~実録・闘病体験記~ 連日続いた頭痛とダルさ。ある日突然倒れ、脳卒中で半身麻痺に
脳出血は脳の血管が破裂し、脳の中で出血を起こす病気です。出血した血液は血の塊(血腫)を作り、脳細胞を直接的に壊したり、周りの脳細胞を圧迫したりしてダメージを与え、さまざまな脳機能を不能にしてしまいます。脳出血を発症し、左半身麻痺が残ったいとしんさん(仮称)に、脳出血が発症するまでの経緯や発症したその後、そして現在の生活について話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。
体験者プロフィール:
いとしんさん(仮称)
岐阜県在住、1987年生まれ。父、母、妹と暮らす。診断時の職業は某コンビニ店店長をしていた。2016年6月、久しぶりの休日に出先で脳出血を発症。頭部開放手術を行い、1週間意識不明の状態で後遺症を発症する。現在はリハビリ通院はせず、動画投稿サイトTikTokで「半身麻痺キャッチャー」として動画をUPし、身体障害者野球を楽しんでいる。2020年より自営業をはじめ、健康アパレルブランド「AXF」の販売、営業を行っている。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
ただの体調不良だと思っていたが……
編集部
脳出血を発症するまでの経緯を聞かせてください。
いとしんさん
2016年に発症するまでの半年間、頭痛や睡眠不足に悩まされていました。常に頭が痛くて身体がダルい、そんな感じです。発症する直前、運転中に異常なくらい汗をかいていたのを覚えています。そのときはものすごい吐き気がしましたね。それでも「熱中症かな」くらいにしか思っておらず、水を買おうとコンビニへ向かいました。コンビニに着き、車から降りようとした途端、左足に力が入らなくなり、そのまま倒れたんです。奇跡的に同乗者がいたので、救急車を呼んでもらい、命だけは助かりました。
編集部
はじめに身体に起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?
いとしんさん
吐き気や身体の震えがありました。また脂汗が止まらなくなり、ろれつが回らなくなっていましたね。発症する半年前から頭痛もありました。
編集部
脳出血が発症したときのことで覚えていることはありますか?
いとしんさん
救急車で運ばれるとき「手足に麻痺の症状が見られる」と救急隊の方が言っていました。自分では、まっ先に「このまま死ぬんだろうな」と思いました。
編集部
どのように脳出血の治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
いとしんさん
医師からは「とにかくリハビリをして、運動機能を回復させていきましょう」と説明がありました。
脳出血を発症したあとの生活
編集部
脳出血発症後は、生活にどのような変化がありましたか?
いとしんさん
自分の体調に関して、以前よりも神経質になりました。また、これまでの日常が当たり前ではなかったということに気づき、「人生に後悔がないように、やりたいことはとにかくやってみよう」と思うようになりましたね。後遺症は残ってしまいましたが、死にいたらなかったことだけは不幸中の幸いと思っています。脳出血を発症して気づけたことも多く、今までよりもプラス思考になったように感じます。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
いとしんさん
一番の心の支えは「自分の身体が治っていく」という実感ですね。リハビリテーションを重ねていくうちに、うまく動かなかった身体が少しずつ動いていく感覚があったんです。リハビリを頑張るほど目に見えて効果を実感でき、やる気に繋がりました。また自分の好きな音楽に浸ることも、心の支えになっていましたね。
編集部
脳出血の症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
いとしんさん
身体を動かすこと、暴飲暴食をしないことの2つを意識しています。現在も左側の手足に麻痺が残っているのですが、これ以上症状を悪化させたくないので、身体を動かして、運動機能が低下しないように心がけています。また暴飲暴食によって体重が増えたり、血圧が上がったりすると、脳出血を再発するリスクがあるため、その点は気を配っていますね。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
いとしんさん
現在は、左手が全く動かず、左足も思うように動きません。しかし右手、右足をうまく使うことで普通の方と同じ生活ができています。
「若いから大丈夫」がいちばん怖い
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
いとしんさん
「仕事を辞めなさい」と助言したいですね。私は体調が悪いときもひたすら仕事に打ち込んでいました。脳出血で倒れた原因は働きすぎた、ということも原因の1つであると考えています。ですので倒れる前の自分には、仕事を辞めなさいと助言しますね。
編集部
脳出血を意識していない人に一言お願いします。
いとしんさん
どの疾患にもいえることだと思いますが「若いから大丈夫」なんてことはありません。身体に異変を感じたら、すぐに病院を受診するべきです。私もそうでしたが「自分はまだ若いから」と思い、身体が出すSOSサインを軽んじていました。若い人ほど病気のサインを無視してしまうでしょう。しかし症状が悪化したあとに気づいても、どうしようもありません。年齢関係なしに、体調が悪いときは病院に行ってほしいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
いとしんさん
私は半身麻痺になってから、自分の人生にテーマを持つようになり、「挑戦してやろう」と思うようになりました。自分の最期を迎えたときに「あの時こうしておけばよかった」と思わないために。そして入院とは「自分の生活スタイルを取り戻す為の期間」だと私は思っています。だから、読者さんでもし入院することになった際は、失敗を恐れず、どんどん色んなことに挑戦してほしいです。その気持ちが時には壁にぶち当たる時もあるでしょうが、それはあなた自身が今この瞬間生きている証です。上を向いて生きて行こうなんて思わず、前を向いて目の前のことから、ゆっくり乗り越えて行けば大丈夫です。
編集部まとめ
若いうちは体調に異変を感じても「若いから大丈夫」と誰もが思ってしまうでしょう。しかしその思い込みがいちばん怖いということを、いとしんさんは訴えてくれました。「若いから大丈夫」「ただの体調不良だろう」と思い、病院を受診せずに症状が悪化してしまう人が後を絶ちません。「身体が出すSOSサインを見逃さないでほしい」といういとしんさんの声が、ひとりでも多くの方に届くことを切に願います。