若くても油断できない!? 20〜30代でも更年期障害ってなるの?
更年期障害は、一般的には40代以降に卵巣機能が低下し、ホルモンバランスが乱れることで起こる身体の不調ですが、中には、20〜30代と若くして更年期障害の症状を感じている人もいるようです。果たして、それも更年期障害なのでしょうか。またその原因や治療法について、産婦人科医師として、多くの患者さんを診てきた高山産婦人科・内科の高山先生にお話をうかがいました。
監修医師:
高山 慶一郎(高山産婦人科・内科 院長)
1982年に東海大学医学部を卒業、1984年に東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科に入局。1999年より茅ヶ崎市立病院産婦人科医長、2012年より部長を歴任。2014年に高山産婦人科・内科を開業。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格も有する。
目次 -INDEX-
若い人の卵巣機能の衰えは「卵巣機能不全」という病気の可能性
編集部
まずは、更年期障害について教えてください
高山先生
わかりました。女性は一般的には40代前半ぐらいから卵巣機能が少しずつ低下し、ホルモンの分泌が減少していきます。それにともない、生理不順やさまざまな体調不良、精神不安定などの症状が現れ、日常生活に支障が出ることを「更年期障害」と呼びます。
編集部
更年期障害は若くてもなるものなのでしょうか?
高山先生
若い方でも「更年期障害」のような症状が出ることはありますが、10~30代前半で生理不順や無月経の症状がある方は、「卵巣機能不全」の可能性が高いですね。「若年性更年期障害」という言い方をされることもあるようですが、これは医学用語ではありません。
編集部
「更年期障害」と「卵巣機能不全」はどう違うのでしょうか?
高山先生
発症年齢以外の違いで言えば、卵巣機能不全の多くは一過性で、治療をすれば改善が可能です。どちらも卵巣機能の低下が原因で症状は似ていますが、発症する年齢や一過性かそうでないかの違いがあります。但し、原発性卵巣機能不全、早発卵巣不全は治療が難しく妊娠も困難になる為、早めに専門外来を受診する必要があります。
ホルモンバランスを崩すストレス、激しい運動、過度なダイエットに要注意
編集部
卵巣機能不全の原因は、どんなことが考えられるでしょうか?
高山先生
卵巣機能不全には先天性と後天性があり、先天性の原因には、原発性無月経などがあります。通常ですと、11~12歳ごろ初潮を迎えますが、18歳過ぎても生理が来ない方や、初潮を迎えても月経周期が安定しない方は原発性無月経の可能性があります。但し、最近では16歳を過ぎても生理が来ない方は産婦人科へ早めの受診をおすすめします。
編集部
後天性の卵巣機能不全の原因はなんでしょう?
高山先生
後天性は、精神的ストレス、激しい運動や過度なダイエット、夜更かしなど生活リズムの乱れなどさまざま原因が考えられます。ただ、後天性の場合は原因がはっきりしていることは稀で、検査をしても原因不明なことが多いですね。
編集部
激しい運動はなぜいけないのでしょうか?
高山先生
普通の人がたまに激しい運動をするくらいは、全然問題はありません。ただ、若いときから激しい運動を続けているアスリートの方の中には、卵巣機能があまり発達せず、女性ホルモンの出が悪い方がいらっしゃいます。女性ホルモンが不足することになり、生理不順や無月経が起きやすくなるのです。またそれを放置しておくと、将来、骨粗しょう症や脂質異常症のリスクが高まりますので注意しましょう。
編集部
ダイエットもダメなのですね……。
高山先生
過度なダイエットで体脂肪が減りすぎると、女性ホルモンが減少してしまいますから。また、体重が急激に減少すると、全身を流れる血液の量も減ってしまうことも問題です。
編集部
詳しくお願いします!
高山先生
ホルモンの分泌をコントロールしているのは、脳内にある下垂体(かすいたい)というところですが、実は、ここは毛細血管網しかない為、少量の血液しか循環しない場所なのです。血液量が減ると、下垂体の組織が酸欠状態になり、時には壊死してしまうこともあります。そうすると、ホルモンの分泌調整がうまくいかなくなり、月経や排卵がストップして、不妊症になる危険性も出てきますので注意が必要です。
生理不順や月経量の極端な減少は早めの受診を!
編集部
どういう症状があったら病院に行ったほうが良いのでしょう?
高山先生
生理が来ない、生理の量が極端に少ないなど、生理に異常がでた場合ですね。生理の量には個人差がありますが、全体量が急に少なくなった場合は、卵巣機能が低下している可能性があります。いずれも心当たりがあるときは、早めに近くの産婦人科やレディスクリニックで診てもらってください。
編集部
卵巣機能不全の治療法について教えてください
高山先生
いろんな方法がありますが、生理を起こしたり周期を整えるためには、ピルが非常に有効です。ほかには、排卵誘発剤や漢方薬を使った治療法もあります。漢方薬は8~9種類を、その人の症状や体質、体力などを考慮しながら使い分けます。
編集部
予防法はありますか?
高山先生
なかなか難しいのですが、自律神経を整えるという意味では、バランスのよい食生活と規則正しい生活を心掛け、過度のストレスを避けることは重要ですね。あとは極端なダイエットをしないことも大事です。肥満解消のためには、少しずつ食べ過ぎている分を減らし、同時に筋トレなど運動をすると、無理なくダイエットができます。何事もほどほどが一番です。
編集部まとめ
10~30代前半の若い世代に見られる無月経や生理不順は、「更年期障害」ではなく、「卵巣機能不全」と診断されます。放置しておくと、将来的に不妊症のリスクが高まり、骨粗しょう症や脂質異常症にもなりやすくなります。もし、生理が来ない、生理が不順、また生理の量が極端に少なくなったなどの症状が現れたときは、婦人科を早めに受診するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒253-0105 神奈川県高座郡寒川町岡田5-5-8 |
アクセス | JR相模線「寒川駅」から徒歩15分 |
診療科目 | 産婦人科・内科 |