【闘病】完治しない難病だから、理解者の存在が大きかった。私のシェーグレン症候群
発熱、倦怠感にはじまり、関節痛、薬の副作用による外見の変化。指定難病・シェーグレン症候群と今なお闘い続けている高橋さん(仮名・女性)は、さまざまな症状の連鎖に見舞われました。国内の推計患者数は約7万人とそこまで数が多くない疾患だからこそ、そして完治しない難病だからこそ、彼女は周囲の理解を得ることの大切さを強調します。果たして、その真意とは? 闘病談話から探っていきます。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。
体験者プロフィール:
高橋さん(仮称)
千葉県在住、1983年生まれ。ハウスメーカー勤務(現在は休職中)。ハウスメーカー本社にて課長職を務めていたが、2018年にシェーグレン症候群と診断される。ほぼ2週間に1度通院し、数度の入院を経て、現在も治療に専念している。2019年6月に指定難病患者への医療費助成対象に認定された。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
シェーグレン症候群と診断されるまで
編集部
最初に、シェーグレン症候群と診断された経緯から伺わせてください。
高橋さん
2018年6月頃から微熱とだるさがあり、毎日症状があるため、近所の内科を受診したところ、風邪だと言われて薬を服用していました。しかし症状が改善されず、会社の近くの大学病院を受診したところ、過労と診断され漢方を処方されました。治すにはどうしたらいいか医師に尋ねると「今すぐに会社を辞めることです」と言われ衝撃を受けた記憶があります。その後漢方を飲み続けましたが症状は変わらず、会社の取引先の方に勧められて大学病院の総合診療科を受診したところ、膠原病の1つである「シェーグレン症候群」と診断されました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
高橋さん
シェーグレン症候群と診断した大学病院の医師からは「治療法はありません。ストレスなく毎日を楽しく過ごしてください。ストレスが良くないですから」と言われました。ただ、病名はわかったものの症状は改善されず、これまでの症状に加えて指の関節痛も出現し、倦怠感も日に日に強くなったため、「膠原病に特化した病院」ということで別の大学病院を紹介してもらい、そこで本格的な治療をようやく開始することができました。この病気は日本よりも欧米で研究が進んでいますが、未だに確立された治療法はまだありません。そのため症状に合わせた対症療法と、病気そのものへの治療として免疫抑制剤を服用し、治療を行っています。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
高橋さん
最初に病名を診断された時に、「現代では治せない病気だから上手く付き合っていくしかありません。合併症を起こしやすい病気だから、症状が酷くなるようなら国の難病にも指定されているので医療費補助が受けられますよ」と、サラッと一気に不幸な情報を告げられ、頭がボーッとしたことを覚えています。「上手く付き合うって何? 一生この微熱と倦怠感がつきまとうの? こんなに一生懸命真面目に生きてきたのになんで私だけ……」と、疑問や絶望が渦巻いていました。
さまざまな症状が押し寄せる正に「症候群」
編集部
シェーグレン症候群発症後、生活にどのような変化がありましたか?
高橋さん
まず、発熱と倦怠感が酷くなり、横になっていることしか出来ない日が増えていきました。指、手首、ひじ、肩の関節痛により、手指を使った行動がつらい時があり、瓶やペットボトルのふたが開けられない、重たいものが持てない。治療中は、ステロイドの副作用で「ムーンフェイス」「中心性肥満」「むくみ」があり、外見に影響が出るため、人に会うのが億劫になって、外へ出かける意欲もなくなりました。また、ステロイドの副作用で「白内障」になってしまうという……。良くなるために薬を飲んでいるのに、新しい病気になるという負のスパイラルに陥りましたね。同じく、ステロイドの副作用で「ステロイドうつ病」も発症し、不眠と精神的に不安定になったり、免疫抑制剤を服用しているのでコロナ禍以前から季節を問わずに人混みではマスクを着用する生活をしていました。
編集部
闘病を続ける心の支えはなんでしたか?
