ほくろ除去は「秋から冬」がベスト。治療前に知っておくべきこと
ほくろを除去するとき、いつ治療を受けるべきなのか。実は適した時期があると言います。ほかにもレーザー治療の安全性やほくろを除去したい身体の部位による傷痕の残り易さの差などほくろ除去を考えている人が知っておくべき知識について、松井クリニックの松井潔先生に教えてもらいました。
監修医師:
松井 潔(松井クリニック 院長)
北里大学医学部卒業。横浜市立市民病院、北里大学病院救命救急・災害医療センター、湘南鎌倉総合病院などへの勤務を経た2000年、横浜市都筑区に「松井クリニック」を開院。同時に医療法人松井会松井クリニックの理事長へ就任。現在、プライマリ・ケアから高度難治医療まで幅広い地域医療に努めている。日本形成外科学会専門医。その他、各種関連医学会の会員。
ほくろ除去は「秋から冬」がベストタイミング
編集部
ほくろを除去したい場合、時期はいつでもいいのでしょうか? 季節によって、向き不向きがありますか?
松井先生
最近では、ほくろ除去の技術も進化し、どなたでも気軽に治療を受けていただくことができるようになりました。しかし、ほくろを除去する際には気を付けなければならないことがあります。それはほくろを除去するタイミング。秋から冬がベストです。なぜならその時期は年間で紫外線量が少ないため、術後、紫外線の影響を受けにくいからです。
編集部
紫外線とほくろには、どのような関係があるのですか?
松井先生
ほくろとは、メラニン色素を含むメラノサイトという細胞が周囲よりも多く集まった母斑(ぼはん)のことで、医学的には「色素性母斑」と呼ばれています。メラニン色素は、紫外線に強く反応して黒くなります。そして、このメラニン色素の沈着によってできた細胞がほくろなのです。「ほくろを取ってしまえば、紫外線の影響は受けないのか」と思われるかもしれませんが、実は、ほくろを除去した場所は紫外線に対して、一時的に敏感になるので注意が必要なのです。ケアを怠ると色素沈着を起こし、黒くなってしまう可能性もあります。
編集部
なぜ、ほくろを除去したあとも、紫外線に敏感なのですか?
松井先生
ほくろを除去する方法として、医療レーザーを活用する治療法がありますが、この場合、皮膚の内部に少量のメラノサイトが残る場合があるからです。誤解しないでいただきたいのですが、これは決して治療の失敗ではありません。完全に除去しようとして、無理に深いところまでアプローチすると、患部がより広く深い火傷となってしまい、傷痕が残ってしまうかもしれません。そのため、あえて除去する深さを一定のところで止めているのです。
編集部
「少量のメラノサイトが残る」ということは、ほくろが再発することもある、ということですか?
松井先生
皮膚の内部にメラノサイトが残ってしまった場合、ほくろが再発することもあります。しかし、もう一度レーザーを当て直せば、消し去ることができます。1回目で取りきれない場合、2回目のレーザー照射は1〜3か月後が良いでしょう。雑草と同じで、あまり間隔を空けすぎると、ほくろが再び大きくなってしまいます。とはいえ、間隔が狭すぎると傷痕が深くなってしまいます。皮膚の状態にもよるので、2回目に照射するタイミングは、医師と相談するとよいでしょう。
レーザー治療の安全性
編集部
レーザーによるほくろ除去とは、どのように行うのですか?
松井先生
レーザー治療では、専用機械による特殊な光を肌の表面に直接照射し、患部の色素細胞を破壊します。使用する機械の種類はさまざまありますが、現在、メインとして用いられるのは「炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)」です。これは皮膚に含まれる水分を蒸散し、ほくろの原因となる母斑細胞を焼き切る方法です。
編集部
レーザーによるほくろ除去のメリットはなんですか?
