~実録・闘病体験記~ サードオピニオンでやっと発覚した子宮体がん
閉経前に子宮体がんに罹患することは稀なのだそうです。しかし、それはあくまで「稀」であって「確率ゼロ」ではありません。今回は、そんなご経験をされたましろ(仮称)さんに、闘病時の話を聞きました。子宮摘出という経験や、その後も続いた抗がん剤治療などについて「わたしの経験が誰かの助けになれば」と、真っ直ぐに伝えてくれています。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年10月取材。
体験者プロフィール:
ましろさん(仮称)
地方に住む30代。子なし夫婦。2020年11月子宮全摘手術を受け、その後子宮体がんと診断される。2021年2月両側付属器切除&骨盤内リンパ節郭清、2021年4月〜抗がん剤治療を行い、現在は経過観察中。Instagram
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
二転三転して発覚した子宮体がん
編集部
ましろさんは、20代の頃からがん検診を受けていたそうですね。
ましろさん
はい。初めて婦人科へ行ったのは20代半ばでした。市の子宮頸がん検診でレディースクリニックへ行ったところ、総合病院の婦人科で再検査をするように言われました。結果的に子宮頸がんではなかったのですが、腫瘍を摘出する手術をしたりして、そこから定期的に通院するようになりました。
編集部
そこからどのような経緯で子宮体がんと診断されたのですか?
ましろさん
30歳頃に子宮筋腫が見つかりましたが、良性腫瘍であることや、妊娠を優先することを理由に経過観察していました。ある時「最後の検査から1年たっているのでそろそろチェックしておきましょう」と主治医に言われてMRI検査を行い、その結果、子宮体がんかもしれないと言われました。
編集部
まだ確定ではなく、そこから更に検査が続いたのですか?
ましろさん
はい。子宮内膜掻爬術(しきゅうないまくそうはじゅつ)で検査しましたが、どちらとも言えないとのことでした。そこでセカンドオピニオンとして専門性の高い病院に行きました。子宮内の細胞を少し取って検査したところ、「子宮内膜異形増殖症」と言われ、がんではないかもとホッとしたのですが、それもつかの間、更にサードオピニオンをすすめられました。
編集部
なかなか診断がつかなかったのですね。
ましろさん
3つ目の病院でも子宮内の細胞を検査することになり、がんが見つかれば子宮は摘出、見つからなければホルモン療法と言われました。ホルモン療法をすると、妊娠・出産はできるかもしれないが、万が一がんがあった場合にステージが進行してしまう可能性もあると説明がありました。全て聞いた上で、子宮摘出ではなく、子宮を残せる治療を選択しました。
考えるだけで辛かった子宮摘出
編集部
そのときの心境について教えてください。
ましろさん
子どもを産めなくなることが、真っ先に頭をよぎりました。いつかお母さんになるという小さい頃から思い描いていたことを叶えられないかもしれない、子ども好きな夫に子どもを産んであげられないかもしれないと考えるだけで辛かったです。私の生きる時間が短くなったとしても、子どもを授かることを目標に治療しようと決めました。ですが、結局、検査の結果、子宮体がんの診断をうけました。今まで生きてきた中で味わったことのないくらいの絶望でした。診察室で泣き、待合室にいた夫の顔を見て泣き、帰りの車の中でも、とめどなく涙が溢れてきました。家に帰って数日たっても、不意に涙が出てくることが度々ありました。テレビや会社で出てくる子どもの話題には耳を塞ぎたくなりました。辛い気持ちを持ったまま手術日をむかえました。
編集部
つまり、子宮の摘出術をすることになったのですか?
ましろさん
はい。手術のとき、手術台で涙を流した私に、優しい言葉をかけてくださった看護師さんがいらっしゃいました。「辛いですね、みんな応援していますよ」と。その言葉でどれほど救われたことか。医療従事者の皆さんには、この先も患者の心に寄り添ってくださることを望みます。
編集部
手術後はどのような治療を受けましたか?
ましろさん
子宮摘出術の後、卵巣摘出、リンパ節郭清、抗がん剤治療6クールを終えました。子宮を摘出して、病理検査でがんが子宮の筋肉にどれくらい入り込んでいるかを調べ、2分の1以上であれば卵巣摘出、リンパ節郭清を行うことと、必要であれば抗がん剤治療も行うことになると手術前に説明を受けていました。結果的にその全てを行うことになったんです。
編集部
どうやって気持ちを保っていたのですか?
ましろさん
夫がそばにいてくれました。不意に悲しくなって泣いていると優しく抱きしめてくれて、心が落ち着きました。また、仕事をしていたおかげで悪いことを1人で考え込む時間はありませんでした。病院へ行った翌日の出勤は精神的に辛いときもありましたが、数日過ぎれば気持ちも切り替えられていました。抗がん剤治療が始まってからは、SNSで同じ子宮体がんの方と繋がり、経験談を聞いたり、メッセージのやり取りをさせていただいたりして、1人じゃないと思えました。それから、バケットリストを作成しました。死ぬまでにやりたい100のことを書き、楽しい未来を想像していました。
大切な人のために、がん検診を受けてください
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
ましろさん
現在は経過観察中です。2か月に1度通院しています。卵巣摘出の影響でホットフラッシュなどの更年期症状が出たり、鼠径部のリンパ節郭清を行ったことで下半身がむくみやすく、ケアが必要だったりしますが、日常生活は問題なく送れています。仕事は在宅勤務をさせてもらっています。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてしまい、今は数cm生えてきたところです。ウィッグをかぶって出社する日も近いと思っています。
編集部
子宮体がんと診断されて以降、生活にどのような変化がありましたか?
ましろさん
食生活を意識するようになりました。極力、添加物を避け、毎晩飲んでいたお酒はほとんど飲まなくなりました。健康に生きるための知識をつけようと思い、資格の勉強も始めました。あとは、リンパ節郭清をしているため蜂窩織炎(ほうかしきえん/皮膚とその下の組織に細菌が感染し、炎症が起こる病気)にならないようにケガ、むくみに気をつけています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、何と言いますか?
ましろさん
今、笑って生きてるよ。乗り越えたというより、過ぎ去った感覚の方が強いけど、まだ生かしてもらえてる。だから、やりたいと思ってることは、いつかじゃなくて、すぐやろう。
編集部
子宮体がんを意識していない人に一言お願いします。
ましろさん
子宮頸がん検診、子宮体がん検診を受けてください。不正出血や下腹部痛など、普段と違うことがあったら、迷わず病院へ行ってください。自分自身のためはもちろん、周りにいる大切な人のためにも。あなたの身体は替えが効かない唯一無二です。早期発見であれば、治療も短期間で済むかもしれません。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
ましろさん
閉経前に子宮体がんに罹患することは稀だと言われています。子宮体がんと言われてすぐにネットやSNSで情報を探しましたが、あまり多くの情報に出会えませんでした。わたしの経験が誰かの助けになればと思っています。手術や治療の副作用等で見た目に差が出ることがあります。同じ職場の人、お店で偶然隣の席になった人、店員さん、すれ違うだけの人など、周りの方々にお願いしたい事は、ただ普通にしてほしい、それだけです。1人1人が心地よく生きられる世の中になりますように。
編集部まとめ
病気になったとき、同じ経験をされた方の情報や経験談があると心強いですよね。稀な疾患や発症であればなおさらです。「今、笑って生きてるよ」という言葉と、「自分のためにも、大切な人のためにも、がん検診を受けてください」との言葉が特に心に響きました。ましろさんのお話、きっと誰かの助けになると思います。貴重な体験談をありがとうございました。