いろいろな種類を見かける美容系レーザー、どんな違いがあるの?
Qスイッチ、トーニング、ルビー、フラクショナル、YAGなど、美容系レーザーは専門用語のオンパレードです。これだけ種類が多いと、そのすべてを把握するのは不可能と思えてしまうほど。そこで、レーザーについて、素人でもわかる話を「Original Beauty Clinic GINZA」の佐藤先生にお願いしてみました。
監修医師:
佐藤 玲史(Original Beauty Clinic GINZA 院長)
東京医科歯科大学医学部医学科卒業。大手美容外科の各院で院長や顧問などを歴任後の2020年、東京都中央区銀座に、“人にもともと備わっている美しさを引き出してあげたい”という思いを込めた「Original Beauty Clinic GINZA」を開院。日本美容外科学会認定専門医。日本美容外科学会(JSAS)、日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会、国際抗老化再生医療学会、日本再生医療学会の各会員。
種類よりも、当て方に注目
編集部
肌美容で用いられるレーザー機器って、多種多様ですよね?
佐藤先生
それぞれ役目や特徴があるものの、明確には分かれていません。1つのレーザーをいろいろな用途で使います。その前提で、最も出力の高い機器となると、「Qスイッチルビーレーザー」や「QスイッチYAGレーザー」でしょうか。それぞれ「ルビーレーザー」や「YAGレーザー」と省略されることもあります。
編集部
高出力のほうが、より細胞を破壊できるイメージです。
佐藤先生
そのとおりですが、熱により周辺組織に炎症を起こすと、別の色素沈着となって現れることがあります。そこで、照射時間を極端に短くしたレーザーが、「ピコレーザー」や「ナノレーザー」です。ピコは「1兆分の1」、ナノは「10億分の1」を意味する単位です。
編集部
ピコレーザーやナノレーザーは、細胞を破壊するレーザーなんですか?
佐藤先生
破壊する場合もあれば、細胞内の色素だけを狙い撃ちにすることもできます。レーザーごとに目的が違うというよりも、「当て方」なんですよね。当て方を変えることで、多彩なニーズに対応できます。
編集部
「当て方」について、もう少し詳しく教えて下さい。
佐藤先生
一般的なレーザーのイメージというとピンポイントの「点」ですが、じつは「面」で当てることも可能です。つまり、照射面積を変えて調整することができるというわけです。照射面積が広がった分、レーザーの威力を意図的に弱められます。また、散弾銃のように、複数の射線で撃てるタイプのレーザーもありますよ。「フラクショナルレーザー」と呼んだりします。
編集部
「光治療」という言葉もみかけますが、レーザーとはどう違うのでしょうか?
佐藤先生
光治療は、「面」で当てる治療方法の一種です。なお、光の中から単一の波長だけを取りだしたものがレーザーです。美容系レーザーには紫外線が含まれないため、シミなどの治療を効果的に進められます。ちなみに、光治療に用いられる光も、紫外線をフィルターによって除去しています。
機器が先ではなく、症状やライフスタイルが先
編集部
レーザーというと、「熱で細胞を焼く」イメージが強いです。
佐藤先生
そうですね。しかし、実際には、「熱で細胞を焼く」ほか、「衝撃波で色素だけを分解する」「あえて付けた細かな傷により自然治癒力を呼び覚ます」など、多彩な使い方をします。そして、その使い分けはレーザーの種類に限らず、「当て方」でも対応できるということです。例えば同じピコレーザーでも、出力を弱めたものが「ピコトーニング」ですし、射線を分散させれば「ピコフラクショナル」になります。
編集部
そうなると、患者がレーザーの種類を選ぶ必要はないですよね?
佐藤先生
本当に正しい知識を得たうえで選択していれば別ですが、誤ったイメージに固執していると逆効果になりかねません。また、「友人からのオススメ」も同様で、症状がその方と一緒かどうかはわかりません。結論としては、患者さんの症状ごとに「使うレーザーも当て方も違う」ということです。
編集部
たとえば、肝斑かシミかでも違うと?
佐藤先生
症状の違いもそうですし、患者さんのライフスタイルによっても変わるでしょう。治療にあまり時間を費やせないなら、強いレーザーで短期集中型という手もあります。一方、定期的な長期通院が可能なら、弱いレーザーによる長期分散型も選択肢に加わってきます。
編集部
そうした説明は、どの医療機関でもおこなっているのでしょうか?
佐藤先生
なんとも言えないですね。少なくとも、十分な説明なしに、いきなり治療を始める医院やサロンは、避けたほうがいいでしょう。なお、当院では、1時間ほどの事前説明をおこなっています。
わかるまで聞く、わからなかったらやらない
編集部
結論としては、先にレーザーの種類ありきでなく、症状によるということですか?
佐藤先生
そういうことになります。症状の診断は、主に視診によって付けていきます。加えて、ダウンタイムの考え方や通院環境を話していただけると、よりマッチした治療方法に結びつけられるでしょう。前述した、短期集中型か長期分散型かといった治療選択肢ですね。
編集部
患者側も最低限の知識は持っておいたほうがよさそうですね。
佐藤先生
ある程度は必要だと思います。また、疑問を疑問のままで残しておかないことも重要です。「そういうものなんだ」という勝手な思い込みや、「へたな質問をしたら恥ずかしい」などの遠慮はせず、納得がいくまで質疑を繰り返してください。
編集部
「やっぱりレーザーは嫌だ」「難しくて付いていけない」という選択肢もアリですか?
佐藤先生
もちろんアリですし、十分な効果のあるお薬を処方するものの、やはり限度があります。その判断を、担当医と話した上で決めるのであれば、それが最終結論なのでしょう。しかし、インターネットなどの情報を鵜呑みにし、「先に治療方法ありき」で臨まれると、おそらく後悔されると思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
佐藤先生
シミなどのレーザー治療は、思いのほか流動的です。例えば、人に会う機会の多い方なら、治療跡が目立たないように治療を進めるべきでしょう。もちろん、できることとできないことがあるものの、「話しあって決められる医療機関」を選んでみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
美容レーザーの目的は、「熱」「衝撃」「自然治癒」に分かれるようです。治療を受けるに際し、まずは、この別が付けられるようにしておきましょう。レーザーの名前からでは区別ができないこともあるので、“目的”そのものを聞いておくことが肝要です。加えて、「点」「面」「複数射線」という3種類の当て方があるということも覚えておきましょう。そして、どの組み合わせが自分に一番合っているのか、合理的な説明を期待します。説明に納得がいかなければ、ある意味、運任せです。運任せでは、確実な効果が得られないかもしれません。
医院情報
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アクセス | 東京メトロ「銀座一丁目駅」6番出口 徒歩1分 東京メトロ「京橋駅」3番出口 徒歩3分 東京メトロ「銀座駅」C8出口 徒歩5分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科、美容整形外科 |