【漫画付き】せき止めには「はちみつコーヒー」がいいって 本当?
すでに「ハニーラテ」などの名称で商品化されている、はちみつ入りのコーヒー。昨今、せき止め効果が期待できるとして、ワイドショーなどでも取り上げられているようです。はたして、その真相やいかに。「江北ファミリークリニック」の杉村先生に、考えられる医学的な根拠などを伺ってみました。
監修医師:
杉村 久理(江北ファミリークリニック 院長)
咳止めにはちみつ入りコーヒーが効果的な理由
編集部
テレビドラマなどをきっかけに、「はちみつコーヒー」が注目されているようです。
杉村先生
そのようですね。はちみつに関して言うと、豊富なビタミンやミネラルにより、自己免疫力を上げる効果が期待できます。また、はちみつがつくる過酸化水素には殺菌効果もありますので、ウイルスや菌の対策として有効かもしれません。世界保健機関(WHO)も、せきの緩和策として、はちみつの摂取を推奨しています。
編集部
一方のコーヒーには、どんな効果が望めるのでしょう?
杉村先生
カフェインは、肺の気道を広げるお薬に含まれるテオフィリンという成分と類似していて、同等の効果が望めます。場合によっては、せき止め効果が得られるでしょう。
編集部
そうなると、あながちデマとも言いきれませんね?
杉村先生
イランでおこなわれた比較対照実験では、「一般的なせき止め薬とコーヒーを飲んだグループ」より、「はちみつコーヒーを飲んだグループ」のほうが、良好な予後を得られたそうです。母集団は100人弱なので、なんとも言えないところですが。
編集部
はちみつは別として、カフェインが有効なら、はちみつティーでもいいのでは?
杉村先生
理屈からすればそうですが、この手の研究はそうそう行われないので、根拠に乏しいのが現状です。もし将来、きちんとしたエビデンスが示されれば、当院でも推奨したいところですね。
はちみつ入りコーヒーの気になる危険性や疾患リスクは
編集部
一方、「はちみつコーヒー」にデメリットや危険性はあるのでしょうか?
杉村先生
はちみつに含まれている、ボツリヌス菌による乳幼児の死亡事故が報告されています。厚生労働省も、「1歳未満の乳児にはちみつを食べさせない」よう喚起しています。ボツリヌス菌が「芽胞(がほう)」という皮で囲まれていると、乳幼児の未熟な消化器官では消化できずに、増殖を許してしまうからです。
編集部
カフェインの取りすぎも、よくないのですよね?
杉村先生
個人差はあるものの、カフェイン中毒や依存症になりかねません。また、カフェインによる不眠や消化器の不調、アレルギー、頭痛、高血圧なども考えられます。
編集部
はちみつに含まれる糖分も気になるところです。
杉村先生
世界保健機関(WHO)は、成人が1日に摂取する糖分を「25グラムまで」と推奨しています。はちみつなら、「ティースプーン2杯」程度ですね。しかし、WHOの基準は肥満や虫歯予防が目的ですから、厳しめのラインなのでしょう。糖尿病の懸念は、過度な常用でもしない限り大丈夫だと思います。
せき止めそのものが、本当はよくない
編集部
一般に、せきを止めたいときはどうすればいいのでしょう?
杉村先生
急なせき込みは、たんを含まない「空ぜき」であることが多いと思います。このような乾燥したせきには、「水を飲む」といいでしょう。アメやトローチが有効なのも、「唾液を出させて湿らせる」効果があるからです。
編集部
続いて、慢性的なせきについても教えてください。
杉村先生
自分でできる方法なら、「カリン酒」や「カリンのシロップ漬け」などが有名ですよね。カリンには喉の炎症を抑える効果が望めるため、漢方薬などでも使われています。もちろん市販薬などを用いてもいいのですが、せきには、「体内の悪いものを出す」という目的があることを忘れないでくださいね。危険信号の一種です。
編集部
せきが出る「怖い」病気には、どのようなものがありますか?
杉村先生
肺がん、タバコが原因のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、気管支炎、結核などいくらでもあります。呼吸に関わってきますので、無理にせきを止めるより、やはり受診して医師の判断を仰いでいただきたいです。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
杉村先生
せきは異常を知らせるサインですから、長引くようならきちんと調べてみましょう。せきによるつらさを緩和するのは仕方ないにしても、お薬のように飲むのは問題です。せきの根本原因が解消されませんので、慎重に判断してください。
編集部まとめ
「はちみつコーヒー」の是非は、今のところなんとも言えないようです。チャレンジするにしても、常習して飲むのは避け、あくまで受診までの一時しのぎにしましょう。せきが一週間以上続くとしたら、風邪以外の重篤な病気かもしれません。杉村先生が言うように、「せきは危険信号」と自覚しましょう。
長引く咳の症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
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