〜実録・闘病体験〜 バストケアを数カ月しなかった間に大きなしこりが… 《乳がん》
日本人の2人に1人が「がん」と診断されている現在、女性のがん罹患率ナンバーワンと言われているのが「乳がん」です。闘病者のりんりんさん(仮称)は、ある日突然、胸のしこりに気づき、「乳がん」と診断されました。いままで当たり前だった日常が変わってしまった中で、どのように「がん」と向き合ったのか、そして「乳がん」を意識していない人にこそ伝えたいメッセージなどを聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。
体験者プロフィール:
りんりんさん(仮称)
世田谷区在住の1987年生まれ。一児の母でもある。32歳のときに胸のしこりをみつけたことをきっかけに乳がんの診断を受け、現在も大学病院にてホルモン療法を続けている。専業主婦をしており、自分の治療してきたことや、現在行っているホルモン療法についてInstagramで発信している。
記事監修医師:
楯 直晃(宮本内科小児科医院 副院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
初めは胸のしこりだった…
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
りんりんさん
普段からバストクリームでケアをしていたのですが、たまたまそれを数カ月していない時があって、久しぶりにバストクリームでマッサージをしたところ、左胸にしこりがあることに気づきました。かなり大きなしこりだったので、すぐに近くの病院を受診しました。
編集部
すぐに乳がんだと判明したのですか?
りんりんさん
エコー検査を受けたものの、原因が分からなかったので、乳腺専門のクリニック(ブレストクリニック)を紹介してもらいました。その病院を受診したところ、針生検を受けることになり、その結果、乳がんの診断となりました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
りんりんさん
ブレストクリニックでは、部分切除で済むのではないかということでしたが、大学病院でいろいろと検査を受けたところ、悪性度も高く、腫瘍も大きかったので、乳房全摘術で進めるという方針になりました。
「乳がん」と診断され、変わってしまう日常。治療による辛い副作用、そして心の支えとなったものとは?
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
りんりんさん
まさかがんと言われるなんて思ってもいなかったので、やはりショックでした。今後どんな治療をしていくのか不安で、乳がんの診療ガイドラインを買って、自分でわからないことは主治医にいろいろ聞いてたくさんメモをとりました。なによりも最初は胸を全摘出するということが受け入れられず、とても落ち込みました。
編集部
乳がんを発症して、生活にどのような変化がありましたか?
りんりんさん
手術後はリンパも少しとっていたので左腕にうまく力が入らず、腕も上げられない、思うように動かせない日が続きました。また抗がん剤治療中は、やはり嘔気や歩けないほどの全身倦怠感などの副作用が辛く、家事もままなりませんでしたね。ただ、嘔気は点滴した日だけで、翌日からは食欲もあり、家事もできるくらいではありました。副作用で辛い時は、主人にも協力してもらい、娘の幼稚園の送り迎えや、お世話を頼みました。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
りんりんさん
Instagramで知り合った同じ乳がんのフォロワーさんたちとメッセージを送り合うことでした。わたしは抗がん剤治療が一番の不安だったのですが、ちょうど同じ時期から抗がん剤を始める方がほかに2人いたので3人でグループメッセージをしていました。抗がん剤点滴中も3人でメッセージを送り合っていたので、不安という気持ちよりも、楽しいと思う気持ちのほうが強くなりました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
りんりんさん
「健康診断に行ってるから大丈夫」なんて思わないでほしいです。自分の体は自分でしか守れないんだと伝えたいです。
現在も「乳がん」と戦う日々。「乳がん」を意識していない人にこそ、伝えたいメッセージとは?
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
りんりんさん
現在はタモキシフェンというがんの増殖を抑える飲み薬を服用し、半年に一度リュープリンというホルモン注射を腹部に打っています。点滴の抗がん剤と比べると副作用は軽いですが、生理が全くこなくなってしまいました。また、更年期障害のような、イライラしやすくなる、汗をかきやすくなるなどの地味な副作用はあります。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
りんりんさん
ほかの病気と違って痛みがあるわけではないので、とても見つけづらい病気です。他人事と思わず、いつなってもおかしくないという気持ちでしこりがないかチェックする時間を、少しでも作ってほしいと願います。「私は大丈夫」と過信せず、最低でも一年に一度は健康診断に行ってほしいです。ちなみに私は一年に一度必ず健康診断に行っていて乳がん検診もしていたのに気づいたときにはステージ2の乳がんでした。だからこそ最低でも週に一度は自分自身の胸を触ってしこりがないかをチェックしてほしいと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
りんりんさん
がん患者さんは誰もがショックを受けて悲観的になっているので、優しく寄り添っていただきたいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
りんりんさん
病気についてはインターネットの情報だけに惑わされず、正しい情報を見てほしいですね。「インターネットの情報だけを鵜呑みにしてはいけない」と主治医の先生からも言われました。インターネットは便利ですが、古いものや信憑性が怪しいものもあります。主治医から「医療や治療法は数年で大きくかわるので最新版のがんのガイドブックを買って読むのが一番安心だ」と教えてもらいました。私も、宣告されてすぐは落ち込みました。でも「落ち込んでいる時間があったら正しい乳がんの知識をつけよう」と、乳がんのことを調べました。正しい知識を得て、病気を乗り越えていきましょう。
編集部まとめ
乳がんは早期であれば乳房を温存できる可能性もある病気です。「ひょっとしたら自分も乳がんかもしれない」「しこりがあるかはわからないけれど、ただ心配」という方も読者の中にはいるかもしれません。大事なことは一人ひとりが「乳がん」を知り、行動すること。インターネットなどの不確かな情報ではなく、まずはお近くのブレストクリニックに相談してみることが、あなたの不安を解消できる1つの方法になるかもしれません。この記事を読んで、1人でも乳がんによって悲しむ人を減らせることを願っています。