【闘病】1日15回の下血で判明した潰瘍性大腸炎「あのとき放置しなければ」
体調について「あれ?」と思っても、「放っておけば治るだろう」「仕事もあるし」と様子を見た経験は誰にでもあると思います。もしかしたらそれは、身体からの病気のサインかもしれません。今回は、2018年に「潰瘍性大腸炎(全大腸炎型)」と診断され現在も治療中のしょうた(仮称)さんに、外見からはわかりにくい病気とともに過ごすリアルな日常を伺いました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年9月取材。
闘病者プロフィール:
しょうたさん(仮称)
埼玉県在住。1993年年生まれ。2018年3月に潰瘍性大腸炎(全大腸型)と診断を受ける。自身の体験についてSNSなどで発信し、多くのフォロワーを持つ。noteにて「潰瘍性大腸炎と僕」というシリーズ記事を投稿中。病気について「news zero」「サタデーステーション」「ZIP!」などのテレビ番組で取り上げられる。
記事監修医師:
梅村 将成
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「がんじゃなくて良かった」が一転、治らない病気と判明
編集部
潰瘍性大腸炎とはどういう病気ですか?
しょうたさん
簡単にいうと「大腸の粘膜に炎症が起き、ただれて血が出る」病気です。炎症が腸管壁の深くまで進行すると、腸からの大量出血や、腸に孔(あな)が開くこともあります。ひどくなると腸以外の全身にも症状が出ます。状態が安定しているときは健康な方と同じように生活できるのですが、悪化すると激しい下痢や大量の血便、発熱や強い腹痛、関節痛などが現れます。ほかにも、発症から10年以上経過すると大腸がんのリスクが高くなるというデータもあるようです。
編集部
潰瘍性大腸炎が判明した経緯について教えてください。
しょうたさん
2017年秋頃からたまに下血するようになっていました。ただ、気になってはいたものの、もともと痔もあったのと、若いからすぐに治ると勝手に思い込み、放置していました。しかし、治るどころか徐々に悪化し、冬頃には腹痛もひどくなり、お手洗いに行くたびに下血するようになりました。それが1日に10〜15回も続きました。ほかにも、高熱、倦怠感、全身関節痛、めまい、体重減少などの症状がありました。毎晩腹痛で眠れないので寝不足にもなりました。
編集部
それはかなりキツそうですね。
しょうたさん
さすがにおかしいと思い、地元の病院で内視鏡検査をすると、診断が難しいと言われて総合病院を紹介され、その時に「おそらく潰瘍性大腸炎だろう」と言われました。さらに紹介された大学病院に行き、そこで初めて「潰瘍性大腸炎」と診断を受け、そのまま緊急入院となったのです。入院当日の炎症の数値(CRP)は20を超えていて、医師がびっくりしていました。
編集部
どんな治療を受けましたか?
しょうたさん
潰瘍性大腸炎は原因が不明で「完治」するということはないので、大腸の炎症を抑えること、そしてその状態を維持することが治療目標になります。僕の場合は発症して1年8ヶ月の間に5回入院しました。
編集部
4カ月に1回ぐらいのペースになりますね。
しょうたさん
初めての入院では1ヶ月間の絶食、内視鏡検査、首からカテーテルという管を通しての栄養導入、プレドニン点滴、タクロリムス、整腸剤の内服などを行いました。その後もペンタサ注腸(肛門から薬剤を注入する)、アサコール、シンポニー、エンタイビオなどの薬を用いた治療を受けたのですが、症状は悪化したままでした。現在は治験薬での治療をしており、寛解期に入っています。
編集部
病名がわかったときの心境を教えてください。
しょうたさん
「潰瘍性大腸炎」という言葉を聞いたのは初めてでした。聞いた直後はまず「がんじゃなくてよかった」と安心したのですが、後に、治らない病気と知って落ち込みましたね。でも、ずっと落ち込んでもいられないので、「神様が与えてくれた試練。試練は乗りこえられる人にしかやってこない」と、前向きに考えるようになりました。
「潰瘍性大腸炎」との生活
編集部
潰瘍性大腸炎になってから、生活は変わりましたか?
しょうたさん
生活はだいぶ変わりました。絶食を経験して、食べられることは本当に幸せだと感じました。発症前は「食」にあまり感謝していなかったのですが、今では何を食べるにも感謝して食べています。
編集部
食事で気を付けていることは?