松井先生
痛みが少なく簡単に治療ができることや、術後の傷の治りが早く、仕上がりもきれいであること、また、周囲の正常組織へのダメージがほとんどないため、リスクが軽減されることなどが挙げられます。当院でレーザーによるほくろ除去を行う場合、通常は麻酔のテープやクリームを使用します。そのため、痛みを感じることがほとんどありません。しかしすでに述べた通り、完全に除去しようとすると皮膚に傷痕が残ることもあります。そのため、「どの程度の深さにとどめるか」は、治療前に、医師としっかり相談する必要があるでしょう。
編集部
レーザー以外には、どのような除去手術がありますか?
松井先生
ほくろを完全に取り除く「摘出手術」があります。しかしこちらは、根元からほくろを取り除くことができるものの、局部麻酔を注射してからメスで切除して縫合するため、術後4〜5日後に抜糸しなければなりませんし、2~3か月間テーピングが必要です。レーザー治療に比べて色が濃く、盛り上がっているほくろを除去するには適していますが、患者様の負担になることも多いため、当院ではどちらの方法が良いか、患者様と相談しながら決めています。
編集部
ほくろの部位によっても、ほくろ除去の方法が違うのですか?
松井先生
例えば、顔にできたほくろを除去するにはレーザーの方が適していますが、部位によっては摘出手術の方が良いこともあります。そのあたりは患者様の希望やライフスタイルなどを聞きながら、事前カウンセリングで綿密に打合せしています。
ほくろ除去の前に知っておくべきことは?
編集部
レーザー治療の場合、どのようにほくろが取れていくのでしょうか?
松井先生
ほくろはその場で焼き切ってしまうので、術後すぐになくなります。ただ、レーザーを照射した部分は傷のようになっていますので、約1週間から10日程、軟膏を塗布してもらっています。処置の時には麻酔を使用しますが、麻酔が切れると若干痛みが出るかもしれません。しかし、時間が経つにつれて、治まっていきます。
編集部
レーザー治療は保険が使えるのでしょうか?
松井先生
日本では、レーザーによるほくろ除去は全例保険適用外です。自分でほくろを取るためのクリームや化粧品などを販売している企業もありますが、実際はとても危険です。こうした独自の方法で除去を試みたことで、火傷のようになったり、皮膚が化膿して、ひどい傷痕になる事例が多数報告されています。また元々皮膚がんである可能性もあります。ほくろの検査や除去は、必ず信頼できるクリニックで行ってください。
編集部
ほくろを除去する前に、知っておくべきことを教えてください。
松井先生
ほくろの大きさや深さ、盛り上がり具合によっては、電気メスやレーザー治療では対応できない場合もあります。まずは医療機関のホームページなどで治療内容や費用を確認してから、クリニックを選びましょう。クリニックを訪れたら、治療の効果やリスク、費用などについてしっかり説明を受け、確実にインフォームドコンセント(十分な説明を受けての合意形成)を行うことが重要です。また、傷痕をきれいにできるかは、医師の高度な技術が非常に大切です。その点、「日本形成外科学会専門医」がいる機関なら安心ですので、クリニックを選ぶ際の参考にしてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
松井先生
ほくろを除去する部位によって、傷痕の残りやすさは大きく違います。一般に、顔のほくろはきれいに取れることが多いのですが、上腕や背中、前胸部は傷痕が残りやすいとされています。また、顔のなかでも目の周りなど皮膚が薄いところはきれいに治りやすいのですが、反対に、鼻の下は傷が盛り上がりやすい部位です。一旦傷痕になってしまうと、その後治らないケースもあるので、ほくろ除去を考えている場合は、カウンセリングでしっかり説明を受けると良いでしょう。
編集部まとめ
コロナ禍、マスク生活が定着しているため、術後の傷痕を隠せるとして、顔のほくろ除去を考えている方も多いのではないでしょうか?傷痕を残さないためには、信頼できるクリニックを探し、除去のタイミングや方法など、医師と相談すると良いでしょう。
医院情報
所在地 | 〒224-0034 神奈川県横浜市都筑区勝田町324-3 |
アクセス | 横浜市営地下鉄「仲町台駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 内科、小児科、皮膚科、形成外科、整形外科、美容外科 |