体と心の性を一致させる「性別適合手術(性転換手術)」とはどんな治療?


性別適合手術の保険適用は限定的

編集部
「性別適合手術」の具体的な内容を教えてください。
苅部先生
一般的に「性転換手術」と呼ばれることもありますが、医学的には「性別適合手術(Sex Reassignment Surgery:SRS)」といい、基本的に「性器の手術」を指します。性器に該当しない乳房の切除術などは含めないのが通例です。
編集部
さらに詳しく知りたいです。
苅部先生
まず、身体的に男性の方が女性への性別移行を望む場合をMTF(Male to Female)、逆の場合をFTMといいます。MTFの場合は、精巣摘出術、陰茎切除術、造腟術、外陰部形成術などをおこないます。FTMの場合は、卵巣摘出術、子宮摘出術、尿道延長術、腟閉鎖術に加え、陰茎形成術をします。どちらの場合でも、性機能や排尿機能などを兼ね備えた本格的な性器です。
編集部
希望すれば、誰でも受けられるのですか?
苅部先生
基本的にはそうですが、保険の適用を受けるとしたら、2 人の精神科医から、それぞれ性同一性障害と診断される必要があります。一方、自費で手術する場合は、医師と患者さんの間で合意が得られれば可能です。
編集部
性同一性障害の診断に統一された基準などはあるのでしょうか?
苅部先生
あります。アメリカ精神医学会が定めた『DSM-Ⅳ』というマニュアルを、国内でも準拠しています。加えて、もともとどちらの性別なのかという「身体的性別の判定」、統合失調症などの精神障害ではないことを裏付ける「除外診断」が必要です。
メンタルフォローも含め、十分な助走期間を

編集部
「性同一性障害」と診断されれば、外科手術に進めるわけですね?
苅部先生
編集部
治療に含まれるのは、外科手術だけでしょうか?
苅部先生
心の問題にどう整理を付けていくかが問われるでしょう。①患者に対する共感や理解、②周囲への知らせ方、③実生活の経験、④精神の安定などを一定期間ウォッチしたいですね。おおむね問題がなさそうなら、外科手術へ進みます。
編集部
ホルモン療法という治療方法もあると聞きましたが?
苅部先生
手術と併用することがほとんどです。とくに女性から男性への適合ケースで、ヒゲや筋肉質な体格をいち早く望まれる場合などに有効です。ただし、ホルモン療法は自費となり、1回でも用いたら、保険の適用が認められた性別適合手術も含めて「オール自費扱い」となります。注意してください。
性別適合手術の施設要件や費用概算について

編集部
手術を希望する場合、何科を受診すればいいのでしょう?
苅部先生
GID(性同一性障害)学会が「安全に手術できる施設」として認定している医院は全国に4院あり、その4院では保険適用が可能です。岡山県の岡山大学病院と光生病院、北海道の札幌医科大学病院、山梨県の山梨大学病院です。自費で構わない場合は、身体的に女性なら最寄りの婦人科、身体的に男性なら最寄りの泌尿器科へご相談ください。
編集部
おおまかな費用はどれくらいでしょう?
苅部先生
自費を前提とすると、簡単な手術なら100万円を切る程度で、複雑かつ審美的な要素も入ってくると数百万円に上ります。なお、女性から男性への適合のほうが、手術も複雑ですし、費用や時間もかかります。単なる切除術と異なり、機能する男性性器をつくる必要があるためです。
編集部
手術から安定した生活が得られるまで、おおむねどれくらいかかるのでしょう?
苅部先生
予後も含めた身体的な措置だけで、約1カ月は必要でしょう。その後、精神的な安定を得られるかどうかは、ご本人やパートナーにもよりますね。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
苅部先生
性同一性障害の患者さんは、現に、一定の割合でいらっしゃいます。アメリカでは、性別に関する捉え方がダイナミックに変り、従来のLGBTに「Q(クエスチョニング・性そのものを定めない人)」を加えています。日本でも、多様化の考え方や共生のあり方などを、教育の現場から示していくべきでしょう。偏見や差別的な見方が少なくなっていくといいですね。
編集部まとめ
「性別適合手術」は、思っていたより“リアル”な内容でした。また、メンタル面のフォローも望めるとのこと。ただし制度上、その多くは自費でおこなわれるため、医師の考え方や安全性への配慮が医院により異なりそうです。担当医師がGID(性同一性障害)学会に所属しているかどうかを、一つの目安としてみてください。医院情報
| 所在地 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町1-4-5 平和第一ビル地下1階 |
| アクセス | 東京メトロ有楽町線 麹町駅 徒歩1分 東京メトロ半蔵門線 半蔵門駅 徒歩4分、永田町駅 徒歩5分 |
| 診療科目 | 美容外科、美容皮膚科、形成外科 |




