FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 新型コロナの変異ウイルスはどれほど脅威? ワクチンは効くの?

新型コロナの変異ウイルスはどれほど脅威? ワクチンは効くの?

 更新日:2023/03/27

新型コロナウイルス感染症の変異株の症例が多く報じられ、感染力の強さなど、何がどう違うのかに注目が集まっています。では、そもそもウイルスとはなぜ変異するのか、変異したウイルスがどれほど危険なものなのか、そしてそれらの変化によって既存ワクチンは効くのか、などの変異ウイルスについての基本を、感染症の専門医・堀野哲也先生に教えてもらいます。果たして、私たちは変異ウイルスに対して、従来の感染対策や行動様式のまま生活していて良いのでしょうか。詳しく聞いてみました。

堀野 哲也

監修医師
堀野 哲也(東京慈恵会医科大学附属病院感染症科 診療医長、感染症専門医)

編集部編集部

ウイルスが変異するとはどういうことなのか教えてください。

堀野 哲也堀野先生

ウイルスは人の細胞に入り込んで自分自身を複製して増殖しますが、複製するときは100%同じものではなく、一部複製のミスが起こることがあります。これが変異株となり、変異株の中でも感染しやすいものや、免疫から逃れることができるウイルスが流行しやすくなります。感染者が増えれば増えるほど、ウイルスが複製される頻度は増えますから、変異株が出現する可能性も増加します。

編集部編集部

変異したウイルスは総じて人間にとって危険性が増したものなのでしょうか?

堀野 哲也堀野先生

すべての変異が重大な問題になるわけではありません。WHO(世界保健機関)は感染力の増大、重症化の増加、ワクチンや治療効果の低下、診断精度の低下の原因となるものを「懸念される変異株(VOC/Variants of Concern)」としていますが、VOCには含まれないような変異は多く起こっています。

編集部編集部

ブラジル型、南ア型、インド型、イギリス型などの名前を見かけますが、これらは従来型とどういう違いがあるのでしょうか。

堀野 哲也堀野先生

いずれもVOCとして挙げられている変異株です。変異の種類では、「N501Y」と「E484K」という変異が注目されていて、これは501番目のアミノ酸と484番目のアミノ酸が変異していることを示しています。N501Yという変異があると感染しやすく、E484Kという変異があるとワクチンの効果が低下することが懸念されています。イギリス型はN501Yという変異があるため感染が広がりやすく、ブラジル型や南アフリカ型はN501YとE484Kの両方の変異が認められていますので、広がりやすく、ワクチンの効果が低下する可能性があります。一方、インド型は「L452R」と「E484Q」という変異があり、L452Rは従来型やイギリス型と比べて感染しやすいと考えられています。E484Qによってどのような影響がでるのかは、現時点で明らかになっていません。

編集部編集部

変異ウイルスにワクチンの効果はあるのでしょうか。

堀野 哲也堀野先生

新型コロナウイルスは、スパイクタンパクが人の細胞にある「ACE2」と結合して細胞内に侵入します。ワクチンを接種するとスパイクタンパクに対する中和抗体が産生され、スパイクタンパクとACE2の結合を妨げて、細胞内に侵入することを防ぎます。しかしスパイクタンパクに変異があると、抗体がスパイクタンパクに結合できなかったり、結合力が低下したりして、ウイルスが細胞内に侵入してしまい、感染してしまうことになります。現在問題となっている変異株は、ワクチン効果が低下することが懸念されていますが、実際にどの程度低下するのかは確定していません。

編集部編集部

今後ウイルスが急激に変異することはあるのでしょうか?

堀野 哲也堀野先生

イギリス型では、N501Yという変異によって感染しやすくなるといった重大な変化が起こりました。同様に、変異の箇所によっては、ワクチンの効果が低下するなどの変化が起こる可能性はあります。

編集部編集部

ウイルスが変異することで、既存の感染対策が効かなくなったりすることもあり得るのでしょうか?

堀野 哲也堀野先生

変異株であっても、アルコール消毒の効果がなくなるとか、手で触るだけで感染するといったことにはなりません。マスクの着用、手指衛生、換気など、現在行っている感染対策を継続することが大切です。変異によって感染力が強くなると、例えばマスクから漏れ出た少量のウイルスで感染が成立する可能性も考えられます。マスクを着用していてもできるだけフィジカルディスタンスを保つことや、電車やエレベーター内での会話は控えるなど、今も実施している感染対策を遵守することが重要です。

この記事の監修医師