【闘病】筋力が低下していく病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)と共に生きる(1/2ページ)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足の筋肉や呼吸に関係する筋肉が徐々にやせ、力がなくなっていく病気です。筋肉を動かす神経だけが障害を受け、脳からの命令が筋肉に伝わらないことで筋力が低下し、やせていくそうです。まだ、治療法が確立されていない指定難病・ALSと闘うまきさん(仮称)に、詳しい話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年2月取材。

体験者プロフィール:
まきさん(仮称)
愛知県在住。診断時職業は会社員。2020年に右手の指のこわばりに違和感を感じ始め、右手のむくみと右肩の痛みが現れたため整形外科を受診。肩は五十肩と診断されたが、手の指のこわばりは原因不明のため大学病院の「手の外科」と脳神経内科を受診する。2021年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断を受ける。その後ラジカット点滴とリルテックを服用して治療中。現在、仕事は在宅での短時間勤務に切り替え、リハビリや針治療などもおこなっている。

記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
右手の小指が真っ直ぐ伸びない

編集部
病気に気づくきっかけとなる症状や出来事を教えてください。
まきさん
ある時、右手の小指が真っ直ぐ伸びなくなり、「これはなんだろう?」と思っていました。ですが、特に深刻には受け止めておらず、しばらくそのままにしていました。
編集部
最初は病院には行かなかったのですね。
まきさん
はい。その後、肩の痛みがひどくなって整形外科を受診しました。その時に、手のむくみと右小指の違和感を伝えたところ、肩は五十肩で、手は少し炎症を起こしているとのことで、痛み止めと湿布をもらいました。その後、接骨院に通ったところ、そこで「肩が治れば指や手のむくみも治ってくるだろう」と言われていました。やがて、肩は良くなったものの、手は一向に良くなりませんでした。
編集部
それは心配になってきますよね。
まきさん
そこで別の整形外科を受診しました。手のひらの筋肉がかなり痩せていると言われ、大学病院の「手の外科」を紹介されました。言われるまま手の外科で診察を受けたところ、神経の病気の可能性があるので、脳神経内科の受診を勧められました。
編集部
脳神経内科ではどのような話がありました?
まきさん
脳神経内科では、神経の伝達がうまくできているかを調べる「筋電図検査」を受けることになり、そこで出た診断結果が筋萎縮性側索硬化症(ALS)でした。難病であり、治療法もまだ確立していないと説明されました。
編集部
病気が判明した時、どのような心境でしたか?
まきさん
まず、娘のことを考えました。私はシングルマザーなので、私がいなくなってしまったら娘が一人ぼっちになってしまうと思うと、娘に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。それと同時にこの病気になったのが娘や大切な家族でなく、私で良かったとも思いました。
編集部
家族や周囲の反応はどうでしたか?
まきさん
娘とは抱き合って一緒に泣きました。「お母さんはこんなに元気だし、絶対に大丈夫だから」と笑って伝えたら、娘も笑顔になってくれました。
まずは医療補助制度の申請から

編集部
どのように治療を進めると説明されましたか?
まきさん
治療には経済的負担も大きいので、まず利用できる医療補助制度の申請手続きを、ソーシャルワーカーさんと一緒に進めるようにアドバイスされました。申請が下りたらすぐにALS治療薬の服用を開始すると言われました。
編集部
どのような薬を使いましたか? 薬による副作用はありましたか?
まきさん
リルテックの内服とラジカットの点滴治療のほかには、肩などの痛みがひどい時に鎮痛剤を使いました。幸い副作用はありませんでしたね。
編集部
入院も経験されたそうですが、どのような気持ちでしたか?
まきさん
初回のラジカット点滴治療は、2週間の入院を伴いました。ほかの患者さんとお話しする中で、皆さん大変な病気でも明るく前向きに頑張っている姿に、私も勇気をもらえました。落ち込んではいられない、笑顔で頑張ろうと思えました。
編集部
病気の情報収集はされましたか?
まきさん
私自身はインターネットで調べていました。初めの頃は、体験談などもよく見ていました。 参考になる部分もありましたが、自分の病気がこんなふうに進行していくと思うと、怖くなりましたね。また、姉が関連書籍を購入したり、情報収集をしてくれたりしました。介護保険や医療保険など、利用できる様々な制度の仕組みが複雑で、きちんとした情報を得るのに少し苦労しました。



