市販の育毛剤の有効性を皮膚科医に聞く! 抜け毛対策としてどうなのか?
テレビコマーシャルなどでよく見かける市販の育毛剤。効能を問われるとしたら、「どんな成分が含まれているか」がポイントです。もし医薬品と同様の成分が市販品にも含まれているなら、かえって利便性が増すようにも思えます。今回は、市販の育毛剤との正しい向き合い方を「なごみ皮ふ科」の齊藤先生に解説していただきました。
監修医師:
齊藤 典充(なごみ皮ふ科 院長)
北里大学医学部卒業。北里大学病院をはじめとした医療機関勤務後の2020年、神奈川県海老名市に位置した旧「米元皮膚科医院」を引き継ぐ形で「なごみ皮ふ科」を開院。頭皮も含めた皮膚の悩みに寄り添っている。日本皮膚科学会専門医。日本アレルギー学会、日本小児皮膚科学会、日本臨床毛髪学会、毛髪科学研究会ほかの各会員。
育毛剤の効き目をまとめた医師が参考にするガイドラインとは
編集部
最初に確認ですが、「脱毛対策」って皮膚科領域ということで合っていますか?
齊藤先生
はい。美容整形やAGA専門クリニックでの扱いが目立つかもしれませんが、毛髪や爪も皮膚の一部ですから、皮膚科領域で間違いありません。皮膚科は、必ずしも“皮膚の病気だけ”を扱っているわけではないということです。
編集部
そこで本題です。市販品の育毛剤は効果があるのでしょうか?
齊藤先生
※日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
編集部
同ガイドラインを、どのように活用すればいいでしょうか?
齊藤先生
様々な薬の成分やその使い方について、「A:おこなうよう強く勧める」から「D:おこなうべきではない」までの段階評価をしているため、市販品を見極める“参考”になると思います。
編集部
やはり、「A:おこなうよう強く勧める」が気になります。
齊藤先生
A評価の結果は、男性と女性で大きく異なります。女性でA評価となったのは、「ミノキシジルの外用」だけでした。一方で男性のA評価には、「ミノキシジルの外用」のほか、「フィナステリドの内服」と「デュタステリドの内服」が加わります。
編集部
つまり、成分に「ミノキシジル」が含まれていれば市販薬でも効くということになりますか?
齊藤先生
効果には個人差があるので、なんとも言えません。ガイドラインのA評価は、「有効性を示すエビデンスがよりたくさんある」という意味で、直接、「効く・効かない」を示唆するものではないのです。その前提を頭に入れたうえで、参考にしてみてください。
編集部
「ミノキシジル」のA評価は、塗布に限られるのですか?
齊藤先生
はい、外用に限られます。ミノキシジルの内服はD評価ですので、「D:おこなうべきではない」ということですね。では、飲み薬そのものに効き目がないのかというと、男性の「フィナステリド」と「デュタステリド」は内服でA評価を取っています。ですから、成分と同時に、性別と“届かせ方”が評価をわけるうえで重要になるということです。
市販品の育毛剤は忠告や諸注意をしてくれない
編集部
ガイドラインのB評価は「そんなに効かない」ということですか?
齊藤先生
B評価のものも、十分に使用してみる価値はあります。繰り返しになりますが、同ガイドラインの評価は、「効く・効かない」を示唆してはいません。私の中ではB評価に肯定的な印象を持っております。
編集部
参考までにB評価の中身についても教えてください。
齊藤先生
わかりました。B評価にはレーザーや植毛術も含まれます。ただし、今回はタイトルにある育毛剤の成分に絞りましょう。男性でB評価だったのは「アデノシンの外用」です。一方、女性のB評価はありませんでした。
編集部
錠剤タイプの育毛剤は通販でも購入できますが、この点についていかがでしょうか?
齊藤先生
並行輸入品の中には、偽薬が交ざっていることもあるようです。含有されている成分が「少ない」ならまだよくて、「全く入っていない」こともあり得ます。やはり、おすすめはできず、クリニックから処方された薬で改善を目指すべきだと考えます。
編集部
ほかに、市販品ならではのリスクはありますか?
齊藤先生
説明書きを読まない人がいたり、“たくさん使うほど効くはずだ、あるいはもったいないから少しずつ使おう”と考える人がいたりしますが、適切な容量・用法を守らないと効果が期待できません。
医療行為以外に市販品の育毛剤の相談なども皮膚科で受けられる
編集部
一方、皮膚科では何をしてくれるのでしょうか?
齊藤先生
我々の役目は、「脱毛がどうして起きているのか」という診断をしっかり付けることです。そのうえで、患者さんにとって適切な薬を選ぶことが大切だと考えています。また、必要に応じて、レーザーや植毛術などの医療行為をおこなえる施設の紹介も検討していきます。一方で、市販品のご相談だけというパターンもありますよ。
編集部
市販品を使用した際の想定外のトラブルにも対応してもらえますか?
齊藤先生
はい。育毛剤による肌かぶれなどのご相談は、けっして少なくありません。また、頭皮の洗いすぎによる皮膚かぶれも数多くみられます。シャンプーの種類や頻度については、季節や年齢が大きく関係してきますので、ぜひ皮膚科で、「生きた知識」を身に付けていってください。ドライヤーによる乾かしすぎも気になるところです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
齊藤先生
市販品の育毛剤を使うとしたら、しばらくは同じ製品を試してみてください。効き目が出てくるまで、3カ月から半年くらいはみていただきたいですね。また、新しい髪の毛は生えなくとも、薄毛が止まれば一定の効果があると言えるのではないでしょうか。トラブルがあったら、すぐにでもご相談ください。
編集部まとめ
市販されている育毛剤で最も多いのは「塗布するタイプ」だと思います。ミノキシジルが含まれている塗布タイプの製品については、医師と相談のうえで使用を推奨するケースもあるとのことです。他方で、ミノキシジルの飲み薬は、「おこなうべきではない」D評価です。天と地の差ほどもあるこうした見極めは、やはり医師にお願いした方が確実です。
医院情報
所在地 | 〒243-0432 神奈川県海老名市中央3丁目4-1 シティースタイル1階 |
アクセス | 小田急線・相鉄線「海老名駅」 徒歩4分 |
診療科目 | 皮膚科 |