高額介護サービス費支給制度は受けなきゃ損!? 介護福祉士に聞く
介護生活を経済的な面で支えるための制度に「介護保険制度」があります。その内容には「介護給付」という形で要介護者本人や家族の経済的負担を軽減するためのサービス設計がされています。しかし、要介護者によってはその負担が給付額を超えてしまう場合もあります。そんな時に活用できる制度に「高額介護サービス費制度」があるのをご存知でしょうか? 今回は、高額介護サービス費制度について「介護福祉士」の西原さんに詳しく伺いました。
監修:
西原 裕貴(介護福祉士)
西九州大学健康福祉学部社会福祉学科介護福祉専攻卒業。介護福祉士。社会福祉法人にて老人福祉施設や通所介護、障がい者就労継続支援A型などにおいて介護職や支援員に従事。5年で管理職昇格後は新規事業立ち上げや事業企画・採用・広報など現場と兼務しながらマネジメント領域に従事。退職後はフリーランスとして営業職などを経験し、現在は株式会社いきいきらいふの社長室マネージャーとして、採用責任者や事業・研究開発などを推進。
自己負担が膨らんでしまっても安心! 高額介護サービス費支給制度
編集部
介護サービス利用で自己負担額が大きくなってしまった場合、活用できる制度はありますか?
西原さん
「高額介護サービス費支給制度」というものがあります。この制度は毎月の自己負担額の合計が支給限度額の上限を超えた場合、超過分を払い戻ししてもらえる制度です。
編集部
その制度について詳しく教えてください。
西原さん
この制度には世帯や個人の「所得」に応じて上限額が設定されています。例えば、①課税所得145万円以上の現役並み所得者に相当する方がいる世帯、または世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人は4万4400円。②世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人は2万4600円、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等の世帯合計も2万4600円、もしくは個人で1万5000円。③生活保護を受給している方等で1万5000円となっています。
編集部
申請手続きはどのようにすればいいのでしょうか?
西原さん
高額介護サービス費の支給対象となった場合、お住まいの自治体から支給申請書が送られてきます。必要事項を記入し役所などへ郵送、または持参します。受理されると支給決定通知書が届き、指定した口座へ振り込みが行われます。面倒ではありますが、一度受給したら次回以降は市区町村によって計算された金額が自動的に振り込まれることになります。
そもそも介護費用負担の割合は、人それぞれで違う?
編集部
そもそも介護保険サービス費用の自己負担額は、どのように決まるのでしょうか?
西原さん
まず、大枠を説明すると、自己負担のかかるサービスもあれば、全く自己負担のないサービスもあります。自己負担のかかるサービスでは、一人ひとりの「所得」に応じて負担する割合が変わってきます。
編集部
高額介護サービス費支給制度の上限額と同様、「所得」に応じて自己負担割合が変わるのですね。その点をもっと詳しく教えてください。
西原さん
要介護認定を受けた方は、前年度所得に応じて「介護保険負担割合証」というものが発効されます。これは要介護者が介護サービスを受ける際、1~3割割の費用負担義務が発生することを証明するものになります。
編集部
要介護者がサービスを受けるにも、1~3割割の中で一定の費用負担が課せられるのですね。具体的にその基準はどのようになっているのでしょうか?
西原さん
基準を説明しますと、65歳以上の方で、本人の合計所得金額が220万円以上の方は3割、本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満の方は2割、それ以外の方々は1割となっています。ただし特例もあり、3割負担のケースで、本人を含めた同一世帯の65歳以上の方の前年の年金とそのほかの収入を合わせた金額が463万円、単身世帯では340万円を下回る場合には2割、または1割負担になります。また、2割負担のケースでも、さきほどと同様の対象条件で合計が346万円、単身世帯で280万円を下回る場合には1割負担となります。
高額介護サービス費支給制度の対象とは
編集部
高額介護サービス費支給制度は、介護に関連するサービス全てが対象になるのでしょうか?
西原さん
いいえ、高額介護サービス費支給制度の対象となるのは、先ほど説明した公的介護保険の1~3割負担の範囲内になります。そのため、介護サービス費用に関連すれば、なんでも払い戻しの対象になるわけではありません。
編集部
具体的に何が対象外となるのでしょうか?
西原さん
まずは施設サービスの居住費・食費や日常生活費です。例えば、ショートステイでの滞在費や施設生活での居住費・食費は対象外となります。また、福祉用具の購入費や、住宅のリフォームにかかる費用も含まれません。あと、理美容費など日常生活に関する実費、生活援助型の配食サービスなどの負担も含まれません。
編集部
対象になるかどうか事前に確認が必要になりますね。対象の場合、申請期限はあるのでしょうか?
西原さん
はい。申請は対象となるサービスの利用開始から「2年間」になります。それ以降は基本的には払い戻しを受けられませんので注意が必要です。わからないことや疑問点はサービス提供者や行政に確認し、早めの対応を心掛けましょう。
編集部まとめ
介護サービスが必要になった際、大きいのが経済的な負担です。しかし申請を行えば、払い戻しを受けることができ、負担を軽減できることがわかりました。高齢化社会をむかえ、特に介護者の経済的負担は社会問題になっています。早いうちから支援制度やサービスの対象範囲などを調べて把握しておき、疑問点などは専門家や行政窓口に相談するといいでしょう。