【闘病】「前向きに歩くことを諦める」 二分脊椎症の車椅子ダンサーが行き着いた答え(2/2ページ)

前向きに諦めた、その先に

編集部
現在の体調や生活はどうですか?
かんばらさん
体調は10代の頃から特に変わり無いので通院も10年以上していないですが、生活は大きく変わりました。結婚し、新婚旅行でキューバとメキシコに行き、その後、人工授精と顕微授精で2人の子どもを授かりました。こういった家庭を築ける将来が来るとは思っていませんでした。現在は「車椅子ダンサー」として活動しています。
編集部
なりたいと思ったきっかけは? どんな活動をしているのですか?
かんばらさん
29歳の時に、パフォーマンス専用の車椅子がテレビのニュースで紹介されていて、すごく印象に残っていました。そうしたら数か月後にその車椅子のパフォーマー募集されているのをSNSで見て、すぐに応募したのがキッカケです。そこからどんどんのめり込んでいき、今年は東京2020パラリンピックの開会式(2021年に開催された)にも出演させていただきました。
編集部
かんばらさんのダンスパフォーマンスについて、もう少し聞かせてください。
かんばらさん
まず、先に言っておきたいのは、「障害は個性」だとか、障害自体を美化する考え方は全くありません。不便だったり、嫌な思いをしたりすることもあります。その上でという話ですが、自分がしているダンスでは、障害が自分しかできない表現に繋がっています。例えば、自分は下半身の筋肉が細いこともあり体重が30kgしかないですが、上半身の筋力が強いので、車椅子の人の中でも自分しかできない技があります。また、普段の生活では細い脚を隠したくて太めのパンツを履いていますが、ダンスでは細い脚を見せることで上半身の力強さを表現することに繋がっています。
編集部
脚の筋肉がないことで、できないこともありますが、表現できることもあるのですね。
かんばらさん
ないのは筋肉だけでなく、感覚もありません。感覚がないと、例えばどこかに足が引っかかっても気がつかないことがあり、ケガなども沢山しましたが、そこから少しずつ自分の体を知り、学び、今の身体の使い方の基礎になっているので、無駄ではなかったと思っています。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
かんばらさん
伝えたいこというよりも当時の話として、自分は脚の変形もあるので、リハビリで装具と杖を使って歩くのが難しかったです。先ほども言いましたが、自分は「歩けなくても仕方ない」と前向きに諦めていたので、リハビリの目標設定も「歩く」ということにこだわらず、上半身の使い方を伸ばすようなリハビリを受けられていたら良かったと思う時があります。
編集部
最後に、今後の展望をお願いします。
かんばらさん
学校などで講演させていただく機会がありますが、ダンスを見て貰うと盛り上がって、一気に壁が無くなります。今後も障害に接点がなかった人たちの前で踊る機会を大事にしていこうと思っています。
編集部まとめ
車椅子ダンスを通して、自分の身体の使い方だけでなく、障害のある自分だからこその表現なども学んだというかんばらさん。「歩くこと」にこだわっていたら見えなかった景色を見ているように感じました。今後のご活躍にも注目したいと思います。かんばらさん、ありがとうございました。
