【人間ドック】受けるべき年齢は30代から「健康状態が良い人・悪い人の差が出やすい時期」
人間ドックを受けた方が良いことはわかっていても、「まだ若いから大丈夫」「会社で健康診断を受けているから」といった理由で先延ばしにしていないでしょうか。でもある一定の年齢になったら、健康管理のためには人間ドックが必要。一体、何歳になったら人間ドックを受けた方が良いのでしょうか。宇都宮セントラルクリニックの瀬尾先生に教えてもらいました。
監修医師:
瀬尾 弘司(宇都宮セントラルクリニック 常勤医師)
1990年獨協医科大学医学部卒業。獨協医科大学病院の心臓・血管内科教室に入局し、内科学全般および循環器研修を行う。1997年より栃木県保健衛生事業団にて循環器領域の予防医学を担当すると同時に、宇都宮セントラルクリニックにおいて冠動脈を中心とした循環器領域の画像診断やCMC(会員制メディカルクラブ)の顧問医として勤務している。
そもそも人間ドックとは? 健康診断とどう違う?
編集部
はじめに、人間ドックについて改めて教えてください。
瀬尾先生
人間ドックとは、病気を予防するために個人が自由に受けることができる健康診断のことです。人間ドックを受けることで、まだ病気として症状が現れていない異変も、いち早く察知することができます。そのため、重篤な病気になってから治療するのではなく、早い段階で病気を見つけ、素早く治したり、発症を未然に防いだりすることが期待できるのです。
編集部
会社で健康診断を受けていますが、それとどう違うのですか?
瀬尾先生
一番大きな点は、検査項目の数です。自治体や会社などで行われる健康診断(法定健診)は内容が限られており、細かな部分まではチェックできないのが実情です。それに比べて、人間ドックはもっと細かく健康状態をチェックすることができますし、オプションメニューも豊富に用意されているので、自分の目的に沿って診断項目をアレンジできることも特徴です。
編集部
ということは、一般的な健康診断を受けているだけでは不十分ということでしょうか?
瀬尾先生
一般に、病気のリスクが低い若い人であれば健康診断でも十分かもしれません。しかし健康診断で行う検査は、主に「一般健康診断(一般健診、定期健診)」と呼ばれているもので、診察や尿、血液を採取しての検査、胸や胃のレントゲン検査など、検査項目は大体10〜15ほどしかありません。一方、人間ドックは検査項目が50〜100と多数あり、健康診断だけでは見つけづらい生活習慣病や、隠れた病気を見つけることもできるのです。
編集部
では、ある程度の年齢になったら人間ドックも並行して受けたほうが良いということですか?
瀬尾先生
基本的にはそうなります。もちろん、若い人でも遺伝など病気のリスクが高い人や肥満の人、喫煙習慣や生活習慣病の心配がある人、過去にがんなどの病気を患ったことがある人は、年1回、人間ドックを受けて、しっかりチェックした方が良いでしょう。
人間ドックを受診する適齢期とは?
編集部
一般に、人間ドックは何歳ごろから受けたほうが良いのでしょうか?
瀬尾先生
30代になったら人間ドックを受けるのがお勧めです。なかには20代で受診する人もいますが、一般的には30代が目安と考えて良いでしょう。
編集部
なぜ、それくらいの年代から受けたほうが良いのですか?
瀬尾先生
30代のうちは健康に自信があり、あまり病気をしたことがないという人も多いでしょう。しかし30代は、「健康状態が良い人」と「悪い人」の差がはっきりと出やすい時期。この年代は、責任のある仕事を任されて忙しくなったり、生活環境が変わったりして、健康状態の個人差が大きくなります。そのため、今は健康でも、将来、発症するかもしれない病気の芽をいち早く見つけるために、せめて30代後半から人間ドックを受けることをお勧めします。
編集部
人間ドックは毎年、受けたほうが良いのですか?