しょうたさん
食事内容に関しては脂質が多いものや刺激の強いもの、アルコール類などは摂取しないようにしています。脂質は1日に30gまでと医師から言われているので、スーパーに行くと必ず裏の食品成分表示を確認します。もともと食べ歩きが趣味だったのですが、発症後はできなくなったのが残念です。
編集部
外出する時は何か気をつけたりしていますか?
しょうたさん
いつお腹が痛くなるか分からないので、外出の度にお手洗いを必ず確認します。お手洗いが1箇所しかないお店だと、いつでも入れるわけではないのでハラハラします。症状が悪化している時期は、入浴中や睡眠中もお手洗いに行くので、落ち着くことがありません。もちろん外出なんてできません。どうしても外出しないといけない場合は、おむつをして行きます。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
しょうたさん
彼女と家族です。彼女と付き合って半年ほどで発症し、そこからずっと側にいてくれています。緊急入院になったときも、片道1時間以上かかるところから入院に必要な荷物を持って来てくれて、土日は必ずお見舞いにも来てくれました。
編集部
良いパートナーですね。
しょうたさん
医師から「治療方法がないので大腸を全て摘出しましょう」と言われた時は、彼女が「セカンドオピニオンを受けよう」と言葉をかけてくれました。それがきっかけでセカンドオピニオンを受け、今、僕は大腸全摘出をせずに生きています。あの一言がなければ今頃、大腸全摘出していたかもしれません。発症から2年半後に温泉旅行に行ったとき、彼女が泣きながら「元気になって本当によかったね、こうやって旅行ができるなんて夢みたい」と言ってくれた言葉がとても嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
編集部
ご家族はどのように支えてくれていますか?
しょうたさん
家族は両親と弟がいて、今は離れて暮らしていますが、僕の入院中は毎回、車で7時間かけてお見舞いに来てくれます。僕が働けない時期は、たくさん仕送りもしてくれました。毎回ダンボール2箱くらいあって、あまりの多さに彼女とびっくりしています。仕送りは、今でも時々してくれています(笑)。すごく支えてもらっているので、これからもっと親孝行・弟孝行をし、感謝の気持ちを伝えていきたいです。
「潰瘍性大腸炎」になって今、思うこと
編集部
もし昔の自分に声をかけるとしたら、なんと言いますか?
しょうたさん
早期発見が大事と聞きますが、本当にそう思いました。1年半で大腸内視鏡検査を20回以上受けたり、できないことがたくさん出てきたりしたので、「下血があったら当日に病院に行け。若いからって放っておくと大変なことになるぞ」と伝えます。「早く病院に行っていたらこんなに辛い想いをしなくてもよかったのかも」とは、今でも思うことがあります。
編集部
現在の生活について教えてください。
しょうたさん
2020年1月から治験薬の治療を開始して、症状は落ち着いています。お手洗いも1日3〜4回で、腹痛もありません。ご飯を食べに行ったり、旅行したりも、体調と相談しながら少しずつできるようになりました。
編集部
では、潰瘍性大腸炎を意識していない人に一言お願いします。
しょうたさん
僕は「若いから大丈夫」「仕事優先」と思って3〜4ヶ月間病院へ行きませんでした。そしてこんなに辛い思いをしないといけなくなりました。少しでも身体がおかしいなと思ったら病院へ行ってください。早期発見は本当に大事です。また、潰瘍性大腸炎の辛さは、外見では判断できません。もし身近に潰瘍性大腸炎の方がいて、いつもより元気がないなと思ったときは「体調大丈夫?」と声をかけてあげてほしいです。その一言で安心します。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
しょうたさん
コロナですごく大変な中、いつも持病を持っている僕たちのことを治療して頂き本当にありがとうございます。今、潰瘍性大腸炎は完治しないと言われていますが、いつか完治できる薬が完成することを信じています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
しょうたさん
僕の体験から、少しでも「潰瘍性大腸炎」という病気のことを知っていただけるととても嬉しいです。不便なことはありますが、僕はこれからも周りに感謝しながら、一生懸命生きていきます。ありがとうございました。
編集部まとめ
全体を通して、食べることや周りの人たちへの感謝を口にしていたしょうたさん。完治しない病気と向き合いながら前向きに生きていく姿勢が印象的でした。そして「まわりに同じ病気の人がいたら、気にかけてあげてほしい」、「少しでも身体がおかしいと思ったら病院に行ってください」という、闘病経験者ならではのメッセージを伝えてくれました。