コロナ禍における在宅介護の向き合い方、感染対策で注意すべき点は?
コロナ禍になり、介護の状況もいろいろと変化しました。介護をする際は、やはり人と人との距離が近い分、コロナウイルス感染に対する不安を抱く人も多いのではないでしょうか。しかし、状況によっては介護サービスの利用を止めることはできない、家族だけで介護するのは限界があるなど、さまざまな問題があると思います。コロナ禍での介護現場の問題点を、感染対策とともに「介護福祉士」の冨松さんに解説していただきました。
監修介護福祉士:
冨松 智(介護福祉士)
介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームに勤務。その後、サービス付き高齢者住宅に、サービス提供責任者として4年間従事。働き方改革と介護業界の人材教育の問題解決にむけて、2020年に介護従事者対象のオンライン相談を開設。将来の目標は、介護業界のリーダー育成と人材教育。
外出自粛により運動機能の低下も懸念
編集部
コロナ禍で在宅介護は、どのように変化したと感じていますか?
冨松さん
2020年4月の緊急事態宣言の際は外出自粛要請により、訪問介護の利用控えが非常に増えました。理由としては、介護者との接触によって感染リスクが上がることを懸念した人々が増えたせいだと思います。その分、家族が代わりに介護をするようになり、負担が増えた人もいるのではないでしょうか。
編集部
そうなったことで問題になったことはありますか?
冨松さん
外出自粛によって、家族だけでなく要介護者も外に出る機会が非常に減りました。そのため、運動機能が低下してしまった人が増えたと感じます。
編集部
介護をしているご家族は、どんな不安を感じていましたか?
冨松さん
2020年4月の緊急事態宣言下では、買い占めが問題になり、介護している人もマスクやトイレットペーパーなどの日用品の供給不足を心配されていました。心理的ストレスを感じて不安を抱いている人も多い印象を受けました。
介護する側もされる側も感染対策を徹底
編集部
コロナ禍では、どのようなことに気をつけて介護をおこなっていますか?
冨松さん
私の勤めている施設に併設するデイサービスセンターでは、検温やマスク、手洗いうがい、アルコール消毒を職員に義務付けていました。また、PCR検査を積極的におこなっています。休憩する際も、職員が3人以上の密にならないよう気をつけています。
編集部
利用者側に対しては、どのような感染予防をしていますか?
冨松さん
外出の際のマスクや外出から戻られた際の手洗いうがい、食事前のアルコール消毒などは、きちんとおこなってもらうようお願いしています。また、食堂などでご飯を集まって食べる際は、テーブルにアクリル板を設置して飛沫感染予防を徹底しています。
編集部
コロナ禍ならではの、自宅で介護する際の注意点はありますか?
冨松さん
被介護者は高齢であり、介護者よりも免疫力が低いため、感染リスクが高いのです。そのため、ご家族などの介護者が感染源にならないように注意が必要です。外出時は必ずマスクをして、帰宅後は手洗いうがいを徹底していただくようにお願いします。
家族もしっかりとした感染対策を
編集部
ご家族が要介護者の異変に気付いた場合は、どうしたらいいですか?
冨松さん
新型コロナウイルスの症状は、発熱や倦怠感、味覚や嗅覚の異常など様々です。要介護者から体調や気分不良の訴えがあるようでしたら、医療機関に相談するようにしてください。
編集部
コロナ禍になって1年が過ぎ、最近の介護に変化はありましたか?
冨松さん
3回目の緊急事態宣言が出されましたが、外出者増加の報道がされているように、世間のコロナウイルスに対する気の緩みを感じます。感染者は減少傾向にありますが、決してコロナウイルスのパンデミックは終息していません。介護をおこなう際も、引き続き感染対策を徹底してほしいと思っています。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
冨松さん
高齢者は、免疫力が高くないため、「感染させてしまったらどうしよう」と、大きな不安を感じているご家族も多いと思います。介護施設では、細心の注意を払って介護にあたっていますので、精神的不安が大きいときは、選択肢の一つとして、ご利用を検討していただきたいと思います。
編集部まとめ
「コロナ禍で介護サービスを利用しづらい」、「介護士さんにお願いしづらい」などの理由から、家族内で介護をおこなう家庭も増えているようです。しかし、ご家族が感染源になってしまうことも考えられるので、正しい情報を元に感染対策をおこないながら、介護をしていきましょう。