瀬尾先生
できれば毎年受けたほうが良いでしょう。人間ドックにはさまざまなコースがあり、また、オプションメニューも豊富に用意されています。既往歴や家族歴や生活習慣などを考慮して、「この検査は隔年で受ける」「この検査は毎年受ける」など、各自の状況に応じて受診方法をアレンジしても良いでしょう。
編集部
検査項目がたくさんあり過ぎて、どのように選べば良いかわかりません。
瀬尾先生
人間ドックを受ける際には、ベーシックなコースに、オプションで何を追加するかを考えると良いでしょう。検査機関によって異なりますが、ベーシックなコースの内容は、身体計測、血圧、心電図、眼科検診、聴力検診、呼吸機能検査、胸部X線、上部消化管X線または上部消化管内視鏡、尿検査、便検査、腹部超音波検査、血液検査、診察などが一般的です。必要に応じて、これにオプションを追加すると良いでしょう。
年代別で考える、オプション項目の選び方
編集部
オプションを追加する際は、どのように考えたら良いのでしょうか。
瀬尾先生
性別と年齢によって考えましょう。それから、自覚症状の有無や、家族の既往歴も考慮して選びましょう。たとえば30代女性なら、乳がんの罹患率が高くなる時期なので、マンモグラフィや乳腺エコーなど、乳がん検診をオプションで追加すると良いでしょう。更にこの時期は子宮頸がんのリスクも高いので、子宮がん検診も受けることをお勧めします。
編集部
40代はいかがですか?
瀬尾先生
40代は、本格的な定期受診が必要な年齢となります。中でも各種がん、心臓病、脳卒中リスクのチェックを重視するようにしましょう。病気のリスクが一気に高まるため、30代で定期的な健診を受けてこなかった方は、40代になったことを機に、しっかりと検査をしてください。
編集部
具体的に、どんな検査を受けたら良いでしょうか。
瀬尾先生
40代にお勧めしたい検査としては、肺がんなどを早期に見つける胸部CT検査、脳卒中リスクを調べる頭部MRI検査、心臓病などの心疾患リスクをチェックする心臓MRI検査、全身のがんをスクリーニングするPET-CT検査が挙げられます。気になる症状が具体的に現れ始める年代のため、少しでも気掛かりなことがあれば、早めに検査を受けると良いでしょう。
編集部
50代はいかがでしょうか。
瀬尾先生
40代よりもさらに病気のリスクが高まる50代は、定期的に人間ドックを受けた方が良いでしょう。とりわけ注意したいのが、生活習慣病やがんのほか、不整脈や狭心症などの心疾患。これらに注意しながら、年代が早いうちから定期的に検査を受けていれば、経年で健康状態を追っていくことができるため、体のウィークポイントをある程度把握でき、自分がどのような検査を受けるべきかわかると思います。
編集部
60代以降はどうでしょうか?
瀬尾先生
60代からは、なんらかの疾患を持病として抱えているケースが多くなるため、普段の治療と並行しながら必要に応じて年1回程度の人間ドックを受診し、健康状態を確認しましょう。特に気をつけたいのが、三大疾病のがん、心臓病、脳卒中です。またこの年代になると、人間ドックで早期発見された病気の治療が始まる可能性もあります。その場合、治療をしながら、ほかの病気を併発させないよう予防していくことも必要となっていきます。
編集部
年代によって受けるべき項目が変わるのですね。
瀬尾先生
もちろんこれだけでなく、なんらかの自覚症状があればその部位を徹底的に調べるためにオプション項目を選択したほうが良いでしょう。このように、目的に応じて項目を選択できるのが人間ドックのメリットです。ぜひ、日々の健康維持に役立てましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
瀬尾先生
人間ドックは20歳から受診することができ、現在、日本では年間300万人以上が検査を受けています。受診のきっかけはそれぞれ異なりますが、代謝が落ちてやせにくくなった、体力の回復が遅くなった、など体調の変化を感じる場合、その衰えは必ず数値に現れてきます。自覚症状がなくても人間ドックを受けるタイミングとして捉えましょう。初めての人間ドックでは全身の健康状態を把握するため、スタンダードなコース受診から始め、その結果や医師からの所見を踏まえて、自分にとって必要な検診を受けていくことが大切です。
編集部まとめ
基本的に人間ドックを受けた方が良いとされるのは30代以降。自分を含め、家族の既往歴や自覚症状がある場合は、年1回は確実に全身の状態をチェックして、発症予防に努めた方が良さそうです。最近は、親子や夫婦で人間ドックを受けるプランが用意されていることもあるので、大事な人と一緒に受けてみてはいかがでしょうか。
医院情報
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