高橋さん
主治医の先生の存在が私の大きな支えでした。女性の先生で、私の話をよく聞いてくれます。大学病院なので患者数も多いし、忙しかったと思いますが、生活をしていて困っていることや副作用で辛いこともきちんと聞いてくれ、対応策を一緒に考えてくれます。病状や治療について、厳しいことも正直にハッキリと明確に言ってくれます。シェーグレン症候群には寛解を目指すための専用の薬が存在しないため、ほかの膠原病などで使用される薬を、私の症状に合わせて検討し、寛解を目指して私にベストな治療法をいつも考えてくれます。一見当たり前に聞こえるかもしれませんが、完治しない難病では本当にありがたいことなのです。先生と出会えていなかったらここまで耐えられなかったと思っておりとても感謝しています。
編集部
そのほかにも、なにかありますか?
高橋さん
一緒に暮らしている彼が変わらずにいてくれること、インスタグラムのフォロワーさんからのメッセージも心の支えになりました。会ったことも無い私を、心の底から心配してくれる人がたくさんいて、また同じ膠原病に罹患している方ともたくさん出会えて辛さを分かり合えることも支えになっています。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
高橋さん
毎年5~6月あたりから体調を崩すことが多く、去年も同様にあまり芳しくなく、仕事は休職しています。ステロイドを多めに服用する治療を行いながら、普通の生活ができるよう症状改善に努めています。
シェーグレン症候群を多くの人に知ってほしい
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
高橋さん
「自分が思っているよりも疲れているから、自分をもう少し大事にして」と伝えたいです。性格上、私は0か100かで物事を実行したいタイプです。そのため、やるならば全力投球してしまいがち。周りから相談されたり仕事を頼まれたりすると請け負ってしまうことが多く、そうなると自分よりも周りを優先してしまいます。普通なら「もう無理」と思うのかもしれないですが、私の場合、無理をしている感覚が全くなく、自分の事よりも仕事を優先してしまっていたので。
編集部
シェーグレン症候群を意識していない人に一言お願いします。
高橋さん
いつ誰がなるかわからない病気ですので、体の変化に気付いたら病院を受診してほしいです。治療は早ければ早い方が良いと思うからです。また、これはシェーグレン症候群を含む膠原病全般に言えることなのですが、疲れやすかったり、倦怠感の影響から周囲に「怠けている」と誤解されてしまったりすることが多くあります。病気がわかるまでの間、「自分に甘い」「休めて良いよね」「みんな疲れているのは一緒」といったキビシイ言葉で私はたくさん傷ついてきました。そのため、頭の片隅にでも「もしかして病気による影響?」という考えを多くの方に持ってほしいと思います。いつ誰がなるかわからず完治しない病気だからこそ、アナタの大切な人が同じ状況だったらどうするかを考えて発言してほしいと強く思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
高橋さん
シェーグレン症候群は医師によって捉え方が全然違うのか、理解ある先生に出会えるまで私も見放されたような想いをしてきました。検査をしても炎症数値(CRP値)が低かったり、リウマチのように見てわかるような関節の症状があるわけではないので、医師の中には「健康な人」扱いをされ、治療も検討しない方もいました。私のように「じつは辛い思いをしている」人がたくさんいます。話を聞いて力になってあげてほしいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
高橋さん
シェーグレン症候群という病気は、現代では治せない難病です。私もこの病気を患って、この世の終わりみたいな気持ちになり、心がとても沈んでいました。そんな時に主治医や私のパートナー、インスタグラムを通じて「私1人じゃない」という心の繋がりを得て、生きるパワーをもらいました。だからもし発病しても1人じゃないのだと思ってほしいです。そして、この記事を読んでいただいた事で頭の片隅にこういう病気もあるのだと覚えてもらえると嬉しく思います。その記憶が自分もしくは大切な人の力になるかもしれません。
編集部まとめ
取材を通じての感想として、シェーグレン症候群は、高橋さんを始めとする患者さんは他人からの誤解で傷ついたり、治せない病気と知って絶望を抱いたり、心身ともに辛い病気だと感じました。一生かけて付き合っていかなければならない病気だからこそ、焦らず治療を続け、身近な人が支えてあげることがとても大切です。