今すぐどうにかしたい…片頭痛を和らげる方法は? 片頭痛はコントロールできる時代? 【医師に聞く】
通勤電車の中や会議中、プライベートを楽しんでいるときなどに突然起きる片頭痛。人によっては、症状が強く何にも手がつかなくなってしまい、繰り返し頭痛や悪心、嘔吐などのつらい症状が起きるため、強いストレスを感じてしまいます。そこで、今すぐどうにかしたい!と思ったときに知っていてほしい、自分でできる「片頭痛の軽減法」と、片頭痛を放置せずに受診してほしい理由を「仙台頭痛脳神経クリニック」の松森保彦先生に聞いてみました。
監修医師:
松森 保彦(仙台頭痛脳神経クリニック 院長)
山形大学医学部卒業。国内外の大学病院や脳神経外科病院で診療経験を積んだ後の2015年、宮城県仙台市に「仙台頭痛脳神経クリニック」開院。受診の敷居を低くし、頭痛のチーム医療にも取り組んでいる。医学博士。日本頭痛学会認定専門医・指導医・代議員、日本脳神経外科学会認定専門医、日本脳卒中学会認定専門医、日本認知症学会認定専門医。仙台市医師会理事。
片頭痛は「冷やして・安静にする」
編集部
ズキズキする片頭痛がしたとき、何をしたら効果的でしょう?
松森先生
本来なら受診していただきたいところです。ですが、「受診までの応急処置」としてできることもありますので、その前提でお話ししましょう。
編集部
わかりました。取り急ぎできることが知りたいです。
松森先生
「ズキズキ」「ガンガン」する片頭痛だとしたら、代表的な応急処置は、以下のような方法でしょうか。
・冷たいタオルなどで痛いところを冷やす
・刺激の少ない「静かな暗い場所」で休む
・市販の頭痛薬を服用する
編集部
これらの処置が有効な理由は?
松森先生
患部を冷やす目的は、「血行を鎮める」ことです。片頭痛のリズムが脈拍と同期するのは、血管の拍動によって周辺の神経を刺激するためと考えられています。冷やすことで血管が拡張しなくなれば、神経を刺激しなくなるでしょう。
編集部
一方、周囲からの刺激を避けるのはどうしてですか?
松森先生
片頭痛の仕組みは複雑なのですが、刺激を受けると片頭痛が悪化することが多く、特に光、音、においによる刺激が影響します。薬が手元にない場合には、まず「刺激の少ない、暗くて静かな環境」で安静にしてください。
編集部
続けて市販薬です。片頭痛でも「頭痛」と書かれていればいいのでしょうか?
松森先生
基本的には構いません。ただし、市販薬を使い過ぎてしまうと、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)という別の頭痛が新たに起きてしまうことがあります。痛み止めを月に10日以上服用している方は、注意が必要ですね。また、前述の応急処置も含め、市販薬で効果が得られなかった場合は、早めに受診してください。場合によっては、危ない病気が頭痛の原因になっている可能性もあります。
自分の痛む原因を知って予防する
編集部
できれば、「片頭痛を起こさないようにする」方法があるといいのですが。
松森先生
「頭痛ダイアリー」を活用して自分の頭痛が起きやすい状況を把握すると良いでしょう。頭痛ダイアリーは頭痛の頻度や程度、内服薬の使用状況を記録するものですが、天気や食生活など1日の行動で頭痛のきっかけになることがないかをメモすることで、月経前や排卵日周辺など、頭痛がひどくなりやすい時期がわかるようになることもありますし、早めに薬を服用した方が良いタイミングをつかめるようになります。
編集部
記録することがたくさんありすぎてメモしきれません。
松森先生
医師が主に確認しているのは、前述のような「片頭痛の日数」と「薬を服用した頻度」です。ですから、少なくともこの二つはメモしていただきたいです。「頭痛ダイアリー」の主な目的は、患者さん自身が頭痛の起きやすい状況を把握するために自己評価することと、医師が経過をみながら適切な治療計画を立てることの2つです。
編集部
ほかにも予防法があったら教えてください。
松森先生
寝不足と寝過ぎは、それぞれ片頭痛の誘引です。片頭痛が起きにくい1日の睡眠時間は「6.5~8.5時間」とされています。したがって、平日の寝不足を休日の寝だめでカバーするような生活は好ましくありません。
編集部
緊張しているときは、むしろ片頭痛がしないように思います。
松森先生
そうかもしれません。むしろ、気が張った状態から解放されて「ホッとした」後に頭痛を感じることが多いのではないでしょうか。もし、その傾向がはっきりしていれば、早めにお薬などをのんでみてもいいでしょう。例えば、プレゼン終わりや試験後などの「リラックスモードに切り替わったタイミング」ですね。
一番の近道は、医師による処方薬
編集部
頭痛の中には「怖い病気が含まれる」ということでしたよね?
松森先生
その可能性も考えられるのですが、病院に来る患者さんのほとんどが検査をしても異常が見つからない頭痛です。もちろん、検査も大事ですが、頭痛による生活への支障の改善を図ることが大切です。予防する新薬の登場により、片頭痛は「きちんと診断して適切な治療を行えば、かなり改善できる」ようになってきました。ですから、これまで良くならなかった頭痛を諦めずに、困ったらぜひ受診してください。
編集部
一方、セルフケアで頭痛が収まれば、「怖い病気」ではない?
松森先生
違います。軽い頭痛、市販薬が効く頭痛にも怖い病気が隠れていることもあります。頭痛もちの方でも、いつもと違う頭痛の場合には、医師に相談しましょう。また、先ほど申し上げた、「市販薬の使いすぎによる薬害」も懸念されますしね。ぜひ、自分の頭痛は何か、また自分に合ったセルフケアとは何かがわかってから、取り組んでみてください。間違った情報を信じてしまうと、かえって悪化する恐れもあります。
編集部
他方で、急を要する病気が見つかることもある?
松森先生
繰り返しになりますが、軽い頭痛でも危ない病気が原因になっていることもあります。順番としては、「危険な頭痛ではない」と診断された後で、正しいセルフケアに取り組むべきでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
松森先生
つらい痛みで生活に支障をきたしていた片頭痛は「効果的な新薬で予防しながらコントロールしていく時代」になりました。「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」これら3剤の登場により、今までの頭痛診療が大きく変わった印象です。上手なセルフケアを行いつつ、生活に支障をきたす頭痛にはより確実な治療法がありますので、お気軽にご相談ください。
編集部まとめ
片頭痛は病院に行ってもなかなか治らないもの。その前提でセルフケア方法を探ってみたのですが、どうやら、事情が変わって片頭痛専用の画期的な新薬が登場したようです。もちろん、新薬の処方条件を満たすとは限りませんが、その人に合ったアドバイスや勘違いの是正はしてもらえます。片頭痛が治まって、「今なら余裕があるな」というときほど、積極的に受診してみてください。
医院情報
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診療科目 | 神経内科、脳神経外科 |