ケトン体を利用したダイエットってなに? やり方を間違えると危険って本当?
ダイエットに興味がある方は「ケトジェニックダイエット」について一度は耳にしたことがあると思います。しかし、ケトジェニックダイエットには効果があると言われている一方で、やり方を間違えると危険という認識も広がってきました。ケトジェニックダイエットとは何なのか? メリットとデメリットを管理栄養士の勝間田さんに解説していただきました。
監修:
勝間田 理沙(管理栄養士)
管理栄養士養成課程の大学を卒業。大学卒業後、高齢者施設の管理栄養士として就職。就職後は栄養士会に入り、栄養士大会にて「美味しいとは何か?」という論文を発表。祖父・祖母が最期を迎えるまで、食でサポートをしたいと思いこの道を目指す。「高齢者が幸せになる食事」をモットーに業務を行っている。栄養のことを幅広い方に知ってもらいたいという思いがあり、ライターとしても活動中。その他、栄養教諭・調理師・介護職員初任者研修などの資格を有する。
ケトン体食は、糖質を減らした食事
編集部
そもそも、ケトン体とは何ですか?
勝間田さん
グルコース(ブドウ糖)が不足した際に利用されるエネルギー源で、脂質とタンパク質を原料としています。ご飯などの炭水化物を食べると、エネルギー源としてグルコースが利用されますが、炭水化物を摂取しないと、グルコースを作ることができないため、第2のエネルギー源としてケトン体が利用されます。つまり、飢餓時や絶食状態では、まずエネルギー源としてグルコースを利用した後に、ケトン体を利用します。このようにケトン体は意図的に身体の中で作り出すことができます。
編集部
ケトン食についても教えてください。
勝間田さん
高脂質、低炭水化物食にすることで、体内でケトン体が利用されやすいようにする食事のことですね。人間は、1日に必要なエネルギー量が決まっています。炭水化物を減らす代わりに脂質を多く摂取し、エネルギー量を補います。
編集部
どんな人が利用する食事ですか?
勝間田さん
てんかん患者に利用されることが多い食事療法です。現在では、肉体改造のためにケトン食を利用する方が増え、ケトジェニックダイエットがメディアを通して有名になりました。
ケトジェニックダイエットの効果
編集部
ケトジェニックダイエットの方法を教えて下さい。
勝間田さん
1日の炭水化物量を極端に抑えて、その代わりに脂質を多くとります。 炭水化物であるご飯、パン、麺類などの主食は、ほとんど食べられません。そのため、かなり偏った食事になります。脂質は中鎖脂肪酸などの良質な油を取ることが推奨されています。中鎖脂肪酸は、脂質の中でも脂肪になりにくいことが特徴です。中鎖脂肪酸を多く含むココナッツオイルや、パーム油などを利用することでよりケトン体の生成を活発にすることができます。
編集部
ケトジェニックダイエットをすると、体にどのような影響がでますか?
勝間田さん
ケトン食は、低炭水化物食であるため、血糖値が上昇せず、体内のインスリン濃度が低下します。運動量が少なく、肥満体形の人は、インスリン感受性が低い傾向にあります。そのような方がケトジェニックダイエットを行うと、食後血糖値の上昇が緩やかになり、インスリン感受性が高くなるといわれています。しかし、インスリン感受性は食生活の改善や、運動を始めることで改善されるケースが多いとされています。食事内容を極端に変えることから始めるのではなく、まずは栄養バランスの良い食事と運動習慣を身につけることから始めてみると良いでしょう。
編集部
ケトジェニックダイエットは、どんな効果がありますか?
勝間田さん
タンパク質摂取量が多いことによる食欲減退や、エネルギー代謝の変化による体重減少に効果があるといわれています。また、ケトン食は脂肪の合成を抑制し、脂肪の分解を促進するためダイエットに効果的だと考えられています。しかし、そのメカニズムについてはいまだ解明されておらず、分からないことが多いため否定的な論文がでていることも事実です。
ケトジェニックダイエットをする場合には、専門家に相談する
編集部
ケトジェニックダイエットをすると、危険だと聞きました。
勝間田さん
短期間の副作用として、無気力、むかつき感、吐き気が現れる人もいます。長期になると、LDLコレステロール値の上昇、ミネラル不足、アシドーシス状態による呼吸機能の低下や意識の低下、高尿酸血症、腎臓結石や尿結石ができやすいといわれています。体重の増加を防ぐ一方で、インスリン抵抗性を引き起こすという論文もあります。健康な人に対するケトジェニックダイエットは、メリットに対して、デメリットも多くあげられます。
編集部
ケトジェニックダイエットをしてはいけない人の特徴を教えてください。
勝間田さん
脂質代謝における先天性の代謝異常を患っている患者、腎臓病患者などに対するケトン食療法は禁忌とされています。その他、基礎疾患がある患者も、医師や管理栄養士に相談するようにしましょう。健康な方でも、自分の判断でケトジェニックダイエットを行うことはお勧めしていません。
編集部
ケトジェニックダイエットを始めたい場合は、どうすればいいですか?
勝間田さん
メリット、デメリットがあるので必ず専門家のサポートを受けるようにしましょう。自分の判断で行うことは危険です。短期的に効果がでたとしても、長期的にみると身体の負担になっていることもあります。しっかりと説明を受けたうえで、ケトジェニックダイエットを始めてみて下さい。
編集部まとめ
ケトジェニックダイエットは、専門家のもとで行う必要があることが分かりました。メリットとしてダイエットに効果がある一方で、様々なデメリットがあります。しっかりと説明を受けたうえで行うようにしましょう。自分に合ったダイエット方法を見つけ、長期的にみて健康的な生活を送ることが大切です。