乾癬(かんせん)」のような慢性的に経過する病気もありますし、「膠原病」や「酒さ」、「血管腫」など、考慮すべき疾患は広範囲にわたります。
編集部
顔に赤みが出るというなかでも、口の周りに赤みが出る場合はいかがでしょうか?
山藤先生
たしかに、口周りの赤みに悩んでいらっしゃる人は多いですね。まず原因として考えられるのが、かぶれです。女性なら口紅やリップクリームなど、化粧品がかぶれの原因になっていることもありますし、歯磨き粉などの日常的に使用しているものが、知らず知らずのうちにかぶれを引き起こしていることもあります。それから、特定の果物を食べた後にかぶれが出るというケースもありますね。
編集部
その場合、どのように対処するのですか?
山藤先生
まずはステロイドを使用します。それと同時に、化粧品や日用品などのかぶれの原因となっているものを特定することができれば、使用を中止していただきます。
編集部
かぶれ以外に、口周りに赤みが出ることもあるのですか?
山藤先生
例えば、カンジダ菌などのカビによって口周りの赤みが出ることがあります。カンジダ菌は常在菌の一種で、健康な人にも存在している菌ですが、体調が悪かったり、免疫力が低下していたり、ホルモンバランスが崩れていたりすると増殖して悪さを始めることがあります。病変部を擦ってカンジダ菌を検査で検出できれば、カビによる症状であることが判明します。この場合には抗真菌薬で治療します。
「口囲皮膚炎」とは
編集部
かぶれでもなく、カビでもないという場合は、どのような原因が考えられるのですか?
山藤先生
赤くなったり、カサカサしたり、ぶつぶつができたりするけれど、どうみてもニキビではない、という場合には、「口囲皮膚炎」や「酒さ」、「酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)」などを疑います。口囲に症状が限局してある場合は、とくに口囲皮膚炎を疑います。
編集部
口囲皮膚炎とは、どのような疾患ですか?
山藤先生
鼻の付け根からほうれい線にかけて、唇から少し離れたところが赤くなるのが特徴です。なかにはあごのあたりが赤くなる人もいますが、専門医が診察すれば、口囲皮膚炎を見分けることができます。しかし、一般の人は湿疹と勘違いしやすく、とくにかゆみを伴う場合は湿疹やかぶれと間違いやすいので注意が必要です。
編集部
口囲皮膚炎の原因はなんですか?
山藤先生
実際のところ、口囲皮膚炎の原因は、まだ判明していません。酒さという持続性の皮膚の疾患を持っている人は、口囲皮膚炎になりやすいとも言われています。発症要因は、まだ明確にされていませんが、悪化要因には様々なものがあります。例えば、長時間、日光に当たることや、常在菌のバランスの乱れが原因になって症状が悪化することもあります。
編集部
悪化要因には、ほかにどのようなものがあるのですか?
山藤先生
細菌感染や毛包虫の感染によって生じることもあります。毛包虫とは、いわゆる「ニキビダニ」のことで、人間の皮膚にある毛包のなかに常在しているダニです。ニキビダニが大量に増殖することで、口囲皮膚炎が悪化することもあります。それから、生理中や妊娠中にホルモンバランスが乱れ、抵抗力が落ちたことが原因で悪化する人もいます。
編集部
様々な原因が考えられるのですね。
山藤先生
はい。最近では、ピーリングやダーマペンなどの施術を受けた人が、強い刺激を受けたために口囲皮膚炎を発症するケースも増えています。ただし、これらは発症の誘因や悪化の要因となるものであり、根本的な発症の原因はまだわかっていません。
口囲皮膚炎の治療
編集部
口囲皮膚炎は、どのように治療するのでしょうか?
山藤先生
通常は抗生物質の内服をしながら、メトロニダゾールなどの外用薬を塗っていただきます。ほてり感が強い人には漢方薬を併用していただくこともあります。症状にもよりますが、たいてい1カ月くらい治療すると、症状が軽くなってくると思います。
編集部
自然治癒しないのですか?
山藤先生
もちろん、自然治癒することもあります。肌の状態が整ってくれば自然と治ることもあるので、通院が不要なケースもあります。ただし、酒さがベースにある人は、症状を繰り返すことがあるので注意が必要です。
編集部
ほかにも、口囲皮膚炎の治療で気をつけることはありますか?
山藤先生
気をつけていただきたいのが、ステロイドの使用です。初期症状では、かぶれなどとの区別がつきにくいため、ステロイドの塗り薬を処方されることがあります。たしかに、ステロイドには血管の収縮作用があるため、一時的に赤みは引きます。ところが、ステロイドを長く使用すると、深刻な口囲皮膚炎を発症させてしまうことがありますし、そもそもステロイドには口囲皮膚炎を根本的に治療する効果はありません。また、ステロイドを使い続けているとその一時的な赤みが引きにくくなり、強力なステロイドでなければ効かなくなってしまいます。
編集部
たしかに、ステロイドの危険性を耳にすることがあります。
山藤先生
必ずしも、ステロイドが危険なわけではありません。ステロイドは医師の指示を守って正しく使用すれば、非常に有効な薬です。とくに、通常の湿疹やかぶれはステロイドを使用しないと、反対に症状がどんどん悪化してしまうこともあります。
編集部
ステロイドの使用について、どのように考えればいいのでしょうか?
山藤先生
大切なことは、医師の指示を守り、正しく使用するということです。口囲皮膚炎に限って言えば、ステロイドの使用は中止していただきます。ステロイドの使用を中止すると、一時的には症状が悪化するリバウンドが起きることがあります。しかし、一時的なリバウンドのあと、3週間~3カ月程度で症状は改善していきます。リバウンドの時期は症状が悪化してとてもつらいので、ぜひ皮膚科を定期的に受診してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山藤先生
口囲周囲炎の治療は、ステロイドのリバウンド時期に非常につらい思いをされている患者さんも多くいらっしゃると思います。しかし、そんなときこそ、ぜひ頻回に受診していただきたいと思います。当院にもそういう患者さんが多くいらっしゃいますが、頑張ってステロイドの使用を中止して症状がよくなると、患者さんも私もまるで同志のように喜びを分かち合います。つらいときは、ぜひ専門医を頼ってください。また、今回お話ししたように、顔の赤みの原因は口囲皮膚炎だけでなく、様々な原因があります。スムーズに治療を進めるためにも、口周りの赤みで困っている人は、一度、専門医を受診することをおすすめします。
編集部まとめ
顔は最も人の目に触れる部位であるため、赤みは速やかに消したいものですね。そのためには、専門医による診察を受けて、適切な治療を始めることが肝心です。自己判断で薬を使用すると、かえって悪化してしまうこともあるとのことでした。異常に気づいたら、できるだけ早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-9-4 メディカル恵比寿ビル 2F |
アクセス | JR・東京メトロ「恵比寿駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科 |